今日ではWebでの情報発信は最も手軽な方法となり、個人のホームページも星の数ほどある。面白さという点でも、企業の外見だけはカッコいいホームページよりもよっぽど優れたものがたくさんある。これはまだWebの企画編集が手法として枯れたものになっておらず、個人の才覚に依存する点が多いからであろう。
もともとWebサイトはボトムアップで進化してきた。多くのWebサイトでは,個人の興味レベルで立ち上げが行われ,ナビゲーションデザインやネットワーク技術,コンテンツなどについても,担当者が個人としてスキルを高めてきたといういきさつによる。
この仕事内容はまだ職能というものとして固まってはいないものの、Webのオーディエンスはマスメディアの新聞以上にマスになった。そこではウェブサイトは,もはや単なる企業の宣伝ではなく,重要な企業戦略のひとつとして位置付けられるようになった。つまりWebでのコミュニケーションは、店舗などリアルビジネスと同質のものが求められるのである。
最も顕著な例がセキュリティ問題で、ECサイトが誤動作したり、顧客情報が漏れるようなことがあっては、元のブランドにもWebが傷をつけてしまう。セキュリティ対策についていえば,いくらシステム管理者だけが知識が豊富で、ファイヤウォールやセキュリティホールの対策につとめても,セキュリティに無頓着な誰か一人がウイルスに感染したらシステムに大きなダメージを与えてしまう。
Webが企業の情報戦略の一部として位置付けられるようになった現在,まず技術的な面は比較的に分かりやすいので素人がいじりまわすことは少なくなりつつある。しかし、Webの技術以外のところも、単に個人まかせで仕事を分担しているだけでは不充分で、サイトの運営主体の会社相応のしっかりした仕組みやしっかりした考え方が必要である。
表面的にはWebはコンテンツ第一にみえるので、背後の戦略やポリシーの議論があいまいのままのところもある。しかしそれは、そこそこの管理水準の企業でもアマチュアリズムに落ち込んでしまう罠といえる。昨今騒がれたサイト攻撃などのセキュリティ問題はそのことの警告であると受け止めなければならない。
セキュリティポリシーというのは、全社で一斉にワクチンソフトを導入したり,パッチを周知徹底するという作業以外に、日常のソフトやデータの扱いに関するモラルまで含まれ、個々の担当者にまかせておけば何とかなるものではない。個人情報の扱いについても,登録した情報を安全に守り,Cookieなどで得た情報の利用方法を明確にすることは,企業の情報に対する姿勢として今後ますます重要となるだろう。
見て安心、使って気持ちいい、信頼度の高いウェブサイトを構築し、総合的に優れたサービスとして評価されるために,Webのポリシーを多面的に見直す時期にきている。きたる11月16日(金)のtechセミナー「企業のブランドを高めるWebサイト運用ポリシー」では、ソニーのWeb戦略、ビービットのユーザビリティ・コンサルティング、プライバシーポリシーとプライバシーマーク、コンテンツの著作権処理、セキュリティーポリシーなど、全般にわたるテーマを取り上げますので、ご参加ください。
2001/11/10 00:00:00