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MacはUnixから何を引継ぐのか?

よく知られているようにUNIXには生誕の地であるAT&Tの系列と、カリフォルニア大学バークレイ校のBSD系がある。結局Mac OS X はBSD系UNIXの流れをつぎ、Quartzなどのコアサービスの上に、AQUAというGUIがかぶさっている構造で、これは、UNIXの上にXwindowsの上にmotif という構造と対応している。Appleファンにはどうでもいいことかもしれないが、構造が対応しているという点は重要である。

Mac OS X は1990年代始めに目指した「革新的な」Copelandとは異なるものとなったが、むしろUNIXという確実な枯れた技術に依拠して、システムとしての信頼性が高まるとともに、このUNIXをベースにした構造のおかげでプログラムの世界は広範な分業が成立し、その個々の環境で高度なプログラムを開発できる人達も潜在的には多く居るという状況になった。

しかしここに至まではさまざまな紆余曲折があった。元のBSDからカーネギーメロン大学のMach、それをひいたNeXT、あるいはMkLinux、NeXTがAppleに買われてRhapsodyになり、これらいろいなものが合流してさらに追加されてMac OS X のコアであるDarwinになった。紆余曲折というのは、これらの過程のさまざまな開発物で大衆的になり商業的に大成功したものはない点である。

商業的には成功しなくても、技術が引継がれて発展したのは、オープンソースであったからで、これは逆にソースコードを公開にすることで技術が途絶えるのを回避したともいえる。そのような経緯でAppleもDarwinに関してはソースコードを公開しているが、それはAppleの商業的使命からくる目論見とは接点がないと思う。

つまり昨年、Steve JobsはAppleがインストール数最大のUNIXベンダーでもあると発言したことがあったが、上記の紆余曲折と言うマイナスの意味でのUNIX文化をAppleは継承することはないだろう。まずはUNIXで実績のある強いところがMacで使えるわけで、それは今が旬の通信やIT系であり、即Macに移植可能というかコマンドラインで動くものはそのまま動いてしまうものも多い。

しかしその上にMacの利用分野として何を新たに築くか、それがAppleにとってどのようなメリットになるのかという点では、LinuxがITインフラ機器のニッチになったのと比較するとAppleがその方向に行くとは思えない。Appleとしてはコンシュマー向きのAV系のアプリケーションに傾いている昨今ではあるが、この分野はUNIXの世界から得られるものはあまりないと思われる。

一方、ハイエンドDTPの分野ではSUNやNTの代わりにMacで一元的なシステムができることを希望する人も多いだろう。この分野の製品開発の勢いが衰えているので、新らたにMacに取組むことには障壁もあるが、その分をAppleが補ってくれるなら、今後ともDTPはAppleのニッチ市場のひとつであり続ける。文字種の拡張もそのような動向の一環かもしれないが、文字種・字形の管理をAppleだけが続けるのは困難だろうから、今後はオープンソースとの付き合いのようなオープンな関係が印刷業界とも必要になろう。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 171号より

2001/12/16 00:00:00


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