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インターネットは出版のあり方を変えるか?

出版は第二次大戦後の作れば売れる時代から、昨今の返本率40%の時代へと180度変化してしまった。その間に書籍の発行点数は増加の一途をたどり、その結果として絶版本も増加していった。発展途上国では年間の書籍発行が何百点という国はザラだが、日本は年間何万点と2桁多い。出版の産業化とともに、コンテンツは消費するものとみなされて、絶版の山を築いたわけである。

元来印刷物である本の発行部数は有限であり、そのうち入手不可能になる運命にあるが、発行点数が少ないうちは図書館などで管理されて、必要な人は後にも内容にたどり着ける。しかし日本では本はとても図書館で吸収できる規模ではなくなった。

近年になって書籍流通の会社がブックオンデマンドのサービスを始めるにはこのような背景があった。だがニーズがあったわけではなかった。日販は絶版本の復刊に力を入れ、当初は少量でも必要と思われる専門書とか良書を出そうと努めたが、出版社側からのニーズはなく、読者層にインターネットでマーケティングして、希望の多いものを再版するビジネスモデルにシフトした。

それは世の中にはプレミアが付くほどの人気本・お宝本があるからだが、当初の狙いとは対照的にエンタテイメント系のコンテンツになったという。結局は読者の層が厚い分野では、新本も古本も、プレミア本も商売になる。しかしこの分野でブックオンデマンドが大きくなるかどうかは、まだわからない。古本のチェーン店が日本に何百店規模になることを思うと、一応事業にはなるだろうが、ブックオンデマンドの市場はそれよりも小規模の隙間であるだろう。

だがインターネットを組み合わせたブックオンデマンドの努力はさまざまな方向に展開する可能性がある。インターネットでは先生が講義資料を公開したり、教科書の原稿を公開している例もあり、出版の可能性の発掘の場でもある。
一方身近な情報もインターネットには多くある。デジタル化で発展するのは、流れ去る消費型のコンテンツなのか、どこかで必ず必要とされる定番型コンテンツなのか。どちらも可能性があるので、それぞれの思いで突き進むことができる。

おそらく紙の出版には今後大きな動きはないが、このようなインターネット上の「出版」の展開がいろいろあった後で、オンラインをどのように補完するのかという課題と合わせて、印刷の本の市場もブックオンデマンドの本も役割が決まってくるのではないだろうか。

■出典:通信&メディア研究会 会報VEHICLE 通巻151号 より

2001/12/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会