本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

2001年を振返って

2001年は過去最悪

2001年がどんな年だったかについては、「会社創業以来最低の年(利益)」、「今までに無い経験の年」といった声が、2001年の厳しさを如実に物語っている。そして、長引く低迷で、「生き残り策を模索し、その第一歩を踏み出した時でした」、「コストダウンの努力の連続でとにかく生き残ることを目標にした」,「後半の落込みは大変でした。このままの状態が続けば会社が危ない。どうしたらデフレスパイラルを止められるかを考えさせられ続けた一年でした」など、生き残るか否かの瀬戸際まで追い込まれていると感じざるを得ない状況になりつつある。

価格低下は相変わらずで、仲間仕事が中心の企業では「印刷物の全般で20〜30%価格が下り、小ロット化して原価割れの状態」にあって、これもギリギリのところまで来ている。景気状況は、「1〜6月は業績もまずまずだったが、7月以降急激に伸びなくなった」、「前半は、8%ほどの増収、後半は全く伸びが期待できない。既存商品は量・価格とも縮小気味、新商品も後半はもろに不景気の影響が出ている」と、7月以降に一段と悪化した。 そして、「月末の決算でやっと回復の兆しが見えたが、マクロの数字を見ればこれが続くとは思えない」と、先が見えない状況も相変わらずである。

厳しいときだからこそ腰を据えて取組む

いまのような状況だからこそ、きちっとした経営計画を立て、大きな改革やしかるべき目標に果敢にチャレンジした企業もある。出版,商業印刷を主力商品とする中堅企業では「経営計画書を重視して、全社員が共有する」ことで、まず営業ががんばって目標を上回り、それに触発されて生産部門も生産性を向上させ、若手や新入社員も伸びて決算まであと1ヶ月を残して目標を上回る業績見込みが立ったという。

出版印刷物中心の中堅企業でも、中期経営計画に沿って改革を断行(「課・係を廃止し、グループにする組織簡素化と若手の登用、権限の明確化」「賃金制度の抜本改訂」「社内LAN活用、連絡便増便、フィルム管理充実等インフラ整備」)するとともに、計画に沿った活動(「新規得意先開拓、受注拡大の成果と海外需要を発掘、スタートした営業活動」「社内生産設備増強とコストカットの始動」)を展開した。

資金問題が徐々に表面化

その他,2001年を振返っての声として、「資金調達難」に関することが掲げられたこととは、いままでにないことであった。また、「『日本価格』をはじめ、わが国の弱点が次第に顕在化してきたと思う」、「土地、株、大企業(IT,金融)など、経済の基盤とされてきたものが崩れ、新しい秩序作りに向けて動き出した年」など、現在の問題がいち印刷産業の問題ではなく、もっと根深いところに原因があるとの声が寄せられたが、これも今までにないものであった。

2年前とはかなり異なる2002年の重点施策

2002年の業績予想で、売上伸び率ではマイナスとの回答が3割、増加が5割、そして売上前年比がプラスマイナスゼロとの回答が2割であった。回答をいただいた伸び率の平均値は0.6% 増とほぼ横ばいという数字になった。営業利益の増減については、増加、横ばい、減少という回答がちょうど1/3ずつである。
新たな年に重点的に取り組みたい施策について見ると、分野別には、営業、生産、管理、そして事業領域拡大や全社的なテーマそれぞれほぼ同数が掲げられ、どこかに偏っていることはなかった。しかし、それぞれの分野の具体的内容を見ると、2年前とはかなり変化が見られる。ひとつは「デジタル化」に関する項目が減少したことである。2年前には、事業領域の拡大、営業面,生産面いずれの分野でもデジタル化関連の施策を重点にするとの声が多かったが、今回は半分以下に減っている。 プリプレスのDTP化という意味のデジタル化は当たり前のことになったということである。

見え始めたマーケティング,商品開発志向

営業面では、「企画提案営業の推進」という声が多い点は変わらないが、今回は「マーケティング」のための組織を作るなど、マーケティング志向が見え始めた。また、「オリジナル商品開発」や「パテント取得商品の全国販売」など、商品開発によって価格競争を脱し,売上,利益を確保しようとする企業が2社あった。これも今までになかった回答である。新年に向けての抱負として「東南アジアを含め,印刷,製本の海外流出に備える長期方針設定」を掲げるとともに、2002年の重点施策として「極端な繁閑差の解消と世界に負けない品質,プライスにすることを目的とした海外需要の開拓」を掲げた出版印刷企業の声も、最近の状況を反映したコメントである。

生産面では、とにかくコストダウンに関する声が非常に多くなっていることは、この2年間でのさらなる価格競争激化を物語るものであろう。
管理面では、「給与体系の見直し」や「能力主義への移行」を2002年の重点施策とするとの回答はやはり多い。今回の特徴は、ISO取得を目標とする企業が1割強あったことである。
IT関係については、「2001年はITに振り回された」という声の一方で、「管理、事務のIT高度化」を2002年の重点施策として掲げた企業、そして新年に向けての抱負として「スピード経営、前進のみ」としながらも「IT連呼のこの世相には少々?を持っています」といったコメントを寄せた企業などさまざまであった。
全体としては、各社個別の具体的な表現で重点施策が書かれてきており、実際に取り組みの成果を出される企業が多いのではないかと感じられた。

さらなる厳しさを予測するも,前向きに対処

2002年については、「2002年は中小企業にとって激震の年と予測」、「さらに経営環境が悪化する。その中でどう活路を思い出すか」というように、さらなる状況悪化を予見する方が大勢であろう。
その中で、「価格競争に勝るコミュニケーション重視の営業展開で増注、増益を目指す」、「デフレ社会への対応策の実施」、「S・P(セールスプロモーション)部門に期待をしている。新しい企画で少しづつ仕事が増えている」、「オンデマンド印刷のネットに参加する」、「次期社長交代に向けての体力強化3ヶ年計画の最終年度。何とか2年間は計画通りに行っているので、最後の詰めをきちんと行ないたい」、「コスト構造を見直して取組みたい」、「リストラのさらなる推進(人員の適性再配置、有利子負債の削減)・営業と企画制作が一体となった提案型営業のさらなる推進」など、それぞれの抱負を書いていただいた。

しかし、最も多い声は、厳しい状況に対して、負けてたまるか、という決意表明であった。「先行きが読めない中で、自らのアイデンティティを確立し、生き残りを懸けて努力していきたい」、「売上げ確保に全力」、「前進あるのみ(逆境においてこそ、真価が分る。)」、「利益追求あるのみ」,「全員一丸となり改革を実行していく以外に勝ち残りはない」と言った声である。
そして、「社員に対し意識改革をより明確し、希望を持てる会社を目指す」と社員への意識共有を求めるとともに、自らは「社員が気の毒に思うほど率先して働く」と表明した経営者もいた。
いずれにしても、「生き残りから優良企業へのステップアップ」あるいは「『不況や厳しさを上回る努力をする』ということに尽きます。『LIVE PRINTING 2002』(生き生きした会社))」など、全体として前向きに新たな年を乗りきろうとしているニュアンスが感じられた。

(出典:JAGAT機関誌「JAGAT info 2002年1月号)

2001/12/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会