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メディアのプロらしく、IT時代を先駆けるには

「デジタル革命」の進展で,印刷企業を含むメディアビジネスの基盤が大きく変化したのは客観的な事実であり、そういう時代の流れは今後ますます加速される状況にある。
一方メディアは,人間の文化と文明を形成する重要な要素であって,われわれの生存環境でもある。同時に,メディアビジネスに関わる企業も,人間と同様に一種の生命体である。メディアのプロは,このように相互に密接かつ複雑な関係性を持つ場で日々活動している。

日本人の長所は、一生懸命に物事に取り組む姿勢にある。反面の短所は、自らの「未来の夢」に対応する『仮説−hypothese』を自立的に持たないことである。変化の時代、メディアのプロこそは、文化と文明の特性を理解し、歴史的事実と自らの熟慮に支えられた『仮説』を持ち、実践を通して仮説を検証しながら前進する姿勢を身につけることは極めて重要なことである。

この時、留意すべきことは、メディアによってもたらされる膨大な情報を、自らが批判的に吟味する能力、言いかえるとメディアリテラシーの向上である。メディアのプロのためのメディアリテラシーを考える場合に、『二つの文化』(C.P.スノー)が唱えた理数系文化と人文系文化の間に存在する隠れた極めて深いクレバスの存在を第一に考慮する必要がある。

日本の情報化、ニューメディア、また昨今のITなど、欧米に呼応して同等のテーマを掲げても、欧米では事務管理のコンピュータ化とか、CNNのような衛星放送による新メディア、ECによる合理化などの成果が上がったのかかわらず、日本では繰り返しニュースに踊らされて実態がともなわないことがあった。ここには日本でメディアにかかわる人々の内側の問題がある。

これらをふまえて、PAGE2002では新たに登場するデバイスを紹介するだけではなく、我々のビジネスや生活がそれらに取り囲まれる時に、過去の繰り返しで押し流されるのではなく、我々の自己実現のためにそれらを利用するためにはどのようなことを意識しなければならないかについての特別セッションを用意した。

テーマは、『メディアのプロのメディアリテラシー』(D1セッション)と、『21世紀の印刷文化と印刷文明』(D2セッション)である。『メディアのプロのメディアリテラシー』では、メディアのプロはメディアの構築者であるとともに,多様なメディアがもたらす情報の消費者でもあり、その中で事業の変革を自らが演出・実行する立場にあることを明らかにし、我々のメディアリテラシーはいかにあるべきかを議論する。スピーカーは朝日新聞社の服部桂氏で、モデレータは日本印刷技術協会和久井孝太郎副会長である。

グーテンベルク以来,人々のリテラシー向上に大きく貢献してきた印刷であるが,今日の技術の変容を受けて大いに揺さぶられている。『21世紀の印刷文化と印刷文明』では、先に上梓された凸版印刷の印刷博物誌の編纂にも関わられた、国際日本文化研究センターの合庭惇氏がスピーカーになり、印刷の歴史とその及ぼした文化・文明を背景に、近未来の情報化の中で印刷文化をどうとらえ,何をどう将来のメディアに継承させて進化するのかを考える。モデレータは日本印刷技術協会和久井孝太郎副会長である。

これら2セッションは、JAGATが行ってきた過去の「21世紀委員会」、及び現在進行中の「技術フォーラム」などの延長上にあり、一見情報洪水とか情報過多といわれる今日のメディアビジネスの中で、自立して戦略を考える上で最も重要な視点を取り上げた。技術担当管理者役員の方々にはぜひご参加いただきたい。

2001/12/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会