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見えそうで見えないDTPの新展開

Adobeのジョン・ワーノックは2000年11月ころに、DTPやWEBに次ぐ出版の第3の波「Network Publishing」の説明をしたことがある。それは従来のPostScript/PDFなど静的なコンテンツだけが対象ではなく、オンラインのビデオ、コミュニケーションなどもスコープに入り、従ってこれからの携帯電話やパームみたいな、今までのPostScript/PDFが実装されていなかった情報機器の世界までもシームレスに展開できるパブリッシングである。

つまりビジュアルな表現というのは印刷をベースにしていたと仮定したのがPostScript/PDFのモデルであったが、これからビジュアルな表現が求められる世界がその外に広がっていくので、Adobeの製品もそちらを追いかけるととれる。PhotoShopやIllustratorがWEB用にも使われるようになったのにように、今度はAdobe製品に携帯電話やパーム用の機能も持たせるとか、XMLに広く対応させると、新たな顧客が獲得できるというシナリオであろう。

最近のPremiere6.0はストリーミング配信用のフォーマットをサポートしているのもその現れだ。DTPユーザ対象のソフトのアップグレードによる売り上げは、すでにAdobeにとって相当比重の低いものになっているという発言もあり、印刷の人からみるとAdobeの軸足はすでにこれから伸びるITフロンティアの方へ移ったともいえる。

Adobeが力を入れようとしているものと比べて、一見すると従来型DTPパッケージソフトは行き詰まっているように思えるかもしれないが、DTPをリードしてきたAdobeが着手してこなかった面が残されているということで、チャレンジすべき目標は厳然としてある。例えばネットワークDTPのようなものである。

今日的なコンピュータの使い方からすると、まず利用者はログインして、それぞれの権限に応じて利用環境が与えられ、どんな仕事のグループで、どんなスケジュールの中で、どんな仕事が分担になっているか、その素材はどこにある何か、などのサーバの中にある情報を知る。自分が作業をするのに必要なプログラムもサーバにあるか、サーバからダウンロードして起動させる。こういうやり方ではフォントもプラグインも利用者は考えなくてもよいようになる。

QuarkのQPSなど海外の出版関係のシステムではこれに似た使われかたは珍しくないが、PageMakerなどAdobe中心のDTPや日本ではあまりこのようなモデルはない。しかしAcrobat5の諸機能をみると、サーバ利用、メタデータ交換というネットワーク利用という新たな狙いと同時に、DTPのグループウェアにおいてカスタマイズできる「マスターデータ」としてPDFを使えるようにという配慮も見られる。

AdobeのNetwork Publishingで従来のDTPが切り捨てられるわけではなく、むしろそれもNetwork型に切り替えられる時期は近づいているようだが、InDesignをどのようにシステムインテグレーションすればそうなるのか、依然としてそのモデルは見えない。

JAGAT テキスト&グラフィックス研究会 会報153号より

2001/04/01 00:00:00


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