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管理しない方が安くつく? 矛盾のつけは…

印刷の各工程にまつわる情報を交換する方法が、AMPACとかJDFなどいろいろ考えられているが、実際の印刷とかプリプレスの現場ではこれらに呼応する動きはない。一見すると現場のニーズはないように見える。

カラーマネジメントも同様な扱いを受けていた。オフセット印刷機には用紙の余白にパッチいれておいて濃度などを計測するオプションがずっと以前からあったが、日本ではほとんど使われておらず、昔ながらの勘と経験での色の管理に頼り、データでの管理になっていなかった。従来の日本の職人さんのレベルは高かったせいか、データによる管理に替えても品質が上らないとかいわれた。しかしデータの蓄積が出来れば、次に何を改善するべきかがよく見えてくるものである。日本は世界でも印刷品質の優れた国と言われたからか、これ以上の品質を求める声は少なかったとか、校正刷りと本刷りの根本的な差がある上に本刷りだけ管理しても意味ないなどの見方があった。

またデータで管理してももうからないともいわれた。実際にはデータで管理することの意義は認められても、今まで直観していたものを改めてデータ化して扱うには、それなりの投資と作業の手間と事務コストが余分にかかることになる。いくらかの改善は期待できても管理コストの上昇でメリットは帳消しになるかもしれないというのが従来の判断であった。これらは印刷機が自動機になる前の、「管理しない方が安くつく」という発想であり、これではどんな管理も高くつくから二の足を踏むことになる。

しかし現実には印刷機の高度化とともに、印刷工場も空調管理、照明の管理、刷り濃度の管理など、管理やメンテナンスの負荷は増えてきているのである。さらにISOの品質管理を取得しようという時代になり、管理していることをデータで示ないと、いいわけ無用のロットアウトで全品刷り直しになるとか、管理水準が低いと交渉の余地なし、ひいては取引停止ということになろうとしている。

一方、インターネットの時代に花開くテクノロジーは、情報交換が企業内に留まらず、外部でもサプライチェーンでつながったところとはリアルタイムで情報共有ができるとか、企業内の異なる管理系システムの間の情報の連携がとれるようになりつつある。 これによって生産管理の横断的な情報交換が非常に広い範囲でも密な関係で構築でき、今までより広い視点で生産システムの最適化が可能になる。しかし生産工程の個々の部門からは広い視点での改善要求は出てこないものである。だからニーズがないように見えるのは仕方がないが、そのつけはいつか表面化するだろう。

印刷側の管理水準を上げなければならないという課題と、インターネットによる横断的情報交換や広範なワークフロー構築は、うまい具合に結びつくので、管理をしている同士の連携はどんどん進むだろうが、してないところは局部的な仕事の仕方の改善の限界は越えることができないという点で差がつく時代がくるだろう。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 174号より

2002/03/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会