本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

足並み揃わぬ印刷の電子調達だが、ゴールはひとつ

電子政府に向かうこと自体は正しい方向であろうが、電子政府に便乗した浮き上がった調子も目に付くようになってきた。何でも電子化することが至上命令なのか? やはり電子化するもの、しないもののバランスが問題で、コストのかかりすぎる電子化に意味は無く、トータルにはパフォーマンスアップが課題だろう。

近年非常に進みだしたIT化であるが、一般企業では副資材の電子調達などが日常化したにもかかわらず、行政の遅れが目立つようになったのが、電子政府が騒がれた理由である。また諸外国に比べても、日本の行政レベルのサービスが見劣りするようになったという、世間体の問題もあろう。行政組織のパフォーマンスの低さがどうしようもないところまできているという問題意識で、いろいろなものを見直すことが土台だろう。

いずれにせよ、行政組織がかかえる問題は、何も電子化だけではなく、リストラ・組織効率化の遅れにあるのではないか? その解決にITが有効なはずだという視点が根本であると思う。だから電子政府でどのように行政の仕事の簡素化ができて、スピードアップにもなって、税金が減らせる仕組みができるかというところに知恵を絞らなければならない。

ところがまだ古典的な報道が多く、電子政府で3〜5兆円市場の創出、などという見出しが踊っている。そういう面もあろうが、どうも従来の浪費型のものの考えに思える。官公庁需要というのは、国会議員のやることを見ていると、「革新」が国に、あれをやれ、これをやれ、といい、「保守」が国の予算をつけて、大企業が特需を受けられるようにしている。保革ともに予算の垂れ流しを支えてきた伝統が抜け難い。

一方で経団連の電子政府への提案が1昨年あたりにあったが、行政改革や具体的な問題解決の糸口は見えている。宅配便と郵政を比較して見ればわかるが、あるいは銀行のオンラインのように、民間ではすでに日常的に行われているレベルのことを行政もしていけばよい例は多く、電子政府で個々に取り組むべきことは案外明らかなのではないだろうか。

印刷の官公庁需要も電子調達でどのように変わるのかということが注目されているが、印刷物に関しても個々にパフォーマンスアップという視点で、印刷として残るもの、他の方法に変わるものを考えて見なければならない。自治体によって最初はバラつきがあるにしても、必然的にたどり着くところは論理的に推測できる。目前のことに捕らわれずに、その時代に備えることをしなければならない。

■出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」155号(巻頭言)

2002/03/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会