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ワークフロー自動化に備えたタクティクスを

ECのバブルがはじけたようにいわれる中でも、XMLでB2Bの情報交換は次第に本格化しつつある。印刷のワークフローでのジョブチケット情報のネットワーク上のやり取りは遠い将来の夢のように思う人もいるが、この10年間でパソコン・Windows・インターネットがすっかりビジネスに定着したように、あと10年たつと印刷現場でも紙の伝票による情報伝達は消えてしまうかもしれない。

しかしそこに至るには、現状の人を介した業務連絡のワークフローをすっかり覆さなければならないので、大変な努力が必要になろう。その大変さがデジタル&ネットワークの世界に入る業者と、入らない業者を区別することになるのだろう。世の中は「電子政府」などがしばしばジャーナリズムで採り上げられるようになり、じっとしていても棚ボタ的に電子申請ができるようになると捉えがちだが、印刷の取引の電子化については自分で努力するところと、そうでないところは、将来の利益の出方に大きな差がでるかもしれない。

ワークフローの自動処理というのは基本的には「合理化」を目指すものであり、受発注双方で事務処理が低減できそうであれば処理方法の変更に合意できる。両者の間にある、「出す」「受ける」「確認」「作業振り分け」などで、価値を生まない単純な仕事を圧縮しようと考える。

その裏には仕事のシステム変更を巡る攻防が起こる。価値を産みそうにない仕事の押し付け合いがちで、一方では一見価値がなさそうに見えても実は自社に都合の良い仕事の取り合いになる。例えば紙の受発注では、中間に物流があリ、倉庫の出入りやトラックの積み替えが起こる。受発注の両端の人々は、受発注の第3者である倉庫・運送業者を減らすことには合意しやすい。

1990年代にはプリプレスのデジタル統合化がもたらす工程削減で印刷関連の売上が下がった。今度はネットワーク経由の仕事に変わって印刷の制作工程も従来どうりの仕事ではなくなるが、最適化されることでまた「売上が減る」可能性がでてきた。ワークフローを自動化するプランに参加していな会社は、仕事がなくなってしまうとか、減らされてしまう可能性もある。また一見無駄と思もわれる作業にも重要な情報源である場合があり、そこを他社にとられては困ることもある。

いろいろなことがらがデータで捉えられるようになると、「刷りで儲からなくても、刷版で儲ける」ような利益の出どこを隠せなくなり、本当に会社の生産力の差が出てしまうかもしれない。XMLのツールや一般的なB2B取引の規約はできても、各社の思惑のからんだところはなかなか仕事の分析の壁となって、業界標準というのは差し障りのないところしか決め難いものであろう。

実際のB2Bの実現が目の前でないにしても、ワークフローの自動化に備えたタクティクスが事前に必要になるのである。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 180号より

2002/04/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会