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印刷物の付加価値を高めるフィニッシング

〜ニュートレンド・インタビュー 第3回〜

株式会社ホリゾン

ニュートレンド・インタビューの第3回目は,株式会社ホリゾン 代表取締役社長 堀英二郎氏にご登場いただいた。同社は,太陽精機株式会社が開発・製造する製本関連機器を販売する会社として設立された。太陽精機は,インテリジェント・ファクトリーを目指して最新のFMSラインを導入,生産のFA化を実現している。またISO9001,14001の認証工場となっている。

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市場ニーズから製本関連機器総合メーカーに

(堀氏)

私どもの母体は太陽精機で,私の父が1945年に創業しました。そこで作っていた商品は電気計測器で,もともと電気(エレクトロニクス)が専門でしたが,それにメカを加え,メカトロニクスという発想を創業時代からもっていました。メカとエレキが私どものコア技術で,最近充実させているのがソフトです。この3つの技術を核に商品展開してきています。

創業から約30年間の開発力・技術の蓄積の後,1973年に世界に先駆けて卓上型の無線綴じ機を開発しました。当時製本ということには皆さん非常に苦労されていましたので,私どものもっている技術でその問題の解決を図ることができるのではと考えた次第です。

それを売ることをきっかけに,次は丁合機が必要だ,丁合して製本したら次は断裁機が必要だ,丁合する前には紙折り機も必要だと,お客様のニーズに基づき機器開発を展開,製本関連機器の総合メーカーへと歩むこととなりました。

お客様のニーズをつかむということは,創業以来の基本方針です。そのためには直販体制が必要であると考え,1975年に販売会社としてホリゾンを設立しました。その後,お客様に需用提案・コンサルティングをご提供させていただく,さらにはお客様とともにテクノロジーを高めていくという発想の下に,ホリゾン東テクノ,ホリゾン西コンサルの2社を設立しています。

海外展開で需用動向を読む

1970年代には,世界的に需用展開しなければならないと考え,市場調査目的に海外の展示会に積極的に出掛けました。海外では,合理化・省力化の仕組みが非常に進んでいます。当時海外では丁合機が普及していることに着目し,日本でも必ずこの時代が来ると考え,日本市場に合った丁合機を開発しました。海外からの参入もいくつかありましたが,日本の印刷用紙の実情に合わず撤退していきました。

海外展開では,1981年にホリゾン・インターナショナルを設立,DRUPA82,CeBIT'83(国際情報化機器展)に出展しました。そこで,日本で成功していた無線綴じ機に多くの引き合いを得ることができ,海外でもこれが製本業界への参入のきっかけとなりました。

合理化,情報化という点では,海外は日本より5年から10年先に進んでいますので,海外の動向を見て日本の将来の姿を予測することができると思っています。海外向けに開発して成功したものを,日本に投入してヒットしたというケースも多々ありました。

私どもでベストセラーになったシステムに,丁合機と中綴じのラインがあります。日本では中綴じの方法は鞍掛けが主流でした。ところが海外では,ペラ丁合いを通してから綴じて折るという発想が強くあることが分かりましたので,「ペラ丁合中綴じ製本システム」を開発しました。果たしてそれが日本で売れるのか疑問もありましたが,おかげさまで日本でも非常に受け入れられるシステムとなりました。これが海外での成功事例を日本にもってきて成功した一番の例となりました。

最近日本で展開を始めたPODも,海外からの要望で始めたものです。1996年のCeBITで,ゼロックス社のDocuTechと連結してシステム化できる「くるみ製本機」を発表しました。製本作業をすべて自動化し,可変データ処理にも対応し,一冊ずつ枚数の違う製本も可能となっています。このシステムはPOD向け高性能機として注目を集めることができました。

私どものコアの技術は製本です。その製本のすそ野を広げていくという方向にも力を入れています。世の中にはプリンタが非常に普及していますので,プリンタがある事務所や一般オフィスを対象に,小さな断裁機,紙折り機,製本機,中綴じ機などの商品群を「ミニPOD」と呼んで展開しています。プリンタを使えるお客様は,すべて私どものこれからの需要先になると思っています。

キーワードはショートラン

今はショートランが世界的潮流です。今年のIPEXではStitchLiner(ステッチライナー:左図)という新製品を発表しました。「ペラ丁合・スタッカー・集積折り装置・鞍掛け中綴じ機・三方断裁機のシステム化」という新発想の鞍掛け中綴じ製本システムです。おかげさまで,ご好評をいただくことができ,ショートランに適応した機械が,これからの市場に求められている商品だという思いを強くいたしました。

ショートランには,セットアップが簡単であるという意味もあります。私どもの一番大型の機械でCABS5000(右図)があります。丁合から製本,三方断裁までインライン処理できるシステムで,5200冊/時間の処理能力がありますが,セットアップをすべて自動化しています。従来1時間掛かっていたセットアップが,5分以内でできるようになっています。

またIPEXでは,これからの製本工程の効率化・自動化に向けて「i2iシステム」というコンセプトを発表させていただきました。これは,CIP3/CIP4で提唱されている考え方をベースに,印刷物の制作・デザイン時から,最終的に印刷物を手にされるお客様までをデータベース化し,一人ひとりに必要な印刷物を提供することを目指したシステムです。

製本工場では,刷本に添付されたJobチケットにより製本工程の進捗管理や製本機器のセットアップの自動化,さまざまなフレキシブルな製本処理の自動化を実現します。まさに,フィニッシングで印刷物の付加価値を高めることができる仕組みとなっています。

ホリゾンの製本システムによって,お客様の印刷物の需用が拡大されますことを願っています。

■出典:JAGATinfo 2002年6月号

2002/08/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会