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印刷はトータルソリューションの一部

〜ニュートレンド・インタビュー 第2回〜

方正株式会社

ニュートレンド・インタビューの第2回目は,方正株式会社 代表取締役 管祥紅氏にご登場頂いた。同社は商業印刷システムを始めとして,流通小売業向け商品データベース,新聞社向け編集・ワークフローシステム,出版社システムなどを開発。パッケージ,ソリューション,そしてこれらのASPなど一貫したサービスを提供している。

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印刷は必要不可欠な業務

(管氏)

1996年に方正を設立しましたが,当初から印刷はすべての企業で必要不可欠な業務であるという視点でITシステムを構築すべきだと認識していました。通常の業務システムと一貫性がもてるように,Windows上でのシステム構築を選択しました。しかし印刷は最終目的ではなく,一つの業務プロセスに過ぎないので,トータルソリューションとしてシステム構築することを当社の戦略として,これまでご提案してまいりました。

その構想に最初に賛同していただいたのはリクルートさんで,記事入稿,原稿チェックから校了時に一気に面付けデータを生成する情報出版システムを構築しました。出版社の業務プロセスを大幅に効率化するもので,印刷も業務の一部という構想を具体化したものとなりました。

チラシ組版ソフトの開発に当たっては,流通小売業の方と協議を重ねる中で,チラシの内容を決定し,チラシを作るまでのプロセスをいかに効率化するか,在庫管理や発注業務,さらには実際に店頭で販売されて結果はどうであったかという効果測定も含めたシステム要件をまとめていきました。その構想を上新電機さんに採用して頂き,続けて大手スーパーの方たちにも採用して頂けるようになってきました。

新聞組版では,方正グループは中国の新聞業界では圧倒的なシェアをもっています。新聞社のワープロから工場管理や用紙の発注も含め一通りのソリューションをもっていました。この方正グループの資産を生かして,日本の新聞社に使っていただけないかとやってきて,昨年日刊スポーツさんに導入して頂くまでになりました。

これらすべてのソリューションに共通する特徴は,業務プロセス全体をカバーするトータルソリューションであるということです。組版ができる,印刷ができるだけのシステムではありません。

ポストデジタル

4年前に印刷業者の方々に講演させて頂く機会がありました。その時「DTP化,DTP化ということで設備投資してきたが,結果は受注単価が下がり,新規の売り上げも見えてこない,どういうことだ」という質問を頂きました。

そこでは,「DTPは印刷物を作る道具に過ぎず,お客様は印刷物を作るという過程には興味がない。デジタル化によって印刷物製作以外の価値をご提案する。それがポストデジタルである」とさせて頂きました。

印刷物の素材があり,制作があり,制作方法を変えればいろいろな媒体が作れる,いわゆるマルチユースできる素材管理とワークフロー管理。そのプロセスをデジタル化して,お客様の業務プロセスまでも含めてトータルに効率を改善する。デジタル制作とコンテンツマネジメントとワークフロー,この3つを基にフルデジタル化を実現するということを提案させて頂きました。

お客様とはパートナー

システム開発にせよ印刷物製作にせよ,お客様とは受発注という関係になりますが,何でも指示どおりに作るというのではなく,お互いにパートナーであるという認識に立って,対等な立場でシステム化のコンサルティング提案できるということが必要だと思っています。

お互いの業務プロセスのボトルネックとなっているところを見出して,やり方そのものを変えるということもあります。組織や個人の担当・役割が細分化されていますので,横断的に問題点を把握できるコーディネート役も必要になります。

お客様とパートナーとして相互に協力しあい,お互いの利益を追求し,問題点を相互に指摘して改善していくことができれば,お互いの大きな発展とトータルな効率化がもたらされると考えています。

インターネットはコラボレーション・ツール

方正では,レイアウトができる,印刷ができるだけのソフトを作るのではなく,お客様の業務プロセスまで含めたトータルなソリューションを実現できるシステムを作るということにフォーカスしています。

チラシレイアウトソフトにデータベース連携の機能と高度な商品組版機能を付加したFounderFIT Enterprise editionをリリースしました。頻繁に変わる商品情報,商品の差し替えやレイアウト変更など,チラシ制作で最も労力が掛かっていた作業を大幅に改善できるものとなっています。

流通小売業の方々には,FeMS(Founder e-MarketingSolutions)を提案させていただいていますが,それを具体化したものとして顧客連携型データベースシステムFounderFlyersがあります。チラシ制作に関わるすべての方々がインターネット・イントラネット環境で最新の情報を共有し,効率良くチラシ制作ができる情報管理システムとなっています。

これから力を入れていきたいものとして,ASPサービスのパワープリントがあります。単に印刷物の受発注をするサイトというのではなく,発注側・受注側双方の人手の掛かるプロセスを簡易化し,お互いにコストを節約できる仕組みを考えています。オンデマンド印刷業界の方々にご活用いただけるサイトを目指しています。

印刷・メディア制作に関わるすべての方々が,コラボレーションツールとしてインターネットを活用する時代になります。格段の効率化とコスト削減にITを活用する。これが実現できなければ勝ち組にはなれないと思っています。方正は,そのソリューションを提供させていただきます。

■出典:JAGATinfo 2002年5月号

2002/08/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会