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印刷産業、印刷市場の現状と見通し

JAGAT印刷白書「2001→2002」によれば、2001年の印刷産業の出荷額は、対前年比0.5%減となった。唯一の頼み綱であった商業印刷市場が、広告宣伝費縮小の影響を受けて年度下期から前年割れになったことがマイナス成長の最大要因である。ただし、広告宣伝市場といっても媒体による差は非常に大きい。マスコミ4媒体は全て前年割れになったがSP広告は全体としてはほぼ前年並みで推移した。SPについても、内容別に見るとDMは5%以上の高い伸びを示したが、電話帳は▲5.5%と大幅な前年割れになるなど、分野別の明暗がくっきり出た。

DMの伸びは、フォーム印刷業界というひとつの業界の出荷額全体を押し上げている。それは、非現金取引の増大による金銭関係郵便がこの数年で数十億通も増加したことと経済のサービス化によるものだから今後とも伸びが期待できる。また、包装資材・容器市場は全体としては縮小しているが、紙・板紙製品のシェアはここ数年上昇している。印刷産業には追い風も吹いている。
以上のように、不況とはいいながら時代の流れに沿った部分には拡大する市場の芽も出てきている。ただし、どのような企業でもそれを捉えることができるわけではない。

印刷産業は、市場が成熟化するなかで、プリプレスのフルデジタル化を通して手にしたデジタル技術を生かして新しい事業領域拡大にチャレンジしてきた。しかし、それが短期的にはいくらかの売上と利益をもたらしてくれたし、その方向に将来の姿が垣間見られるが、それを確信できる状況にはない。それは印刷産業に限ったことではない。
デジタルコンテンツビジネスは、ゲームと音楽系で8割を占めており、印刷産業が新しい分野として期待した電子出版、つまり出版系デジタルコンテンツ分野は全体の4%に過ぎず、これからどんどん拡大していくという状況も見えない。紙媒体が、情報の知的活用のインターフェースとして優れた特長を持っているからであり、そこに電子出版向けにeペーパーを開発する意義もある。

紙VS電子媒体についてはかなり明確な方向が見えてきた。紙はプッシュメディア、電子媒体はプル媒体という特性を持っているが、その特性と情報利用者の情報摂取の姿勢とのマッチングを間違わないことが紙媒体と電子媒体の使い方の基本になる。このことは、通販業界、多種大量の印刷物を使う製造業、そして出版の世界でも共通である。

2001年、印刷産業はバブル崩壊後3度目のマイナス局面に入ったが、景気の山谷を経るごとにジリ貧の様相が強まってきた。それは、1980年代いっぱいまで印刷産業の成功をもたらした利益構造が崩れてきたからである。このままいけば、印刷産業は景気云々ではなく縮小が続いていくであろう。
しかし、幸いなことに印刷産業は情報の世界に深く関わってきたし、これからも関わっていける位置にある。情報の知的活用に適したインターフェースである紙媒体と、その上に築かれた印刷文化を土台としてデジタルメディアを扱う情報産業として発展していける素地を持っている。

以上は、全155ページからなる印刷白書最新版 「印刷白書 2001→2002」の解説編の概要である。
「印刷白書」は、印刷産業の現状と動向を「統計資料に基づいて」「客観的に分析する」とともに、印刷産業の「時代模様をキーワードによって明らかにする」ものである。 資料編には印刷産業と印刷市場についての統計データを110点収録してある。最大の特徴は、他に見られないデータを豊富に掲載していることと、各データから何を読み取るべきかの明確な視点からデータを加工、図表・グラフ化してあり、そのまま計画資料・会議資料等として利用できるところである。
「印刷白書」は、印刷産業動向把握の決定版であり、印刷産業、同関連企業の皆様の経営戦略を考える時の必携の書としてご利用いただける資料である。

■関連セミナー:2001年の印刷産業を振り返る

2002/05/17 00:00:00


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