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あらゆる広告に完璧な手法を提案

株式会社光洋

街中で目を引く屋外広告を見渡してみると,最近はビッグサイズのビルボードやポスターが増えている。ラッピングバスも東京都内で随分見られるようになった。素材もデザインも多様化しており,今後も屋外広告市場の拡大が見込める。
そこで今回は,大型インクジェット出力による,グランドアート事業を展開する株式会社光洋の取締役営業推進本部長の川口晶子氏に,同社の事業展開についてお話を伺った。

あらゆる空間を媒体化する

光洋(東京都中央区)は,1967年オフセット印刷中心の印刷会社として創業された。一般印刷物のほかに屋外広告ボードに注目して,外国煙草のビルボードの印刷を中心に,大型サイズの印刷で実績を積んできた。

3年半前に日本で初めてNUR社の「BLUE BOARD HiQ」を導入し,インクジェットビジネスに参入した。最大幅5mのスーパーラージ・フォーマットで,後加工や施工もスムーズに行える上に,発想の転換が図れるようになった。

欧米ではインクジェットによる大型の屋外広告がかなり普及している。しかし,日本ではさまざまな規制もあり,欧米に比してかなり立ち遅れている。「日本では大型屋外広告はネオンサインの延長線上に捉えられている」と川口氏は言う。画一的な企業名の認知度を上げるためだけになってしまい,長期間にわたり同一の意匠に頼ってしまっている。しかも,風景の中に溶け込んで,次第に人目を引くことも少なくなってしまう。このような広告の場合,制作コストや掲載コストが莫大なため,景気の低迷に伴い,市場の先細りもある。

同社では,そういった状況を打破するため,「あらゆる空間を媒体化する」という革新的なコンセプトを掲げたグローバルネットワークグループ「M@kom(マコム)」に参加した。

大型プロジェクトを次々に成功させる

「M@kom」は世界中の顧客にラージフォーマットコミュニケーションとより多くの製品・サービスを提供することを目的に発足し,現在世界12カ国に拠点をおき,多くの大型プロジェクトを成功させている。「M@kom」に参加することによって,ノウハウの共有,グローバルスタンダードな品質をコントロールすることができる。また素材やハード,ソフトの共同購買によりコストの削減に取り組んできた。

メーカーとのパイプを強化し,新しい素材の情報収集や開発にも取り組んでいる。プリント素材の選択は条件を考慮して検討するが,メッシュシート,フロントリット,マーキングシート,コットン,じゅうたんから風呂用マットまで印刷素材を選ばないため,新しい用途の提案にもつながっている。現在70種類以上のラインナップがそろえられている。

「M@kom」のラージフォーマットコミュニケーションは,大きく分けてプリンティングサービス,インストレーションサービス,メディアサービス,の3つの基本コンセプトから成り立っている。

(1)「プリンティングサービス」とは,顧客ニーズに合った最も効果的なデータ作成,印刷方法,プリンティングマシン,素材,後加工を提案。見せ方を踏まえてトータルな観点から臨機応変に対応していく。

同社が独自に開発したキャリブレーションシステム「ライン」は,本機校正が難しいラージフォーマット印刷の校正を分かりやすく提供できるようにした。課題であった大型インクジェットの色校正は,データの互換性を保つことが困難で,コストも掛かっていた。同社では一般オフセット印刷のような色の再現性に優れた校正を目指し,独自のミニ校正システムに取り組んで開発した。「ライン」も既に世界各地の「M@kom」に配布されており,世界中で同品質のプリントが得られる。

(2)「インストレーションサービス」とは,プロジェクトにとって最適の施工方法を提案・設計・実施することである。施工方法の選択に当たって重要なものは,フレキシブルで,安全で,臨機応変であることだという。設置後の貼り替えや現状復帰,またはゴミ処理やリサイクルに至るまで細やかなサービスを提供している。

システムの設置・施工に関しては,操作が簡単であることと予算内での施工方法,印刷物を最も効果的な方法で見せて,印刷物の交換が行えることに重点をおいている。そしてあらゆる方法を模索し,顧客ニーズに合ったシステムの開発を行い,コストダウンを図っている。

具体的な商品としては,屋内外の広告の取り替えが迅速かつ容易に行える「イージー・チェンジ・システム」がある。作業が容易で,専門業者を手配することなく手軽に壁面サインの設置や交換が行える。また大型壁面広告に使用されている工法で,分割されたシートをつなぎ合わせる「ファスナー加工」,デジタルプリントシートを簡単なスナップシステムを利用してアルミ枠と硬質ラバーレールで固定する「クリスタルシステム」などがある。

ほかにも「エア・スクリーン」「エア・コラム」「エア・テント」など新しいタイプの媒体を駆使したオリジナルシステムがあり,これら空気注入式のシステムをInflatableと呼び,印刷技術と絡めてよりパフォーマンスに富んだ広告の実現に役立てている。

(3)「メディアサービス」では,ビル壁面はもとより,仮設タイプなど,ユニークでオリジナルなメディアの提供を図りたい。顧客ニーズに応じてあらゆる可能性を追求し,不可能と思われたプランを実現することが最大の喜びという。

そんな同社が手掛けたプロジェクトで,話題になったのが,渋谷駅前の壁面に中村俊輔選手を起用したイベント連動大型広告を手掛けたことであろう。バルーンで膨らませた中村選手の巨大な人形に裸の写真をプリントし,さらにユニフォームを着せるパフォーマンスを行った。これも随分マスコミに騒がれた広告である。

ほかにも同社の関連会社であるケイファクトリーが企画したのが,2001年7月にコニカが採用した日本初のスカイバナー広告である。縦25m,横60m,総面積1500m2の巨大な広告幕をヘリコプターで引っ張って20日間湘南の上空をフライトし,訴求を図ったものである。

新しい技術と新しい素材に常に挑戦

もちろん大型のプロジェクトだけに従事しているわけではなく,小型のインクジェットもあれば,通常のオフセット印刷,製版にも注力し,「お宅に出すには小さすぎる」と言われることがあるそうだが,あらゆるサイズ,さまざまな印刷物制作に対応できる体制になっている。

同社の事業は,大型インクジェット・プリンティングなどの「グランドアート事業」,ポスターの印刷加工やPOP,カタログ,各種商業印刷物などの「プリンティング事業」,プリプレス全般からオンデマンド印刷,Webコンテンツ制作などの「パブリッシングサポート事業」に分けられる。

「常にクリエーティブでフレキシブルであり続け,世界の先端を行き新しい技術と新しい素材を取り入れていき,ワンランク上の力を付けていきたい」と語っていた。確かに苦労も多いが,完成した時の達成感は何ものにも代えられないという。今後ワールドカップやアテネオリンピックなど大きなプロジェクトがあり,ますます忙しくなっていくだろう。
(上野寿)
■出典:JAGAT info 2002年6月号

株式会社光洋
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2002/06/13 00:00:00


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