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あれも、これも…の3D・VRが陥りやすいこと

最近WEBで3D表現をする技術開発やサービスが焦点になっている。3Dの歴史は古く、CAD、CGなどは根付いているが、ゲームを除いて電子メディアでのインタラクティブな使い方はこれからの課題である。

ゲームが3Dで先行できたのは処理をIC化できたからで、ゲームで専用機と競争しているパソコンも、ビデオチップに3Dエンジンを積んで使うとか、それがなくてもCPU内部にはintelではMMXやSSE、AMDは3DNow!、モトロラはAltiVecというように、マルチメディア処理に向いた機能を持たせた。つまり殆どのCPUおよび、かなりのPC環境はローカルに3Dの能力は持つようになったので、ネットワーク環境でもそれらを生かして、サーバーの負担をかけずにマルチメディアのサービス応用が考えらえるようになった。

以上が現実で、だからといってバーチャルリアリティ(VR)の時代が来たというのは飛躍であるように思う。何年か前からPCの画面の中に自分達の仮想の姿を登場させて、チャットやらモーションをさせるものがあったが、表示品質はもはやゲーム機に追い越され、インタラクションも新しいものがあるわけではないお粗末なそれらをVRというのは無理があり、あくまでVR「ごっこ」でしかない。

インタラクションを伴わないならば、TVも映画も元来バーチャルなものであり、映画は特に臨場感があるからリアリティ性は高い。以前どこかの飛行場で前面壁面いっぱいにプロジェクションしたフライトシミュレータを触ったことがあるが、椅子も本物らしいもので緊迫感があった。

電子メディアにとって、自分が包み込まれるようなとか、その中に体ごと入っていける大画面がもたらす臨場感というのは新たな価値であろう。企業向けのニッチな3DサービスならXGAで大画面にプロジェクションすることを想定した応用開発はこれから盛んになるだろう。

しかし家庭となるとまだ大画面はそれほど普及しておらず、WEBでがんばってもVRではゲーム機に負けるのではないだろうか。広い需要を考えれば無理にVRにせずに、3D表示のインタラクティブ化と考えるだけでも、いくらでも応用範囲はあり得るのである。何でもできそうだからといって、いろんな要素が入って目的や対象のはっきりしないものは成功し難い。マルチメディアはそうなりがちであるから、余計に気をつけなければいけない。

■出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」159号(巻頭言)

2002/07/05 00:00:00


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