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UVインキをめぐる最近の動き

ハイブリッドインキの2つのタイプ

ここ数年の印刷材料における開発のひとつの視点は資源環境問題への対応である。印刷インキでは、アロマフリーインキから大豆油インキ、VOCs(揮発性有機化合物)ゼロインキへと新製品が開発、市場に出されてきた。ハイブリッドインキの開発の背景にも資源環境問題への対応がある。

ハイブリッドインキには、UV硬化インキの素材と酸化重合型インキの素材を組み合わせることによって、UV硬化と酸化重合それぞれの乾燥方式の特長を併せ持ったタイプのインキと、UVインキではあるがUVインキ専用の副資材(インキローラ、ブランケットなど)を使用しなくてもよいという意味でハイブリッドインキと位置付けられるものがある。 前者には、石油系溶剤を含まないこと、古紙のリサイクルの過程における脱墨性が従来のUVインキに比べて優れているので古紙再生エネルギー負荷を増加させないこと、そのことによる再生時の紙繊維へのマイナス影響軽減という利点がある。

主眼は環境問題対応

現在、UVインキはシール・ラベル印刷、ビジネスフォーム印刷では広く使われており、紙器印刷でも一部に使われているが、光沢、網点再現性、そしてインキ価格や専用副資材利用といった制約から出版印刷、商業印刷分野ではほとんど使用されてこなかった。ハイブリッドインキは、上記のような問題をかなり解消しており、従来のUVインキより広い分野での利用が期待されている。

ただし、UV照射装置は必要だから、UVインラインコーティングにおける油性インキ印刷後のUVニスコーティングによるグロスバック(油性インキが乾燥するにつれて光沢の低下を起こす)などの日常問題の解消が期待できる分野以外では、環境問題対応からの必要性の強さが利用拡大の大きな要因になるのではないだろうか。

ラベル・シール印刷での新しいUV印刷

UVインキについては、ラベル・シール分野でいくつか新しい動きが出ている。ひとつは、プロセスカラー印刷向けの水なし平版+UVインキ印刷である。UVインキの水なし平版適性はインキの粘弾性のコントロールで克服し、最近ではDVD(デジタル・ビデオ・デスク)表面のタイトル印刷用にUV水なし印刷を利用した印刷機が開発された。
もうひとつは、ラベルシール印刷におけるUVフレキソ印刷である。フレキソインキは低粘度でしかも高顔料濃度なので隠蔽性に優れていることに加えて、CTPフレキソ版使用によって画像再現性が向上したこと、VOCs排除への対応といったことからUVフレキソが注目され始めた。

ビジネスフォーム印刷の分野では、高速プリンタでの印字の仕事が増加するにつれて、トナー定着のための高温による問題解消のために、油性インキからUVインキへの移行が進んでいる。

(出典:JAGATinfo 2002年8月号:参考資料:(社)日本印刷学会「デジタル化時代のオフセット技術講習会」テキスト)

2002/08/01 00:00:00


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