本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

苦しくなるグラビアと期待が高まるフレキソ

環境問題対応で苦しくなるグラビア印刷

2002年4月にリスボンで行われたコンプリントで発表された今後の各印刷方式のシェアでは、グラビア印刷が2002年の18.5%から2007年に17.0%へと減少するのに対して、フレキソ印刷は10.5%〜11.5%へとシェアを上げると見られている。数字の傾向自体は以前から発表されてきたものと変りないが、グラビア印刷への視線は年々厳しいものになってきている。

世界的に見て、グラビア印刷の市場はロングランのパッケージ印刷と雑誌印刷に限られてきているが、いまさらにデジタルフレキソとオフ綸にその領域を脅かされようとしている。従来グラビア印刷が対象としてきた中ロット出版グラビア印刷市場にオフ綸が侵食を始めている状況は、大サイズのオフ綸設置の増加に対して中幅グラビア印刷機の導入減少に現われている。一方、新たに導入されるグラビア印刷機はますます幅広のものになってきている。

今後とも、大きな技術的変化が期待しにくいグラビア印刷では、溶剤型インキを使用することによる環境問題にどのような対応ができるかが、その命運を大きく左右するだろう。
グラビア印刷の最大の課題が環境問題であることは、炭化水素の排出規制を定めた「埼玉県生活環境保全条例」の例でも明らかである。もし、同条例がそのまま施行されれば、膨大な処理コストを掛けるか、生産量を半分以下に押さえなければならないなど、事業の継続が危ぶまれるという。

結局、条例の猶予期間延長と炭化水素類の使用量の上限を引き上げるという規制の緩和で業界と行政の折り合いがついたが、今後5年間で規制をクリアしなければならない。具体的な対応策は、版の浅版化、インキの高濃度化、水溶性インキ利用の拡大である。年々厳しくなる環境関連規制が、否応無しの対応を迫っているから、いままでにないスピードで技術開発が進むのかもしれない。

CTPとUVインキで市場拡大を狙うフレキソ印刷

グラビア印刷の窮境に対して,フレキソ印刷には今後の期待がかけられ、メーカー、ディーラーともに、フレキソ印刷システムの販売強化に乗り出した。
コーパックは、JGAS2001において、ラベル印刷,フィルム印刷、カートン印刷分野におけるフレキソ印刷普及を訴える力の入った展示を行った。ハイデルベルグジャパンは、スイスのラベル印刷機メーカーであるガルス社の日本における販売権を得て、販売並びにメンテナンスサービスを開始した。コムテックスは、次ぎの時代を画するものは「フレキソ」として、ZED社のレーザー彫刻機「ZEDMini」の扱いを始め,その一号機を納入した。

日本フレキソ技術協会の推計によれば、2002年春時点における日本のフレキソ印刷シェアは、ダンボール、紙袋分野が90%、ワンウエイ紙容器が40〜50%、ノート,封筒分野は数十%とかなりのシェアを占めているが、軟包装分野ではまだ数%であるという。この分野での例外は紙オムツの外装体への印刷で、80%強のシェアを占めており、それ以外ではパン袋とペットフード袋である。
フレキソ印刷が狙う今後の市場は、環境問題対応に決定打を見出せないグラビア印刷の牙城であった高品質の軟包装印刷やオフセット印刷が主体のG段フルートの分野、そしてラベル分野である。

フレキソ印刷が、今後その市場を拡大してくと見られるひとつの要因は、フレキソCTPによる品質の向上である。フレキソ用CTPはプロセスカラー印刷への対応力を飛躍的に高め、さらにスリーブ状のCTPに直接イメージングするCTSS方式の採用によって、版のシリンダーへの貼り込み作業時間と貼り込み精度を飛躍的に向上させることができる。
もうひとつは、UV印刷対応のフレキソ印刷である。フレキソインキは低粘度でしかも高顔料濃度なので隠蔽性に優れていることに加えて、VOCs排除が可能になるからである。現時点では、特にラベルシール印刷分野で注目を集めている。

(出典 JAGAT 発行「2002-2003 機材インデックス」ー工程別・印刷関連優秀機材総覧―)

2002/08/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会