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帳簿の管理ではなく、利益の源泉を管理すべき

〜JAGAT 常務 山内亮一にインタビュー〜

質問:JAGAT Webmaster
回答:社団法人日本印刷技術協会 常務 山内亮一


Q:印刷会社の中でも社内のネットワーク化が相当広まっている。いわゆる経営管理という点でのコンピュータ化は,過去からどのように進んだのか?

A:1970年代前半にJAGATでも共同センター方式でコンピュータによる給与計算を行った。業界でもそのあたりからコンピュータ化は始まったといえるだろう。
 次は請求書の発行など,単体の業務ごとに伝票を発行し,各社が自分でコンピュータを使うようになった。 売上や生産高集計あるいは「原価管理」に利用されたのではないか。

Q:原価管理とはどういうことをしたのか

A:作業時間を日報に記録して、その時間にアワーコストを掛けて集計する。 コンピュータでやるやらないは関係なく、原価管理の必要性が意識され、手法の勉強もかなり行われたように聞いている。

Q:利益管理は?

A:1977〜1978年ごろ,塚田最高顧問が利益管理システムを提唱し、JAGATとして啓蒙活動を始めた。10年ほど前の調査だが、JAGATがいう利益管理システムを導入、運用している会員企業が2割ほどあった。
80年代を通じて、50名規模以上の印刷会社では少しずつコンピュータ利用が増え,同時に利用する管理範囲も広がっていった。しかし、主な機能は予定表や伝票発行や売上・生産高集計だと思う。経営状況をより深く把握してその結果を活かしていくということはあまり無かったようだ。

Q:稼働率計などもあったが,進捗管理とは結びついていなかったのか。

A:稼働率計は入力部分に問題があった。作業者が作業の節目ごとに何らかの入力をしなければならなかったから、データの信頼度が問題になった。その後、機械の信号からデータを拾うもの出てきてそれなりに普及したと思う。

Q:80年代にOA化といわれていたものが,印刷にどのように取り込まれていったのか。その後,コンピュータについて何が話題になったのか?

A:業界内で話題になったテーマはほとんどない。しかし、工程管理など問題が無くなったわけではない。納期を含む仕様変更が多いといったことで作業進行がスムースにいかないという問題である。部数や紙などの仕様が客先でも固めていないという状況を無視した情報フローになっているなど「システム」の問題がかなりあったが、どちらかというと客のわがままと営業の怠慢という捉え方をしていたので改善できない企業が多かった。とにかく、工務担当者の馬力で何とか日々の仕事をこなしてきた。
ここ数年では、小ロット化、短納期化がさらに進んできて、もう従来のやり方では対応できなくなりつつあった。しかし、丁度、インターネットとWebが普通に使えるようになってきて、情報をリアルタイムで共有してかなりの成果を出す企業も出てきた。

Q:自分で予定の組み換えを行い,関連工程が見られるようになればよいということか?

A:作業情報を一箇所に集めるセンター方式ではなくて,情報共有して分散方式で業務管理をできるようにする方向である。
その他の管理でいえば、利益管理に対する感心の高さが、この2,3年のJAGAT主催利益管理システム講習会への参加者数増加に現われている。売上高や生産高だけでなく、利益を部門別、品目別等細かくシビアに見ていかなければならないという意識の表れだと思う。今後は経営数字をもっと有効に使おうという動きも増してくるだろう。

Q:プリントカフェについて調べたとき,日本ではこれといった,工程管理や利益管理に関する共通認識ができていないので,こういう考え方にそって,ソフトを作ればよいということがわからなかったので,日本に進出しなかったと聞く。

A:それは正解だった。

Q:それでは,今後どのような進め方があるのだろうか。

A:今のままでは進まない。先に述べたように,これだけ利益がでなくなったから,利益管理をきちっとしていかなければならないという気運はある。しかし、ITをうまく使って新たに工夫してがらっと変えていこうといったことはあまり考えられていないようだ。 ITとかECについて、本来の意義の理解不足や少し先に向けての利用イメージが描かれていないからだと思う。

Q:JAGATが主催する2002年12月のトピック技術セミナーや2003年2月のPAGEにおける大きなテーマとして,従来の設備が利益を稼ぎ出すという考えから脱却して,利用者側の運用管理の細かさで利益をだすべきであることを取り上げる。

A:利益管理システムよりも,利益の源泉である個々の業務管理のきめ細かさ,うまさが今後のビジネスに大きな影響をおよぼすのではないか。つまり,印刷業界には,設備が稼ぐというよりはマネージメントで稼ぐという大きな転換が必要だろう。

Webmaster:ありがとうございました。

2002/09/27 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会