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デジタルソリューションプロデューサー

〜ニュートレンド・インタビュー 第6回〜

キャノン販売株式会社

ニュートレンド・インタビューの第6回目は,キャノン販売 ビジネスプロダクト企画本部 部長 岩瀬広樹氏にご登場いただいた。カメラ,スキャナ,プリンタ,複写機や半導体製造装置などの先進技術をグローバルに展開するキャノン,そのなか国内のマーケティングを担当するのがキャノン販売グループである。

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基本理念と組織改革

(岩瀬氏)

グローバルに展開するキャノン,そのなかで国内のマーケティングを担当するのがキャノン販売グループです。私たちはキャノンの製品を軸にしてソフトやサービスを付加し,さまざまなソリューションを提供する役割を担っています。

キャノン販売には3つの基本理念があります。「顧客主語」「プロフェッショナル」「ソリューションプロデューサー」です。「キャノン主語から顧客主語」をモットーとし,常にお客様の視点に立って最良の解決策を提供していくプロフェッショナル集団であり続けたいと考えています。

さらにソリューションの提供に当たって,私たちは「プロデューサー」でありたいと思っています。お客様の問題点を主体的に発見し,その解決策を自らのアイデアと行動で作り上げていくことです。私たちは「デジタルソリューションプロデューサー」として,高い付加価値を生み出すプロフェッショナル集団を目指しています。

2002年,お客様に対する対応力強化を目的に従来の組織編成を大幅に改革しました。今までは各商品分野に応じた事業部と販売チャネルによって活動を展開してきましたが,事業分野,チャネル,エリアそれぞれに対する位置付けと役割の刷新を図りました。

ビジネスソリューション分野におけるチャネル別組織の再編としては,映像情報販売事業部のチャネル部門をビジネスパートナーとシステムパートナーの2部門に分割,中央販売事業部は官公庁,金融,製造,電機,流通サービスなど業種別に営業本部を独立させました。高付加価値のビジネスを推進していくためには,お客様に対する対応力の強化がますます求められていきます。

カラー化の推進,色再現の統一

キャノン販売の売上構成は,複写機・通信機が33%,コンピュータ機器が21%,周辺機器が21%で,これらを合わせた事務機・OA機器で75%を占めています。後はデジタルカメラを含むカメラが9%,光機−半導体製造装置が13%となっています。

カメラ,スキャナの入力デバイスから,プリンタ,複写機という出力デバイスまでキャノンという1つのメーカーで開発,商品化している,また電子写真の技術とインクジェットではバブルジェットの技術の両方をもっている,これらのことが私どもの強みとなっていると思っています。 現在,これらのすべての入力デバイス,出力デバイスのカラーシフト化を進めています。過去モノクロ中心であったプリンタ,複写機は,10%がカラー化していますが,2005年には5割がカラーデバイスになると予測しています。家庭用からプロフェッショナル用途まで,すべてのゾーンにおいてカラーの環境を整えていきます。

キャノンでは,デジタルカメラ,スキャナ,プリンタ,複写機など,すべてのデジタル機器で扱う「色」を統一するカラーマネジメントを採用しました。カラー選定を超高速処理するスーパーコンピュータを導入,キャノングループ全社の色決めを担当するカラーテクニカルセンターを設けました。日米欧などの主要市場ごとに消費者が好む色を分析,あらゆる製品で「色」を統一的に再現できる体制を整えます。プリンタや複写機などの開発工程で,担当者1人当たり平均6カ月掛かっていた色決めと調整が3日間で完了するようになります。

グラフィックアーツ業界へのソリューション

日本雑誌協会では,雑誌広告製作をデジタル送稿で行うワークフローを確立,広告EDIへの動きが,実証実験の段階から実際の業務として行われる段階へとなってきました。そこでは,印刷物の納期を半減するという目標を揚げていましたが,色校正をいかに効率良く行うことができるかがキーとなります。広告主,広告代理店,制作会社,製版・印刷会社の間をネットワークで結び,色校正を即座に行える仕組み,リモートプルーフが実現されなくてはなりません。

また印刷業界では,CTP普及率が高まってきて,フルデジタルのシステム化が一段と進もうとしています。印刷会社がCTPの導入効果を高めるには,色校正をいかに確実に速く安価にできるかが決め手となってきています。

このような要求におこたえするものとして,キャノンでは大判インクジェットプリンタWシリーズをリリースしています。新開発の1インチワイドヘッドを搭載,6色一体型で各色1280ノズル,合計7680ノズルの高密度ノズルで高速出力を実現,また最新ヘッド駆動技術New「MicroFine Droplet Technology」により高画質を実現,カラープルーフの厳しい条件に,業界最高水準の性能でこたえられるものとなっています。

一方,POD市場に向けてはPIXELシリーズをリリースしていますが,そのソリューションとして名刺・はがきから会社案内,製品案内,販促パンフレット,各種チラシ,案内状等々の各種印刷物のデザインテンプレートをデジタルデータで提供する「ピクセルデザインサービス」を展開しています。お客様のすぐ印刷物が欲しいという要求にこたえられる仕組みとなっています。

最近話題の映画に北野武監督作品「Dolls(ドールズ)」がありますが,その試写会の案内パンフレット『ドールズ読本』はNew PIXEL MAXで制作されました。A4フルカラー8ページもので,全国分で8万部を印刷しました。印刷物を発注される方の意識の変化を感じさせられる出来事でした。最近,キャノン販売には,PIXELや大判プリンタを利用する新しい試みのご要望が数多く寄せられるようになってきています。

JAGATの「印刷新世紀宣言」には,「印刷産業が成長を取り戻すには新たな価値を創らなくてはならない」とあります。キャノン販売は,新たな価値を創り出すソリューション,ビジネスモデルを提供させていただきたいと考えております。

■出典:JAGATinfo 2002年10月号

2002/10/24 00:00:00


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