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DTPで学んだことは次の人への思いやり

◆(株)ヤマイチテクノ 増田 和茂

 私は今年(2002年)の3月の試験に合格,6月にDTPエキスパート認証を取得したばかりで,ちょうどスタートラインに立ったところです。そんな私に原稿の執筆依頼を頂いた時は,「はい,いいですよ」と何も考えずに返事をしました。後日送られてきた資料を見ると,過去に掲載された記事が参考に入ってました。全部読むと既に更新試験をクリアされていたりと先輩の方々ばかりなので,光栄ながらも思わず「なぜ私に?」とこぼしてしまいました。さらによく読むと「うん,うん」とうなずくことばかりで,書こうと思ったことが結構書かれています。そんなわけで,大したことは書けませんが,しばらくお付き合いください。

 私のDTPエキスパートとしてのキャリアはまだまだこれからですが,印刷の仕事に関わるようになったのは,今から12年も前のことです。それまで音楽とギターに明け暮れていた私は,印刷会社に勤務することになり,まず制作部(デザイン・版下)から始まり写植機少々と製版部(レタッチ)・刷版部・営業(工務兼)と印刷機のオペレーション以外は一通り経験しました。結果的に希望していた制作部に配属になり,アナログ版下にも慣れ始めたころにMacintoshが導入され,またしばらくしてサイテックスなどのイメージセッタやスキャナも導入されて,DTPを行う設備が充実していきました。
 印刷会社にいてDTPに出会ったのは必然でしたが,この時タイミング良くDTPの導入期に立ち会えたことや,印刷を理解していく上で必要な知識を各現場や工程をとおして経験したことは本当に幸運なことで,これらの経験が今の私の基礎になっています。最新の技術を学ぶ機会を与えてくれた会社の,常に前向きな姿勢や設備投資は,今から考えても素晴らしく本当に心から感謝しています。そして気が付くとあっという間に6年の歳月が過ぎていました。全くの素人だった私も,お客様のところでの打ち合わせで概算見積もりを出して仕事を頂き,帰社して工務(用紙の手配・予定入力・工程管理),制作(デザイン・版下),製版(フィルム出力),刷版,用紙の搬入,印刷(色校・本刷り立ち会い),加工(化粧断ち・折り・製本),包装・梱包,発送・納品,原価(計算・検収)・伝票発行,集金まで拙いながら自分一人で行えるようになっていました。
 現在は,オンデマンド出力をメインに扱う職場の制作部に勤務しています。厳しい時代にも増して,さまざまなお客様の要望に苦心する日々ですが,お陰様で何とかこの世界で生かされています。

 そんな私がDTPエキスパート認証試験を受けたいと思ったのは,仕事の中でのリレーションにおける自分の役割や,これから何をすべきかを考えた時でした。この仕事で大切なことは次の工程(人),さらにその次のことをどれだけ思いやれるかだと思います。お客様のことでいえば,さらにその先のお客様(お客様のお客様)を大切にすることと言い換えることもできると思います。それにはディレクション・ソリューション能力が不可欠ということや,効率的かつ効果的なワークフローの構築,制作物にしても明確な指示に基づいた設計をしてスタッフに伝えきる能力だと実感していました。そのための勉強の一つに選択したのが,この認証試験でした。
 自分で言うのもおかしな話ですが,とにかく勉強しました。生まれて初めて。そのくらいこのDTPエキスパートについての勉強は,やればやるほど面白かったのです。何が面白いかというと,勉強している間に基礎知識が整理され新しいことが学べることはもちろん,目標だとかやりたいこと,やるべきことまでが自分の中で明確になっていくのです。それまでいくら考えたり悩んでいても,分からなかったことがです。結果的にいろいろな方のお陰で,無事1回で合格することができました。これでやっと私もスタートラインに立てました。そして今,次に挑戦すべき目標を確実に捉えることができています。これは予想もしなかったことで,全く何が起きるか分からないものですね。

 
月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」11月号


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2002/10/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会