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2002年を振り返る

JAGAT会員企業を対象に毎月実施している「月次印刷業界動向」調査では、その時々の状況をコメントとして書いていただいているが、まず、そこに寄せられた声をまとめて2002年を振り返ってみよう。

2002年は、「二極化現象が進み企業間格差は拡大している。特に,小規模企業の落ち込みが激しい」という厳しい業界状況の指摘で始まった。今の業界の低迷について「定常的景気と名づけるべきか」と見ることは共通のものになりつつある。

それにしても2002年は、より多く、また強い価格低下に関する声が寄せられた。「大手の『一山いくら』的価格に対しては原価を積み上げた価格では戦いとならず」といった業界内での価格競争から、「各得意先とも販売不振で一段と価格競争が激化」、「クライアントの値下要求が相次ぎその対応に苦慮している」といった得意先からの値下げ要求、「官公庁の入札価格が人件費を無視したようになっている」などの声である。さらに「不良債権が発生し、目下特別利益対策と称し各部署,全社員で対応」あるいは「金融・保険業界の統合合併により受注確保に不安がある」など、デフレ下であらゆるマイナス要因が噴出してきている。

しかし、4月、5月にはやや景況が緩和したようで、「3月〜5月は、受注件数,売上ともに順調であった」、「売上高において、前年同期比が101%と少し上向いている」、「4月に入り急速に受注環境は良くなっている。ただし、より短納期を要求される」といった声が聞かれた。「月次印刷業界動向」では、4月の対前年売上同月比は100.0であった。
しかし、5月(97.8%)、6月(94.9%)には再び前年を割り込み、夏以降は「印刷業界に身を置いて30数年、ここ2、3ヶ月の急激な売上低下は未だ経験がない激しいもの」、「最近3ヶ月の売上の落ち込みが大きく、資金繰りが窮屈になり夏季賞与も不支給」といった、非常に厳しい状況を訴える声が聞かれた。

そして、「10月から紙の値上げ。売上は維持するのが精一杯。原料値上げは更なる受注難と経営内容の悪化に繋がりかねない」、「9月21日以降紙の値上げがなされる。年間仕入れが3億円弱でその半年分の10%(1500万円)の値上げになる。その分は顧客に転嫁できず粗利が減る」というように、印刷用紙値上げが問題となった。
このような中で「大口受注先の印刷会社の仕事が減って受取手形が激減,一方、新規開拓のお客様は振込みが多いので売上は落ちてもキャッシュフローは好転、皮肉な話しだ」といった声もあった。

以上のように、2002年の印刷産業は、悪い材料に事欠かない1年であった。業界内の安値での受注競争もさることながら、顧客からの値下げ圧力がより一層強まって価格低下はよりデフレ色を強めている。また、得意先の業績不振や企業の統合合併による需要減少あるいは業績不振による不良債権発生などの影響が今までになく強く現れた。
中小印刷業界の売上営業利益率平均は3%強である。小規模、零細規模はすでに平均値で赤字決算になっているが、20名以上の中規模、中堅企業でもすでに営業利益率が2%を切っている企業も多い。したがって、今回の用紙価格値上げによって赤字転落を迫られる企業が増加するかもしれない。この1、2年増加してきた製版印刷業の倒産、廃業件数は、さらに加速度を増すだろう。

2002年のもうひとつの特徴は、過去にない仕事量の減少である。一般印刷の仕事のバロメータとなる平版インキの出荷販売量は、バブル崩壊後も年平均5%で伸びてきており、前回の景気後退局面での減少幅も0.8%という小幅なものであった。しかし、今回は、2001年9月以降前年割となり、1〜9月における対前年同期比は2.6%減になった。2002年の印刷業界の不振は、需要量の減少という面で過去にない深刻なものである。

企業業績を見ると、印刷業の出荷額の1/3を占める上場印刷企業の2002年度上期売上高前年比は3.0%減となった。中小印刷業は3.8%減で、業界全体の出荷額は3兆8000億円、前年比3.5%減と推計された。したがって、2002年度下期の売上高が対前年横ばいであったとしても、印刷産業の年度ベースの出荷額は7兆9700億円と推計された。バブル崩壊後、2度の景気の波を経て2001年度後半から3度目のマイナス局面に入った印刷産業だが、2002年、いよいよ8兆円の大台を割り込むことになる。

2002/12/29 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会