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カラーマネジメントが経済性を発揮する時

印刷の現場では校正刷りに本刷りをあわせようとツボネジの調整をしたり、校正刷りをするところでは本刷りの条件に合わせようと刷版の焼き度や校正インキのタックの調整をする中で、お互いになんとなく協調していたのがアナログ時代にやり方である。これはどちらも同じオフセット印刷方式で同じようなインキを使っていたからできたことだが、では印刷の前工程がデジタルになったらどういう関係になるのだろう? 校正刷りによらずに色校正をすばやく行うための工夫は過去から非常に多く行われてきたが、決定版はついになかった。カラー印刷における本刷りと校正刷りの差、あるいは色校正の精度は永遠の課題であるが、差が埋まらなかったとしても実際の仕事で使えるかどうかは別問題である。

ケミカルプルーフは平台オフセット校正印刷機よりも色が安定していたので、見栄えの感覚的な差はあっても本刷りの指標にできた。校正刷りに本刷り合わせるのも、校正を本刷りにあわせようというのも、相手が動く標的なので収斂しにくい。だから発色が固定的なケミカルプルーフの方が使いやすい面もあったのである。

デジタルの時代になって色校正専用のプリンタであるDDCPが登場したが、結局普及したのは仕様的には下のクラスのインクジェットの大判カラープロッタである。DDCPというハードウェアに対して、校正印刷の絶対的な性能が印刷のような管理をしないでも発揮できるように期待したが、それはコストがかかりすぎたといえる。

理屈でいうとインクジェットが色校正に使えるところはかなりあることになる。オフセット印刷の本刷りの1枚目から何万枚目かまでの間には、色にもよるが2とかの色差があることもある。カラープリンタ色校正がこのバラつきの中間あたりに納まっているならば、たまたま本刷りのn枚目とプリンタ校正を比較して若干の違いがあると思えても、本刷りの見本としての校正の役割は果たすことができる。これは印刷のバラつきおよびプリンタのバラつき管理の問題である。

印刷やプリントの方法が何であれ、動く標的を相手にしていては管理はできない。それよりも本刷りと校正刷りの管理のレベルを揃え、両者の環境の違いも相関もはっきりさせることがカラープルーフの土台になる。このような基盤があるならば、その仕事における色の許容範囲の中で最も経済的な出力システムを選択することができる。

DTPに端を発したカラーマネジメントシステムは、最初はプリプレスの作業環境のように思われていたが、最近やっと印刷品質管理との関連で使おうという気運になってきて、印刷の色管理と連動して使われる段階にきている。言い換えると印刷の色管理が計数的に行われているところでは、最も経済的なプルーフシステムが導入できるということになって、これらかCMSの経済的な効果が期待できるのではないかと思う。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 198号より

2003/01/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会