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メディア環境が大転換するとき…ビジネスのゆくえは?

コンピュータを着た生活

朝目がさめたら,洋服を着て,コンピュータを着る…。そんな生活を実践している人がいる。大阪大学大学院 情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 塚本昌彦助教授(写真)は,「ウェアラブルコンピューティング生活」をスタートしてもうすぐ丸2年になる。

もちろん,ウェアラブルの用途を研究するためではあるが,「iモードが突然ブレイクしたように,ウェアラブルのブームも突然やってくる。2003年には,渋谷・原宿の若者の50%はヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着しているだろう」と豪語している。

「ウェアラブル (wearable)コンピュータ」は,その言葉どおり「着ることのできる」コンピュータ。頭からかぶって装着するヘッドマウント型,眼鏡のように鼻と耳にかけるフェイスマウント型,片方の目の前方少し横に置くスカウタ型など,さまざまなタイプのディスプレイがある。コンピュータを常に身につけているので,いつでもどこでも好きなときに利用でき,しかもモバイルのように手に持たなくてもいいので,歩きながら,作業をしながら…どんな状況でもコンピュータが使える。いわば,モバイルの究極の形がウェアラブルコンピューティングだといえる。

新しいコミュニケーションツール

塚本氏の予測している今年(2003年),ウェアラブルが若者の間で広まるとはなかなか思えないが,すでに産業用途としてはかなり浸透している。建築設備分野での保守・点検,工事現場など,資料を検索したり,現状を記録するような場所で活躍している。

一般に普及するには,軽量・小型化,低廉化が目下の課題である。また,モバイルツールとして,多機能化した携帯電話が広く普及しているいま,ウェアラブルのニーズがどこにあるか,ということも問われる。前者については,各メーカーの開発によって手軽でファッショナブルなものに近づいていく可能性はあるだろう。

塚本氏は,ウェアラブル・コンピュータの用途を,新しいコミュニケーションツールとして捉えている。ウェアラブルは,1人でも情報検索やゲームとして使えるが,相手がいれば,コミュニケーション・ツールとしてのエンタテイメント性に広がりが出てくる。「友人との対話の中で『昨日,○○さんに会ったよ』という話題が出れば,第三者の映像が映し出されて2人で共有することができたり,効果音を出したり…」。そんなコミュニケーションの形が実現できれば,携帯電話以上のインパクトで突如としてブームがやってくるかもしれない。

ユビキタス社会の到来

一方,いつでもどこでもコンピュータが使えて,さまざまな情報が入手できる「ユビキタス」という言葉はここ数年ですっかり定着した。具体的に,バーコードの次世代版といわれるICタグを商品の値札に組み込むことによって,買い上げ商品の合計金額を一瞬にしてはじき出したり,棚卸しや検品など商品管理の効率化を上げるようなことはすでに試みられている。

身の回りのあらゆるものにタグをつければ,外出先から冷蔵庫の中の食材をチェックしたり,なくしたモノをインターネットで検索できるようなことも可能になるだろう。人が着るウェアラブル・コンピュータがモノや場所についたコンピュータと情報交換をすることで,情報やコミュニケーションの形は様変わりするだろう。

新しいビジネスのヒントは…

SFや夢物語のようかもしれないが,ネットワークがさらに発達すれば,2010年にはそんな社会が到来するに違いない。そのようにメディア環境の大転換が待ちうけている今,メディアに関わるビジネスでは何をすればよいのだろうか…。

PAGE2003基調講演(2月5日 10:00-12:00)では,ウェアラブルの先端をいく塚本氏と,脳とコンピュータの研究をしている明治大学 理工学部 情報科学科 理工学部長 向殿政男氏を迎え,変化していくメディア環境を実感できる話をしていただく。また,午後には,日本の印刷の未来像を描くセッション,デジタルプリントがどう普及するかをテーマとしたセッションを設けている。

将来が見通せない…,不安がある…。まずは,PAGE2003に足を運ぶことをオススメします。実際に,見て聞いて実感し,一歩を踏み出してください。

岡千奈美

2003/01/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会