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CMS+IT=リモートプルーフ

プリプレスのデジタル化はCTPにより一つの到達点を迎え,次なる目標としてIT技術との融合による全体最適化の道が模索されつつある。こうした視点で色校正を捉え直すとまだまだ改善の余地があるようだ。例えばリモートプルーフは,バイク便のコストや営業マンが校正刷りを持ち運ぶ時間を削減するという文脈で語られることが多いが,その先には,ネットワークをベースとしたより緊密な共同製作作業(ネットワーキング)の姿が思い描ける。
そこで今回は,昨年11月に行われたテキスト&グラフィックス研究会のミーティング「進化を続けるリモートプルーフシステム」からサカタインクス新規事業推進室の堀本邦芳氏の「BEST Remoteproof」を紹介する。
BEST Colorproofは,一言で言うとCMS機能をもつインクジェットプリンタ用のソフトRIPである。提供しているのはドイツのBEST社である。BESTとは3人の創設者の頭文字である。1998年にヨーロッパで発売を開始し,日本では少し遅れてサカタインクスが扱っている。この3年半に全世界で3万5000本以上のパッケージが出荷され,この分野で急成長を遂げている。

リモートプルーフに向けた課題

今,色校正上で一番問題になっているのは,営業効率の問題と,カラーコミュニケーションがうまく伝わらないという問題である。コストを考えても,印刷会社の営業マンがデータや色校を持って走っているという現状は,どう考えても生産的ではない。
また,平台校正機の生産は中止となっており,今後は物理的に利用できる機械が減少していく。また,CTP化が急速に進み,平台校正の品質の信頼性が改めて問われている。
一方でインクジェットプリンタの利点はまず低価格である。そして工業製品として厳密な品質管理をされて出荷されるので,品質の信頼性が高い。もちろん個体差が全くないことはないし,用紙を変えた時などは色の差が出るが,全般的には色再現の予測がしやすいし,制御もしやすい。
インクジェットプリンタによる色校正はかなり定着しているのに,リモートプルーフまで進展しないのは,受信側での出力の色再現が保証できないためである。お互いに相手が見ているものを確認できない状態で,責任がきちんと取れるのかという話になる。

BEST Remoteproofコンセプト

BEST社が提唱しているBEST Remoteproofコンセプトは,次の5項目から成る。(1)色再現が確実なジョブファイルを転送する。(2)色再現に必要なすべての設定を送付する。(3)送信側・受信側の色再現を保証する(必要条件:プリンタキャリブレーション)。(4)共通のICCプロファイルを使用する。(5)送信側・受信側の測定値を比較し結果を連絡する(必要条件:分光光度計と比較基準)。
色再現が確実なジョブファイルというのは,相手側に送った時に出力できないデータでは困る。こちらで出力しているデータと全く同じことが保証できるもの,つまりRIP済みの安定したデータをPDF化している。
共通のICCプロファイルというのは,送り側と受け側とで同じICCプロファイルを使うということで,そのために,ICCプロファイルの情報をジョブに埋め込んで転送する。そして,送り側と受け側の両方で出力物を測色し,その数値を比較して確認をする。
こうしてネットワーク上でデジタルデータをやり取りしながら確認と認証を繰り返すというビジネススタイルが成り立つようになれば,将来的にはグループワーキングやMISと連動したサプライチェーンマネジメントなどが容易に実現できるようになる。

プルーフデータの転送にJDFを利用

BEST Remoteproofでは,コンテナファイルと呼ばれるものを作成し転送する。コンテナファイルは,RIP済みデータのPDFとカラーマネジメントの設定を記述したJDFファイルとプロファイルのデータから成る。コンテナファイルを作成する機能がBEST Remote Preparationである。この機能はBEST Colorproofの新バージョン4.6.2Jから標準で搭載されている。BEST Remote Preparationは,PS,EPS,TIFF,DCS2,TIFF-IT,DeltaList,ScitexCT/NLWを受け取り,送信用のPDFファイルを作成する。

リモートプルーフワークフロー

【図版】*クリックすると拡大表示されます。

チャート図に基づいて解説する。まず発信側のA地点では(1)PS,TIFFなどのデータからリモートプルーフ用のPDFファイルを作成し,(2)プリンタから出力する。(3)出力物の余白には15色のカラーチャートが入っているので,そのチャートの部分を測定する。(4)測定データは,カラーマネジメント情報とともにJDFファイルに埋め込まれる。そして,(5)イメージデータのPDFファイルと各種設定情報のJDFファイル,その他カラーマネジメントに必要なすべてのデータを1つのコンテナファイルに格納して圧縮を掛け,(6)インターネットあるいはWAM!NETなどの通信で転送する。
受け手側のB地点では,(7)BEST Colorproofはデータを受け取ると自動的にコンテナファイルを解凍する。(8)JDFの中に書き込まれた設定を読み込み,PDFに適切なカラーマネジメント処理を施して,プリンタから出力する。プリンタの設定はいちいち人間が行う必要はない。(9)出力物の余白には同じように15色のカラーチャートが入っているので,それを測定する。(10)BEST Colorproofは,測定値を受け取り,自動的に合否判定する。(11)合否判定の結果がA地点に送られる。以上でカラーコミュニケーションの1つのループが完成する。
この仕組みにより,リモートプルーフを行う送り手側と受け手側とで,同じものを出力したことが保証できる。BEST Colorproofにはプリンタキャリブレーション機能もあり,同じデータを出力すれば,人為的なエラーがない限り誤差は出ない。
オリジナルのPS/EPS/TIFFなどのデータをプルーフ用PDFに変換して利用するので,受信側ではフォントは不要だし,解像度も最適化されている。
また,色を測定しているので色差を比較して誤差を確認することができる。両地点でお互いに分光光度計を持っていれば,色差の確認は可能だが,測定機やプリンタのキャリブレーションの確認,ICCプロファイルの設定やその他プリンタの設定確認を人間がやっていては意味がない。自動化されたシステムを構築することに意義がある。これにより,デジタルワークフロー全体の最適化に大きくつながる。CTP導入の次のステップとして,リモートプルーフのシステム化に取り組むのは非常に重要である。
テキスト&グラフィックス研究会

2003/02/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会