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販促支援システムの取り組み

データベースパブリッシングの取り組み

チラシを扱っている印刷会社がデータベースを構築する場合,多くは印刷会社の都合でデータベースパブリッシングを行っている。青森コロニー印刷もデータベース導入時は顧客の利用は考えていなかった。納期短縮の要求に応じてチラシ制作を簡略化するため,FileMakerを使って画像のデータベースシステムを作っていたのである。
しかし,データベース化によって差別化を図り,価格の下落を防いだつもりだったが,昨今は同業印刷会社だけでなく異業種も参入してきた。そのため,従来のようなたんなるデータベースでは顧客に納得してもらえなくなってきた。そこで2001年1月頃から,今までの印刷会社側のデータベースシステムから,顧客の要望に答えられる販促支援システムへの移行を考え始めた。

販促支援システムへの転換

チラシの原稿制作の簡略化やデータの二次加工などは,流通業の商品部のバイヤーだけでなく,販促部にとっても大きな課題である。あるスーパーではPOSシステムにも,基幹系システムにも同じような内容を入力し,そのうえ印刷用の原稿も作らなければならず,大変な手間がかかっているという。また,バイヤーは外出が多く,販促部とのコミュニケーションがとりにくいということもある。
そこで,顧客のPOSシステムと基幹業務系のシステムにどういう項目を入力し,どういうデータが蓄積されているか,どう活用したいかを調べることから始めた。SI業者の協力も得られたが,SI業者には印刷業はデジタル化が進んでいないと指摘された。印刷用データはスーパーの経営戦略上,効果測定などに使えるはずだというのである。
青森コロニー印刷は商品データベースを印刷用に使ってきたが,これをそのまま顧客の販促部・商品部につなぐのは難しい。そうかといって新たなシステムを自力で構築するには時間がかかる。そこで既存の販促システムを調査することにした。システムの要件は,特定の顧客専用のデータベースではないこと,販促企画をスムーズに進めるという顧客のニーズに答えられること,アクセスの集中に耐えられる堅牢さがあること,校正業務の負担が軽いことなどである。顧客の中にはすでに販促システムの導入を検討しているところもあり,それより先に提案しなければならなかった。流通業で印刷会社を決める権限は普通は販促部がもっているので,まずは販促部に向けて,いかに仕事が楽になるかという提案をすることにした。

Layout Navi

方正の制作支援レイアウトシミュレーションソフトLayout Naviは,顧客が四角いマスで台割を組めるようになっていて,マウスだけで簡単に操作できるし,CSVデータと画像データベースがあれば配置イメージも作れる。印刷会社でラフを書き直すような手間を省くためにも使えそうだというので注目した。Layout Naviならプラグインを使ってデータを制作に持ってこられるメリットもある。そこで「PAGE2002」の時点で,顧客連動型販促支援システムFlyers Web SystemとページレイアウトソフトFIT Enterprise Editionなど,販促とマーケティングのトータルソリューションFeMS(Founder e-Marketeing Solution)の導入を決めた。
Layout Naviは顧客の販促部に受けがよく,SI業者を紹介してもらうこともできた。SI業者はオープンなシステムを作ることを心がけているので,印刷会社からデータをもらうことに抵抗はない。それより顧客である流通業界のほうが,印刷会社のIT化やデジタル化についてレベルが低いと誤解していることが多い。しかし,SI業者が許可すれば販促部は納得する。こうして販促部には青森コロニー印刷がたんなる印刷屋ではなく,IT業者であるという認識をもってもらえた。そのため,このスーパーが印刷を青森コロニー印刷に変えるときには印刷単価を下げる必要もなく,逆に画像データベース管理などの年間契約までもらって,結果的にはそれまで取引していた印刷会社より高い値段をもらうことになった。こういう方法がすべての顧客に受け入れられるとは思わないが,印刷の仕事だけではなく,IT系の仕事ももらえるようになった事例である。

Founder Flyers

どこのスーパーでもチラシごとに販促企画の商品リストを作るが,店舗で発注するものか,本部で発注するものか,限定数は何個かなど,チラシに出ない項目も入力してもらう場合がある。そういう情報をつかんでいるのはバイヤーである。
そこで20名いたバイヤーに顧客連動型販促支援システムFounder FlyersWebの画面を見せて入力業務が簡素化されること,各種帳票類も青森コロニー印刷が提供することを説明した。特に力説したのは校正の軽減である。バイヤーが入力すれば自分で確認ができるし,写真も原稿を作る段階で自分で選べる。というわけで最終的には抵抗なく受け入れられた。

Founder REPO

チラシ制作・販促効果測定システムFounder REPOは経営陣に受けた。店舗ごとに差し替え部分があるため,手書きによる効果測定は手間がかかって現実にはできなかったのである。青森コロニー印刷が提案した販促システムは,印刷データは差し替え版ごとに作っており,店舗ごとのPOSデータをもらってFounder REPOで各店舗の測定ができるようにした。
正確な分析のためにはFlyersWebの商品データとPOSデータの連携を密にする必要がある。たとえばコカコーラ製品が58円というとき,コカコーラ製品といってもファンタ,コカコーラ,スプライトなどいろいろな商品があるから,それらを自動で抽出する方法が必要である。JANコードだとチラシの制作に困るので,商品群のようなコードを作ってPOSデータと連携できるようにしている最中である。それができあがればチラシにPOSデータを渡すのがさらに細かくできるようになり,分析結果もより正しく出るようになるだろう。

販促支援システムの構築

実際の販促支援システムの構築は,スーパーの販促部との接続や商品部のバイヤーが外からアクセスするための仕組みを作るなど大変だったが,これによって校正システムも立ち上げることができた。
従来の校正は,PDFを作成して出力し,朱字を書き込んでスキャンして戻していたが,現在ではIT業者としての信頼を得ることができて,希望するバイヤーには直接PDFを送るようになった。手書きで戻ってきたものとPDFに校正ツールで書き込んだものを一つのPDFにして戻すようにし,校正の時間も短縮できた。
青森コロニー印刷の販促支援システムに関する考え方は,方正の考え方とは異なる。したがって,FlyersWebだけで販促支援システムができているわけではない。しかし,システムの構築が早くできたのはFlyersのおかげであったのは間違いない。2002年7月に導入して4カ月で稼働できるまでになった。
販促支援システムはPOSとの連携があって初めて成功した。そのためには顧客に印刷会社をIT業者であると認識してもらうことが重要だと思い,現在,戦略的にこの方法を進めている。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2003/03/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会