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PODを支えるバリアブルプリント技術動向とソリューションのポイント

Conference/PODトラック(E1〜E3)

PODトラックの前半は、デジタルプリントにおける今のキーポイントとして、まずPODを支える技術としてのPPMLについてをE1セッションで行い、PODのマーケットとして期待されているDMについてをE2セッションで取り上げいる。そして実際のソリューションとしてはデータベースをいかに活用してPODソリューションを提供すべきかについてをE3セッションで取り上げる構成で行った。

E1:バリアアブルプリントとPPML

このセッションは、前日のA3セッションと同様、PODi会長のMr.Rab GovilとモデレータとしてはEFIの田中和宏氏により行った。PPMLはXMLベースのデジタルプリンティングシステムのための言語として、又バリアブルプリントを実現するためのアーキテクチャとしてPODiから提唱されたオープンな言語である。
2000年にPPML1.0が出され、現状はPPML2.0である。又2003年にはPPML3.0が出てくる。最初のバージョンのPPML1.0ではコンテンツの再利用を可能とし、ベンダーに依存しないことを実現している。さらにPPML1.5ではグラフィック処理のサブセットを定義し、柔軟なワークフローへの対応が行われた。PPML2.0ではジョブチケットやXML対応が取り込まれ、いろいろなプラットフォームでの利用が始まった。またジョブチケットとしてはJDFが利用できる。
ではPPMLの有効性とは何か。まず生産性である。再利用によりファイルを減らせるので、ダウンロード時間およびRIP時間が大幅に短縮できる。またどんなニーズにも適し多くの設計ツールに対応できる。将来の設計ツールはすべてPPMLをサポートする。
この結果ユーザはベンダーに依存せず選択が自由に行えるようになり、しかも簡単に採用できる。またワークフローに柔軟性があり、しかもワークフローの設計にはXMLツールが利用可能である。任意のデータ種類へ容易なインターフェースが提供され、構造化したPPMLデータは再版のための選択も簡単に行えるなどが上げられる。
PPMLはバリアブルプリンティングを行う上で、特定の機種に依存せず行えるようにするための言語であり、多くのプリンタベンダーがこのPODiに加盟しており近いうちに多くのサポート製品を出してくると思われる。

E2:DM市場の将来展望

このセッションは郵政事業庁郵務部の永井広紀様から、今後の日本におけるDM市場の可能性や現在郵政事業庁がどのような動きをしているかをお聞きした。
まずDM市場の展望について見る。日米ではDMに対する考え方が違うが、DM利用の目的を米国のようなマーケティングの道具として活用することで市場は拡大する可能性がある。現状DMが占める広告費全体の中での割合は、2000年では日本は5.5%である。これは米国の20%に対して三分の一以下である。これを数で見てみると1999年の調査では、日本が56億通に対して米国では896億通で16倍という差になっている。国民一人あたりで見ても日本が44通に対して米国では303通である。これはやり方によりまだまだ増えることを示している。米国ではデータベースマーケティングとうことで顧客の囲い込み重視しており、この展開にはDMが欠かせない道具として使われているためであろう。
これに対して日本では、DMは今まで広告媒体の一ついう位置づけであり、そのため米国に比較して1/3以下の利用にとどまっている。このような一般的な広告と同じ考え方では、不況になれば削られてしまうが、得意先顧客の囲い込みという発想で効果がでてくれば今後DMは有効な手段となってくる。
しかし日本企業の考え方には、「売上最優先」として顧客拡大という考え方が強く、米国の利益重視として顧客維持という考え方にはなっていない。このため顧客拡大という視点ではDMは苦手な広告媒体ということになる。そのためDMのメリットを理解してくれる企業はまだ少ないのが日本の現実である。
しかし今後は利益重視ということでデータベースマーケティング(DBM)の必要性を気づかせて行くことが大切である。現状でDBMを普及推進母体も無く、なかなか普及していかない。そこで現在法人郵便営業担当者がDBMのスペシャリストになるべく、取組中で、2年以内には500人近くのDBMスペシャリストを育成し、普及活動を支援していく予定である。
このような動きの中で、平成13年よりDMの見込み客を対象とした営業チャネルの一つとして、DMに関するノウハウを提供するウェブサイトをゆうびんホームページに開設している。
また今後サイズや料金などの見直しも検討しており、DMを利用するためのデータベースマーケティングをソリューションとして提供して行くことが今後考えられている。

E3:PODに付加価値をもたらすには

このセッションは、デジタルプリンティングを活かすためには、どのような仕組みが必要かをテーマとして行った。まずプラネットコンピュータの深澤様から、開発事例と顧客にとっての効果についての話があった。例えば自動カタログ作成システムを構築する場合、カタログを必要としているのが支社の営業部隊であるとすれば、本社にサーバがありそこでカタログ素材を管理し支社から必要な編集指示と部数をWebから入力することで、自動組み版を行い印刷して発送するシステムが考えられる。このようなシステムを評価する場合、印刷費用、制作コストや制作期間ではメリットは出てこないが、改訂やカタログの種類への対応などには非常に優れており、トータルでメリットが出てくる。また在庫数も減ることでキャッシュフローの向上にもつながってくる。
これは在庫管理による在庫数削減と資材をデータベース化することで自動組版するところがポイントである。以上は一例であるがPODに付加価値をもたらすには、顧客利益を最大化するソリューションの提案が求められる。そのためにはやはり得意とする技術を持った企業によるアライアンスが必要となる。
次に富士ゼロックスのカラーパブリッシング販売推進部の岡田修様からは、ワン・トゥ・ワン・コミュニケーションとクロスメディアパブリッシングの話があった。E2セッションでDMの展望の中で、その中で優良顧客が売上の8割を占めるということもあり、ここに対して販促費重点投入がこれからのポイントであるというが話があった。富士ゼロックスはそこのデータベースマーケティングを支援する展開を行っているという話である。
そのためにはまず顧客を知る事が必要であり、データベースマーケティングに必要な顧客属性をどのように集めるかがキーとなる。この上で顧客関係の強化として、1:1ドキュメントを提供していくのである。
富士ゼロックスのソリューションとは、企業の資産である顧客情報をもとに、ルール化とコンテンツ管理を行い、わかりやすくビジュアル化し、スピーディにパーソナルDM、パーソナルWebなどのクロスメディアにより顧客へ情報発信し、これをスパイラルにアップしていく仕組みを提供していくことである。
実際には、業種別ソリューションガイドを作成して、印刷企業と協業という形でクライアント提案を行うための仕組みを進めようとしている。

2003/03/02 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会