本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

進むEC化と遅れる印刷業界の対応

ITバブルは崩壊したが、企業の情報武装が生き残りのための重要な経営施策であることは変わらない。というより、IPによる通信プロトコルの統一、安価で高速な通信回線の普及、XMLによる情報記述方式の統一など、企業間のワークフローの一体化、つまりSCMで使う技術的環境はほぼできた。そのような中で、BtoB/EC(電子商取引市場)は確実に増加している。今後は、印刷もその中に含まれるMROのBtoB/ECが拡大することが見込まれる。

進化、拡大するBtoB/ECの動きに印刷業界も無縁ではいられない。印刷会社各社の顧客が現時点でSCMに興味がないといっても、あるとき突然SCMに入ることを要請されたり、現在の有力な得意先が関連する業界なり企業グループのSCMに対応できないために倒産するといったことも起こるだろう。
公共系の電子政府、電子調達も、総務省における物品系電子調達システムが2002年10月25日から始動し、2003年以降に完全実施される。これによって各地方自治体への電子調達の横展開が始まり、それがやがて各印刷会社に及んでくることは明らかである。 企業間取引の情報化を個々の企業単位で行うことはコスト、セキュリティ面のリスク、システムの接続性や継続的な拡張性の点で限界がある。それは印刷企業だけに限ったことではない。したがって、各産業ではBtoB/ECの業界標準を作っているが、印刷業界には、そのような動きすら見えない。
例えば、先に触れたe-JAPANに対する印刷業界の関心は強いが、それは業界の個別企業が電子入札に対応できるようにしなければならないといった目線での関心で、印刷に関係のないベンダーによって、印刷物の受発注に適切でない印刷物調達の枠組みが作られる可能性が大であるといったことに関するの問題意識は全くと言っていいほどない。

印刷業界も早急にBtoB/ECの業界標準基盤を作っていかなければならないが、それは印刷会社、顧客、資材ベンダーそれぞれのコンピュータシステムのデータを、EDIインターフェースによって業界が標準として設定したルールに基づいて変換して、それを印刷会社同士、印刷会社と顧客あるいは資材ベンダーの間でコンピュータtoコンピュータで交換する仕組みである。

電子商取引はそれを行ったからといって売上を伸ばすことができるものではない。現在の電話やFAXのように、今後はそれがなくては仕事ができないというひとつの手段である。他の業界ではさまざまな課題を抱えながらもそれらを乗り越えて電子商取引を実現、普及しつつある。したがって、印刷業界が自ら取り組まなくても、他の業界のSCMの一部として取り組まざるを得なくなることは明らかである。しかし、そのような形での取り組みになると、印刷物やその取引の特性を考慮しないシステムを押し付けられることになるし、業界標準基盤がなければ、異なるシステムそれぞれに対応する、つまり異なる端末を持たなければならないといったことになる。重要なことは、今からでも遅くはないから、自ら着手して主導権を握って進めることである。

印刷マーケティング研究会 会報 FACT 2003年2月号より

2003/03/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会