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戦略的な情報提供をサポート

最初に印刷物ありきではない,顧客の立場に立った情報提供のあり方が求められている。
そこで今回は,さまざまなコミュニケーション活動をサポートしている,日本コンベンションサービス ICカンパニー IPグループの取締役廣江真氏,野間亮一氏,高橋邦明氏にお話を伺った。

さまざまなコミュニケーション活動をサポート
日本コンベンションサービス(本社・東京都千代田区,代表・近浪廣氏)は,1967年12月に国際会議の運営を行う専門会社として設立された。日本の国際化の進展とともに歩んできており,業界のパイオニア,リーダーとして幅広い分野の実績と経験がある。さまざまなコミュニケーション活動を実現するため,以下のように多岐にわたるサービスを提供している。
(1)コンベンションサービス
いわば同社のメイン業務である。国際会議総合プロデュースをはじめ,コンベンションの企画プランニング,総合事務局,コンサルティング,予算立案,会場設営,展示会運営,報告書作成など会議に必要なさまざまな事項を提供している。
(2)イベント・展示会
イベント企画プロデュースを行う。企業のイベントやセミナーなどの企画プランニングを手がけている。事務局運営から広告PR,会場設営,現場運営,報告書制作まで主催者ニーズに合ったサービス提供を行う。
(3)通訳
国際会議でよく行われる同時通訳をはじめ,逐次通訳,商談通訳,随行通訳など内容に応じたコーディネイトが特徴である。
(4)人材派遣
人材派遣・人材紹介・アウトソーシング事業など,人材に関するさまざまなサービスを提供している。
(5)ドキュメントサービス
多言語翻訳,テクニカルライティング,リライト翻訳などのサービスを行うとともに,印刷物制作も請け負う。翻訳物の印刷に限らず,ポスター,カタログ,パンフレット等の一般印刷物から,マニュアルや報告書,広報資料の類まで幅広い印刷を手がけている。またWebやCD-ROMなどのデジタルメディアにも対応している。

ビジネスパートナーとしての印刷会社に期待
同社の顧客は,官庁や財団をはじめ民間企業,外資系企業と幅広い。当然,顧客層によって,またその時代によって翻訳・ドキュメント制作を要求する業種が変わってくる。少し前まではIT関連のものが多かったそうである。
ドキュメントサービスでは,関連したものを取り組んでいく姿勢が,単純な意味での「翻訳」とIP(Information Processing)の違いであるという。自社の強みである翻訳などの資産価値を含めた提案をして,顧客ニーズに沿った事業展開をしている。
印刷会社との関係も印刷を発注するだけではなく,新しいメディアへの対応やワークフローの変化などに対応すべく,ビジネスパートナーとして問題解決提案をしてくれる印刷会社の力を要求している。何が本当に必要なのか,印刷会社のノウハウを生かしてほしいと望んでいる。印刷会社とのコラボレーションが必要になるゆえんである。

PDFに積極的に対応
同社は,DTPを早い時期から取り入れていたので,そこからコンテンツをWebにもっていくという流れが前提になっている。特に外資系企業は,PDFに抵抗なく移行できた。ある程度決まりものの場合,色校を出さないでPDFによるオンライン校正で済む。それまでは校正紙を出力し,直接赤字を入れてもらうという流れがあった。あきらかにスピードアップに役立っている。
多言語化のマニュアル制作は,以前は戦略的商品にはマニュアルそのものに価値があり,重要視されていたが,最近ではコストをいかに下げられるかが検討される傾向にある。そこで,マニュアルのPDF化の要望は多い。印刷物のほかにPDFを同時に納品するケースが当たり前になりつつある。自社のホームページに掲載する以上,意味合いは重要である。印刷物の付属物というより,印刷に置き換わるものとして認識される場合もある。マニュアルだけでなく,学術学会のプロシーディングや報告書の類は,PDFが標準となっている。
また外国語版のPDFを制作する際,日本語フォントが1文字でも混入していると文字化けが起こる。この問題を回避するためフォント埋め込み作業を行うことで,日本語OSでも英語OSでも文字化けがなく,表示と印刷ができるようになった。
PDFに関するビジネス・サービスやソリューション,技術的な情報を紹介する「PDF Adviser」というホームページの運営も行っている。

データベース検索型CD-ROMでコスト削減
現在同社で力を入れているのが,FileMakerで運用する自社開発のデータベース検索型CD-ROMである。本の情報を単にCD-ROM化するだけでなく,CD-ROMの中にデータベース機能をもたせているため利用価値が向上する。本にする必要があるが,コストを掛けたくないもの,例えば公報,規約集,会員録・職員録,リファレンスなどに向いている。
コスト削減で印刷物を作らずに,PDFの形式で見せるだけといった事例が今後増えてくるだろう。CD-ROMの場合,件数が増えても制作費は変わらないし,次回作成時もCD-ROMのリピートオーダー費とプレス代くらいしかからない。
特徴としては,タイトル,人名,所属,キーワードなどによるキーワード検索や全文検索ができ,利便性が広がることである。
「パスワード機能」もあり,ユーザごとの差別化も可能である。「メールアドレス自動入力機能」「ホームページリンク」は,ボタンをクリックするだけで,メールソフトが起動し,メールアドレスが入力され,ホームページへもリンクすることができる。また,「データ書き出し機能」でCD-ROMに収録されているデータをCSVやテキスト形式で書き出すことができる。「ハイブリッド版対応」でMacintoshとWindowsの両方に対応していることも利用価値の向上につながる。

環境報告書のコンサルティングをサポート
ここ数年,環境報告書の需要が増えており,環境専門の翻訳スタッフと共に制作に携わり,実績とノウハウを蓄積している。
情報公開の気運が高まり,環境報告書もそのツールとして大きな意味をもつ。大企業を中心に環境に対する意識や企業の保全活動が問われている。しかし,現実的には企業は,暗中模索の状態である。企業側から要請があり,コンサルティングから日本語・英語版の環境報告書の制作をトータルにできないかといった問い合わせもある。
環境問題に関しては,欧米のほうが圧倒的に進んでいる。英語版を作るのは地球規模における海外の格付け機関への対応という意味合いもある。日本の環境報告書は別冊作成のスタイルが主流だが,欧米ではアニュアルレポートの一部として,財務会計と連動した内容になっているものが多い。法定で作成が義務づけられている国もあるが,日本ではまだ自由で,内容は各社のスタイルにまかされている。日本の場合,PDF化してWeb公開している例がほとんどだが,今後は,環境報告書の公表は,社会的評価の判断材料となるだろう。
コンサルティング会社,印刷会社とのコラボレーションで,同社が翻訳を軸に環境報告書制作のコンサルティングのサポートをする。この分野はさらに需要が増える見込みである。(上野寿)

JAGAT info 2003年3月号より

2003/03/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会