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Knowledge PublisherによるXMLドキュメント活用ソリューションの実現

富士通ラーニングメディアの取り組み

富士通ラーニングメディアはもともと富士通のソフトウエア製品の執筆,編集,印刷,製本,物流の作業を行っていた部門が分社化したもので,現在ではXMLをベースにしたドキュメントソリューションを提供している。ドキュメント制作のコンサルティングやシステム構築サービス,コンテンツ制作などの事業でXMLをベースにしたシステム構築を行ってきたが,そこで培ってきたシステムコーディネーション用ツールをパッケージにまとめたのがKnowledge Publisherである。
富士通ラーニングメディアの事業は当初は富士通の製品マニュアル制作がメインだったが,独立して外部の仕事が入るようになり,適用範囲が広がった。得意分野は頻繁に改版が起きる200〜300ページのページ物である。昨今の製品はライフサイクルが短く改版が多いが,その効率よい制作と効果的活用に対応してきた。
ドキュメントはノウハウの蓄積であり,それを明示化し,共有し,活用する仕組みが必要である。一度公開されたものはすぐ内容が古くなるので,さらに新たなノウハウを付け加えて発展するというスパイラル状の成長がドキュメントの課題である。これは企業内ニーズとしても高まっており,経営資源の有効活用という意味で大きなテーマになっている。富士通ラーニングメディアも,企業内のドキュメントを成長させて効率的な活用ができる仕組みを目指している。

XMLの活用

富士通ラーニングメディアはXMLの活用を4つの観点から考えている。
第1は精度の高い情報検索である。単純な全文検索ではあまりにも多くのものがヒットして,本当に必要な情報を探し出すのが難しい。そのためには効率よい検索が必要である。
第2は変更管理への適用である。改訂頻度の高いマニュアル類では前の版とどこがどう変わったのか,変更箇所が簡単にわかる必要がある。
第3はマルチデバイス対応である。紙の印刷物,Webによる配信,PDAや携帯電話など各種デバイスに合わせた情報提供が必要になる。
第4はユーザニーズに合った情報配信である。ユーザニーズに合った情報を提供するパーソナライゼーションを実現する必要がある。
以上の4つの課題を解決するためにはXMLは非常に便利な道具である。最初の2つの課題については,個々の文書データの中に,過去のデータ,今回改版されたデータといったタグを付けたり,タグと全文検索を活用して精度の高いピンポイント検索をすることが可能になる。第3の課題についてはXMLはデータとスタイルが分離しているので,1つのコンテンツに対して,紙用のスタイル,Web用のスタイルといったスタイルシートを使い分けて1つのソースを複数のメディアで活用できる。また,パーソナライゼーションの課題も,コンテンツの中に,機能説明,操作説明などのタグを付けて,操作説明を見たいユーザには操作説明の箇所だけ表示するスタイルシートを作るというような対応ができる。

XMLドキュメントの活用シーン

XMLのニーズは,最新の商品情報を早く提供したい,コスト削減を図りたいなどいろいろある。
商品情報を素早く効率よく提供していくには,商品企画部門の人が自分たちで手軽に発信用のドキュメントを生成できる必要がある。XMLを作るときにいちいち外部に依頼していては迅速に公開できない。商品企画部門で直接XMLデータを生成できる仕組みがあれば,各部署にタイムリーに情報発信できるし,多メディアによる発信も可能になる。
次に,カタログや商品情報を企画部門の人が自分たちで作れることが必要である。営業部門でもこれを使って自由に編集でき,顧客に合わせた内容のドキュメントが配信できなければならない。
また,これはこれからの課題だが,一度公開したドキュメントは公開しっぱなしでは使われない。内容が古くなればフィードバックする仕組みが必要である。あるいは,これではわかりにくいという利用部門の声を吸収し,改版して公開していく。そのようにデータを生成する部門と利用する部門との連携を行なわなければならない。これもXMLをうまく活用すれば可能だと考えている。

Knowledge Publisherの概要

ドキュメント電子化の要件は,早く簡単に作れること,利用者側が最新のものを手軽に入手できることである。それらを実現することを電子化の要件ととらえ,Knowledge Publisherをパッケージ化して提供を始めた。
Knowledge Publisherのパッケージは3つの機能から成っている。第1はXMLデータを生成する仕組みで,XML編集と呼んでいる。商品企画部門やマニュアル執筆部門など,XMLを熟知していない人でもワープロ感覚で簡単にXMLデータが生成できる。第2は作ったXMLデータの保管・管理を行うデータベースである。ドキュメントは必ずしもXMLデータだけではないから,PDFやExcel,Wordの文書も保管・管理できるデータベースを提供する。第3は文書公開の機能である。利用者がカテゴリ検索や全文検索ができ,旧版との違いを簡単に見られる差分表示機能を用意した。
また,Kowledge Publisherとの連携や利用法も用意した。XML形式で保存したデータの組版は,各ベンダのXMLデータを組版するソフトと連携する形で対応している。また,必ずしも利用者全員がWebで見る環境にあるとは限らないので,CD-ROMにXMLデータを焼き込み,それに全文検索エンジンを入れて生成することができる。

Knowledge Publisherの機能

キーワードを入れて検索すると,現在公開されている文書からその語を含むドキュメントを一覧表示する。条件検索をすればドキュメントの書誌情報/メタ情報も利用できる。ドキュメントの表示は,標準では左側に目次,右側にそれに対応した本文が出るが,ソース表示にするとXMLのタグ付きで見ることができる。差分というボタンを押せばどこをどのように変えたかがわかり,なぜ変えたかというコメントも読める。これはスタイルシートの切り替えで行なうので,最新の状態で見ることも可能だし,変更箇所付きで見ることも可能である。
データベースにはXML形式で保管されているが,XML編集用のクライアントに読み込むときはXMLデータをWordデータに変換する。そのため執筆者はWordの操作でXMLデータが作成できるようになっている。ベースはWordだが,文書構造が崩れないように作業できる機能をプラグインで追加している。Wordとして好きなように変更することもできるが,その場合はすべての編集作業が終わったら文書をデータベースに戻し,論理構造が崩れていないかどうかチェックしてXML形式で保存する。
既存のWord文書のXML変換も可能である。スタイル付きの場合はKnowledge Publisherの標準のDTDに合わせたスタイルに対応づけする。スタイルがついていないWord文書は,ある文字列が出てきたら,Knowledge Publisherのどのスタイルに対応させるかという変換用の定義を決める。つまり,スタイルtoスタイルと,文字toスタイルの両方の定義ができるようになっている。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2003/03/31 00:00:00


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