本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

CIP4/JDFソリューション「Prinect」

−JDFワークフローでどう変わる印刷工程−


 印刷の製造工程における次世代デジタルワークフローのための記述方式として、JDF/CIP4が提唱されている。JDFはCIP3/PPFを拡張し,コントロールする範囲をプリプレスに広げ、従来のプリプレス/印刷機/後加工機に加え、プロセス制御を盛り込んだCIP4となった。
 JDFで定義されてきた共通互換性のある工程情報は、企業間のコラボレーションのEC化を推し進め,生産性の向上などが期待されている。
 今回は,JDFに対応した製品の中から,CIP4/JDFソリューション「Prinect」の概要を報告する。

JDFによって得られるもの

 CIP4で作成したJDFにより得られるものは,まずコストコントロールである。印刷機やCTP,製本機などオンラインで進捗管理システムを中心としたMISとのやり取りを行っているため,機械の稼働状況や準備状況を逐次システムを経由して見ることができる。よって仕事ごとにオペレータおよび機械の稼働状況等の時間計算が容易にでき,その情報(レポーティング)から印刷会社の経営者はコスト,原価などの割り出しができる。現状では,このような工程管理のソフトは存在するが,機械とシステムの間に仲介する人が入りバーコードを利用したり,あるいは自身で入力して利用するケースが多い。しかし,JDFを使用することによりオンラインでそのようなものが可能になるという利点がある。

 次に生産計画,進捗管理がある。JDFにより,仕事の進捗情報などオンラインで入り,社内の誰もが見たり利用できることで,生産管理計画にもかなり役立ち,工務や進行の負担も軽減される。
 3番目として工程の安定性がある。現在,CIP3のPPFが主流だが機械の自動化,前準備の時間短縮,ミスやヤレ紙の削減が可能になる。
 最後に現状はまだ使用頻度は少ないが,インターネット等の利用である。社内の情報をどこまで顧客に公開するかは印刷会社次第であるが,進捗を公開したり,インターネットを利用した受発注に利用することができる。
 以上4つがJDF使用によって得られるものである。これらのポイントは,すでに他業界で運用が始められているCIM(Computer Integrated Manufacturing)というものに印刷業界もいち早く実現を目指すものである。

ビジネスと生産ワークフローの統合

 印刷会社の中にはビジネスワークフローがある。これは,見積りをとり仕事の計画を立て工程に流し,最終的には集金までというフローである。
 もう1つは,プロダクションワークフローであり,プリプレスから始まり,CTP,印刷そして製本,梱包,出荷までの工場におけるワークフローである。
 これらの2つのワークフローを統合する必要がある。機械の情報は逐次ビジネスワークフローに行く必要があるため,まず統合しなくてはならない。これが「Prinect」というコンセプトになり,ビジネスのワークフローと生産のワークフローを統合することである。よって,統合に使用する言葉というものが必要になる。機械と機械をつなぐ言葉や命令をする言葉は,独自のものではなく標準が必要であり,これがJDFである。

PPFからJDFへ

 ハイデルベルグとクレオは,Prinergyというワークフローを販売している。そこではAdobeのジョブチケットAPJT(処理設定)を使用している。各プリプレスの処理をジョブチケットで自動処理するものであり,PSからPDFを作成し,いろいろな処理を経て最終的に面付けをしてCTPに出力するという自動処理である。
 一方,JDFベースのワークフローの場合は,ジョブチケットを使用せずJDFで記述された各々の設定を使用する。各モジュールはJDFを読みながら,Prinergyと同様にPDFをつくり面付け後CTP出力へと自動運転になる。

 処理結果は,どこかのログやデータベースに行くのではなく,JDFに帰ることになる。この点が双方向の良いところである。
 後工程の現状は,CIP3のPPFが使用されている。現状は,かなりの利用価値があるが,情報の流れは一方通行である。
 これがJDFになるとプリプレスと同様,処理命令やそれに対する結果などが双方向にできるため,各印刷機,断裁機,折り機の情報も同じJDFでやり取りされるようになる。よって処理命令とその結果とは,必ず1つの仕事に1つのJDFが付いて回るということになる。これがPPFとJDFの大きな違いである。

Prinect

 具体例では,JDFの実行についてResourceとしてページ物のPSファイルが分割されている場合,すべてが揃ったら面付けを実行するなどの自動化が可能である。また,これらを連結することにより,いろいろな種類の自動化もできる。
 次に,Spawningについての説明をする。JDFの範囲を選択できることから,例えばPDF作成からCTP出力までのJDFを作成する。その子供の関係となるJDFがPDFを作成する。どのようなPDFを作成するかというJDF,あるいはどのような面付けをするかというJDF,そして出力の網点をどのようにするかというJDFなど複数を1つの親JDFが囲っている形となる。

 例えば面付けまで終了しCTP出力する際に,そのシステムではなく,遠隔地のネットワークにつながったJDFをサポートしたRIPに対して出力する命令が書かれている場合,面付け終了時点でJDFはこのPDFを読み込んで流すのである。面付け状態も分かっているので,面付けを実行しながらJDFをサポートしたRIPに自動的にPDFが送られる。これらがSpawningと呼ばれ,JDFからまた新たなJDFが生まれるような形である。出力終了時点で,JDFはフィードバックを行うため,RIPの終了確認や版数,終了時刻などの情報をこのJDFから親JDFに返すことになる。これをマージ(Merg)と呼び,JDFのマージによりこの処理結果は保存されることになる。MISでは,この部分を見に行くことにより処理結果がすぐに分かる形になっている。

 Prinectは,管理情報システム,生産システム,インターネットツールと3つに分かれている。
 JDFのやり取りにより作業指示と進捗管理,処理結果のフィードバックを随時行うものである。また,お客様によってはオンラインでこれらの情報を,インターネットを使用して公開する可能性もある。
 最後にコスト管理のために,これらの情報から実際の仕事に関して,赤字であったのか,あるいは黒字であったのか,コスト計算の材料に使用する流れになる。

 プリプレスのワークフローはJDF対応となった。しかし,その後工程は,現状のPPFでインキキーのコントロールをしたり,自動見当合わせ情報や色情報を送ったり,あるいは製本情報を送ったりと一方通行である。
 その中でプリプレスのワークフロー,現状Prinergy,MetaDimensionは発売済みであるが,Prinergyの後継機となるPrintready Systemを発表した。これがJDFベースで動いているワークフローである。よってJDFをインタフェイスで受け取り,それを内部的なフォーマットに変換するのではなく,根本的にJDFで動いているPDFワークフローがPrintready Systemである。

(テキスト&グラフィックス研究会)
JAGAT info3月号より

2003/04/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会