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拡大するデジタルプリント

富士ゼロックス社は,オフィスドキュメントからオンデマンドプリンティングへと業容を拡大してきたが,さらに積極的な企業アライアンスによってデジタルプリンティングのフルライン体制を整えた。富士ゼロックス執行役員玉屋喜康氏に同社の取り組みをお伺いした。

オープン オフィス フロンティア

富士ゼロックスは,1991年に「ザ・ドキュメント・カンパニー」を標榜し,文書のデジタル化,カラー化,ネットワーク化を進めてきました。創立40周年となる昨年には,新しい事業コンセプト「オープン オフィス フロンティア」を提唱させていただきました。オープンオフィスは,企業間連携が盛んに行われる今日,異なるカルチャーをもつ他社の人たちと自由にコラボレーションし,新たなビジネス価値を広げていく,企業間に開かれたオフィスを意味しています。 その理念を具体化するものとして,街角のコンビニに設置されている富士ゼロックスの多機能複合機を,コンテンツサービスとして利用できるサービス「ネットプリント」,デジタル複合機やインターネット端末を通じて,企業内外に存在する膨大なドキュメントを管理し,企業間コラボレーションを促進する「ArcSuite」,インターネット上に「情報の貸し金庫」を提供するサービス「SDES」,中小規模の企業のブロードバンド環境をオールインパッケージで支援する「beat」を提供させていただいております。

お互いの強みで作る企業間コラボレーション

今,私どもで最も力を入れているのは,一つは国際営業で,アジア市場をいかに育て上げていくかということです。もう一つは,カラー化戦略を徹底して進めてきましたので,このカラーを軸にしてサービス提供の方向に進んでいくということです。お客様一人ひとりに合ったワインをお届けするソムリエのように,お客様にご満足いただけるサービスを提供するソリューショングループをこの4月から立ち上げます。ソムリエセンターと形容できるものになると思っています。 一方,印刷市場でのサービス化の一つとして,「オンデマンド+1to1」が付加価値のあるビジネスモデルになると考えています。同じ商品のカタログでも1万部印刷する時もあれば,500部でいいという時もあり,適材適所の使い分けが求められるようになります。このような少部数の印刷物は,ワンtoワンマーケティングなどのより高い効果を求められる時に刷られるのです。 中国には多くの日本企業が進出し,製品のマニュアル類も現地で印刷されるようになっています。それらは主にアウトソーシングされ,非常に大きな量の契約となる時があります。そのような時には,信頼のおける現地業者とのパートナーシップで対応するということをしています。
当社の海外の窓口は,グローバルオペレーションサポートセンターですが,国内の場合でも,このようなお客様に対するドキュメントアウトソーシングの窓口があります。いまやプロセスをどう構築・運用するか。1社ですべてできるという時代ではなくなりましたので,パートナーの各社が得意技を出し合って,それぞれがその得意技を伸ばしていけるような共存共栄の仕組みができていくのではないでしょうか。今後ますますアウトソーシング需要は増えていくと考えています。

TCOの削減,環境経営

私どもでは,お客様にはトータルコストで考えましょうと提案させていただいています。設備の価格や印刷物の単価を下げることではコストダウンに限界があります。ビジネスプロセス全体を見渡して,それぞれのプロセスを分析,TCOを3年で20%あるいは30%削減しましょうと。そのなかには,設備導入の提案もあれば,内製化とアウトソーシングとの比較もあります。このTCO削減には必ず目標値をもち,毎年必ずレビューを行い,次の年への提案へと結び付けていきます。お客様から継続して信頼いただけるサービスとなっています。
当社は,地球環境問題や資源・エネルギー問題を経営の最重要課題と認識し,2010年に2000年比で環境経営効率を2倍のレベルに引き上げるという環境行動計画を定めています。グループを挙げて商品の企画・開発から生産,物流,販売サービス,回収に至る製品のライフサイクル全般における環境負荷低減に取り組んでいます。
カタログ,出版物,製品マニュアルや仕様書等々印刷物は,一時は倉庫に保管され,不要になれば廃棄されるというものが,世の中には非常に多くあります。TCOの削減あるいは環境経営効率化の観点から,このような廃棄コストの削減は大きな課題です。これを解決するために,製品ライフサイクルに応じた印刷物の即納,在庫を持たないカタログ,出版物等を実現する仕組みが求められています。

拡大するデジタルプリント

富士ゼロックスは,カラーレーザプリンタエンジン技術や画像処理技術において他の追随を許さない,この分野でのリーディング企業であり,小型の卓上タイプから大型の超高速機までレーザプリンタ事業全体を,中期的なコア事業の一つとして位置付けています。
2001年には日本電気よりレーザプリンタ事業の譲渡を受け,2002年には富士通から高速プリンタ技術とコントローラ技術に強みをもつシステム向けプリンタ事業の譲渡を受けました。カット紙から連続帳票のシステムまでフルラインの体制が整いました。デジタルプリンティングのシステムは,一方は省人化の方向へ,もう一方は分散化の方向に進むと考えていますが,そのどちらに対しても製品・サービスを提供していきたいと思っています。
一方,ゼロックス・コーポレーションはよりプロ化,プロダクショングループを中心としたソリューションにフォーカスしています。先のdrupaでフルカラーデジタル印刷システムiGen3を発表,大きな反響・評価を頂くことができました。既に海外では多くの受注があり,目下日本への投入を検討しているところです。
JAGATが開催したPAGE2003で,アメリカのPODi会長のRab Govil氏が「デジタルプリント拡大のカギ」と題した講演を行い,デジタルプリントの用途を,1)ダイレクトマーケティング,2)Transactional−請求書など個々に内容の異なるプリント,3)Collateral Management & Fulfillment−パンフレットなどの営業支援ツール,4)出版−書籍,マニュアル,雑誌,新聞,ニューズレター,5)Specialty−パッケージ印刷,カード印刷,6)Business Communication−名刺,あいさつ状など事務印刷に分類,それらの成功事例が報告されていました。
拡大するデジタルプリント。富士ゼロックスは,デジタルプリントのすべてに関わるハード,ソフト,ソリューション,サービスを提供させていただき,業界の皆様方とともに新たな価値,ビジネスモデルを作り出していきたいと考えています。

『JAGAT info 4月号より』

2003/04/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会