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1ビットTIFFによるデジタル置き版へのご注意

CTPになると当然であるがフィルムによる置き版からデジタルデータの置き版にかわる。1ビットTIFF形式は置き版や外注先などへの電子送稿で「変化しない」安定したデータフォーマットとして注目されている。置き版データとして既に大量のデータを1ビットTIFFで貯めているところもあるだろう。1ビットTIFFはデジタル網フィルムと理解すればよいのであるが、CTPセッターの機種依存型データ形式なので、RIP処理するときは出力機の解像度やスクリーニング特性に合わせなければならない。
従って、電子送稿などでCTP出力を外注するときには、解像度は合っていても異なる機種のCTP出力機からは同じ網点形状での出力が難しいことがある。

ところが一つの会社の中でさえ、CTPプレートが改良されて新製品に切り替えられたとたんに、置き版していた1ビットTIFFデータが使えなくなってしまった例が報告されている。この印刷会社の仕事の中でも特にうるさい内容のもので、写真はグレーの背景に商品が撮影されているというパターンが基本形の出版物を再版するときに、その問題は起こった。

初版のときには初期バージョンのCTPプレートを使用していて、当然ながら製版カーブもこのプレートの特性に合わせたものとなっている。
ところが再版しようとしたときにはCTPプレートが改良されて新製品に切り替わっていた。メーカーからの情報で新旧のプレートは感度がちがいや、出力される網点は中間でマイナス2〜3%違うことは分かっていた。そしてこの程度の違いであれば印刷でインキを少し盛るだけで対応できると考えていた。

ところが、再版の印刷でどうしても初版と同じ色が刷れない。バックのグレー色を初版に合わせると、品物の色が違ってしまう。品物の色を合わせるとバックのグレーが違うということで、顧客のクレームにもなったという。その会社は高品質な印刷技術では定評があるが、それもで予測し得なかったようだ。

原因を考えてみよう。CMY各々の単色インキのベタ部から次第に網点サイズを小さくしていき、濃度的に淡くしていくと、主濃度に対して副次濃度の変化は直線にはならないのである(下図)。印刷物でハイライト部が冴えないことがあり、実はその原因にもなっていて、網点再現の特徴になっている。

一般的なセットインキは、マゼンタ(紅)インキは青みが強く、イエロー(黄)インキは赤み(マゼンタ)が出やすい。シアン(藍)インキは赤み(マゼンタ)も黄みも入っていて、しかもそれらの入り方(副次濃度)は曲線的で非線形なねじれがあり、これをインキの付加特性の欠陥と称している。






このようなことが起こる要因は恐らくは、インキに透明性が無いこと、重ね刷りしたときのインキトラッピング、被覆力、紙の諸特性、その他の印刷条件で異なってくると考えられている。経験的にも、3色グレースケールはハイライトからシャドーにかけて微妙に色が変わっていくし、さらにインキ量を変えると中間の色の変化も、また変わってしまうことは、印刷現場では良く知られている。



このようなことが原因して、先ほどの印刷会社では絵柄とバックの色が合わなくなってしまったと推測される。
網点を平行移動すると、グレーバランスとカラーバランスがバラバラに変化していくという網点再現の特性をつかんでおく必要がありそうだ。高品質要求のデジタル置き版を1ビットTIFFで貯めている皆様、ご注意を。

2003/04/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会