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予想どおりに動く大きな技術の流れ

JAGATが実施した「2002年度印刷産業経営力アンケート調査」では,現在の設備保有状況と今後の新設・増設および廃棄意向について調べた。その結果からは,回答各社の新規導入・増強設備,導入技術に明確な分野別の優先順位が感じられる。

設備導入意向のトップはCTP

新設・増設意向トップはCTP導入で、次いでSGML/XMLツール、工程進捗管理ソフト、検版装置、統合情報管理システムと続いている。プリプレスシステムと経営管理のコンピュータシステムの優先度が高く、新設・増設意向上位10位にそれぞれ4つの項目が入っている。次いでネットワーク関係のシステム導入意向が多く,リストアップした3項目すべてが11位から20位までに入っている。そして,21位以降に枚葉印刷機が,31位以降にデジタル印刷機が顔を出す。ただし,この2分野の導入意向の差は小さい。
回答数の多少自体は,設備投資額の大きい設備ほど少なくなることは当然で印刷機械関係の回答比率は低くなる。従ってポイントは優先順位の変化になるが、昨年調査との対比で見ると印刷物受発注の電子調達(23社),リモート校正(20社),バリアブルデータ印刷事業(18社),新商品開発(15社),印刷物発送アウトソーシング事業(10社)といった,新規事業・業務への取り組み意向が増加していることが特徴である。

着実に進む次のステップへの歩み

つまり,この1年間での変化を見ても統合化されたデジタルワークフロー実現に向かう技術の流れが見て取れるし,印刷物発送アウトソーシング事業などの付加価値提供を目指す動きも確実に感じられる。
最新の印刷機械であれば,例えば版替え時間はそのサイズ,ユニット数にかかわらず5分以内で完了することは当たり前になった。色調整,見当調整も同様である。従って,コスト削減,時間短縮,人員削減の焦点はデジタルワークフローの拡張に移りつつある。JAGATの推計によれば,2002年における平版印刷機の内需はピーク時(1990年)の33%まで落ち込んでいる。収益性低下による設備導入の手控えもあるだろうが,機械設備の機能・性能が大幅に向上したことも大きな要因である。生産合理化の努力とともに,他社との差別化の意味で,印刷物製造の前後工程に機能を広げてワンストップショップ機能をもつことも併せて実現することが,競争力にとって欠かせなくなってきている。印刷物発送アウトソーシング事業の取り組みが増加しているのも当然であろう。

デジタル・スマート・ファクトリーへの動き

同様の傾向は,米国の印刷業界の調査でも見られる。2002年に行われたオフ輪業者を対象とした調査によれば,今後1年間でどのような設備を導入するかという質問に対して,最も回答社数が多かったのがカラープルーフシステムで,次いで印刷物配送機能に関連する設備導入,第3位がCTPとなっている。<BR> CTP導入に関しては20%の企業が1年以内に導入すると回答している。2001年調査でのこの回答比率は30%で最も高かったが,1年で10ポイントも低くなっている。オフ輪業者におけるCTP導入が既にかなり進んでいるからである。同じアンケートで,20〜49名の印刷会社の約4割が1年以内にCTPの使用を増やすとしている。オフ輪業界から始まったCTP化の波が,その裾野を広げる段階に入っている。

高まるリモートプルーフへの関心

一足先にCTP化を達成したオフ輪業者は,デジタルプルーフの導入に向かっている。オフ輪業者のほぼ4分の1は2003年内にデジタルプルーフシステムを導入すると回答している。2001年の調査では2割弱だったから関心は確実に高まっている。
米国のオフ輪業者がデジタルプルーフの次に多くの導入意向を示したのが郵送・配送部門関連設備である。2割強の企業が1年以内での導入意向を示したが,2001年調査に比べて大幅に回答が増加した。ワンストップショッピングの機能を期待する顧客への対応であると同時に,印刷会社にとっても付加価値を期待できる大きな分野である。従って,今後ともこの分野への投資は拡大すると見られている。
いずれにしても技術の大きな流れは,日米ともに予想どおりの方向に向かっているということである。

(出典:「JAGAT info 2003年6月号」より)

2003/06/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会