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DTPの改善はワークフロー管理のIT化から

DTPのアプリケーションがあまり変わりばえしないのとは対照的に、デジタルの印刷物制作のワークフローで使うツールは増えつづけている。しかしそれほどDTP市場に浸透しているようにも見えない。ワークフローという言葉の意味は、デジタル化して以来は大きく変わったのだが、その意識なく使っているとデジタル化のメリットも見えないという双方向の関係にある。

ワークフローというのは、列車を駅から駅に走らせる線路に例えられる。列車が個々の仕事である。駅が作業者とか端末やサーバや出力機器などで、路線をどのように経緯していくとスムースに仕事が流れるかがワークフローの問題である。しかし列車や線路や駅があるだけでは運行は出来ない。

無事故で予定どうりの結果を得るためには、列車の運行を放任していてはダメで、ダイヤグラムという効率的な運行スケジュールを作ることと、絶えず運行状態の監視をして、密に連絡をとることが必要である。つまりワークフローを計画し管理するシステムをITで何とかしないと、ワークフローを議論しても意味がない。

ワークフローの改善のために、ホットフォルダーによるフォーマット変換やプレフライトチェックとか、画像の自動レタッチなど単一工程をサーバでバッチ処理するなどのツールがいろいろと出ているが、それら全体を包む大きなダイヤグラムを決め仕事の経路を定義するのに、人間の作業が事前にたくさん必要になったのでは、せっかくの自動化ツールの意味がなくなるからである。

DTP作業の改善を阻んでいるのは、ワークフローツールの機能の良し悪しよりも、制作業務管理を省力化するようなITの仕組みが遅れている問題である。新聞など基本的には決まった時間割で同等な印刷物を繰り返し制作する場合は、制作管理方法は比較的考え易いが、商業印刷物のように仕事が不規則な場合は、列車というよりも道路に車が走っているようなもので、渋滞の監視と交通信号による流れを制御のような別の方法も考える必要がある。

この制作管理システムを厳密に考えると非常に複雑になるが、最も平たく考えればグループウェアのようなものになり、QuarkのQPSのようなものは欧米ではかなり使われている。こういったもに呼応する形で後でワークフローツールが出てきたともいえる。

これからDTPアプリケーションの劇的な改善が望めないのだから、もはやDTPの作業方法の改善を現場の管理者に任せておくとホットフォルダーのような部分改善しかできないので、上記のような大きなダイヤグラムのツールや、全体の管理システムのことを考えねばならない。しかもオフィスで使うITのツールは容易に手に入るので、むしろ大規模な印刷会社よりも小規模な会社の方が、このような試みもやり易くなっているのである。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 207号より

2003/06/30 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会