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確実に必要とされるIT化への戦略的アプローチ

携帯、Web、PDA、電子ブック、電子カタログ、オンデマンド印刷……などなど、情報関連の「技術」と「容れ物」の可能性を考え、追いかけることはとても大事なことである。
しかし一方で、それらが最終的に「組み直された形」で社会的スタンダードとして定着する可能性を視野に入れておかなければならない。
その「再編」後の状況の中で、必ず生き残る部分がどこであるかを徹底して考え、戦略的にアプローチをしておくことも大事なことである。そしてその再編は思いの外近いと考えられる。

かつてワープロ専用機とパソコンとが並行してメーカーの違う部門から販売されていた時期、どちらが「勝つか」が論議されたことがある。今では遠い昔の信じられない話に聞こえるかもしれないが、当時はそれは真剣な議題対象だった。そして、2003年1月にシャープ株式会社が撤退を表明したのを最後に、日本の市場から専用機が消えたのである。
現在も、録音機(レコーダー専用機)の再生機能に音楽再生が取り入れられ、再生機(プレイヤー専用機)には録音機能が取り入れられ、デジカメにはムービー機能が取り入れられ、携帯にはデジカメ、メール機能が取り入れられ、PDAにはそれらが取り入れられ……と、付加機能というにはクオリティの高い内的横断が至る所で起こっている。

だが個人の使い勝手から言えば、既存の道具の使い勝手をより良くする「情報家電ないし情報文具」とホーム、オフィス、モバイルそれぞれで日常的に使う何通りかの利便性に富んだ「情報機器」の形に落ちていくはずである。
現在何十、何百通りと出ている情報の「容れ物」のバリエーションは、統合進化して何通りかの形にまとまり落ち着ついていくと考えて間違いないのである。

「どこでもコンピュータ」と言われるユビキタス環境がどのようなものになるのかに関しては、いろいろと議論があるが、かつて取り沙汰された人間を「情報機器」が取り囲むサイバースペース環境のようなものになるとは考え難い。
人間が情報を心地よく快適に取り扱う「ゆとり」を伴った環境に今後なっていくであろうことが、エネルギー消費問題を中心軸として議論されるようになった「持続可能な循環型社会」の具体的イメージと重ね合わせたとき、見えてくるのである。
それは紙、本を含めた「もの」とWebを含めた「IT」がバランス良く共存するイメージでもある。

それら近い将来の姿を予見させる、「大きな進化をもたらすであろう小さな変化」が今いたるところで起こり始めている。
しかしこれは、ITの状況をある程度知っているとかえって先入観ができてしまい、見落としてしまいかねないこともである。だが、その変化を見落としてしまうと、勝ち抜ける戦略を取り誤ることにもなりかねない。

すぐ先のクライアントとしての顧客の動向と同時にエンドユーザーとしての顧客の動向を合わせて掴まえていくIT活用のアプローチはすぐにでも始めたいことである。「顧客の顔、顧客の考え、顧客の欲求」を緊密な関係の中で掴みとり「共に考え、共に創り上げていく」仕組み作りがビジネスの局面でますます必要となってくることは間違いないからである。そこから戦略判断が生じ、ビジネスチャンスが生まれてくるのであるから。

「顧客と共に考え、顧客と共に創る」ことを始めるのは、例えば現状のWebをベースに、小額投資で「まず」はじめることも出来る。しかし、それを成功させるには「ノウハウ」と「フィロソフィー」が具体的な目に見える投資以上に重要な前提要素となる。その部分を知っていただきたいのである。

JAGATが7月16日(水)に開催するシンポジウム「顧客の顔が見えるメディア」では、「大きな進化をもたらすであろう小さな変化」を目の当りにしている企業のトップの方々をお招きし「顧客との関係作り」とそれをメディアビジネスにしていく具体的実例、ノウハウ、戦略を語っていただく。
「技術」「容れ物」をいかに作るかという以前に、顧客の立場で徹底的にそのサービスのあり方を考え、そしてそれをどう実現するかということから「技術」「容れ物」を選択していった最良の実例がここにはある。

シンポジウム「顧客の顔が見えるメディア――顧客との関係で進化をはじめたメディアとビジネス」(7月16日・水)

(注)会場が変更になりましたのでご注意ください。
⇒会場:社団法人日本印刷技術協会(東京都杉並区和田1-29-11 TEL03-3384-3111)
会場地図はこちら

●iMiネット(「逆」マーケティング・メディア)
●OKWeb(Q&Aメディア)
●みんなの書店(参加型書店)
●ぱど(地域密着型フリーペーパー)

という4つのメディア事業の代表者の講演。最後にパネルディスカッションを行ない、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの第一人者である和田昌樹氏をモデレーターに、顧客と共に創るメディアのあり方と具体的ビジョンを探ります。
皆様のお越しをお待ちしています。

2003/07/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会