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新しい印刷ITソリューションで勝ち組へ

高度情報化社会の印刷会社としてベストパートナーを目指す生産経済新聞社の代表取締役社長水野和泉氏に同社の姿勢を伺った。

グループ5社によるコラボレーション
生産経済新聞社(本社東京都台東区)は,1955年,先代の水野富久司氏によって創立された。元は生産関係を重点にした日刊の『生産経済新聞』を発刊していた。しかし日刊紙は,2年で休刊となり,残った設備で委託の受注工場とし,新聞印刷からスタートした。
業務拡張のため関連会社も設立され,「SKグループ」として充実を図っている。現在,生産経済新聞社を中心にデイ・エス,ジャーナルプレス,エム・エム・シー,宣研の5社で構成されており,各社の業務内容は以下のとおりである。
デイ・エスは,東京オリンピックの前年1963年に神戸新聞社と生産経済新聞社の対等合併により設立された。社名の由来は,神戸新聞社が発刊している「デイリー・スポーツ紙」のDと生産経済新聞社のSを取り,組み合わせたものである。資本金は,その当時としては破格の2億円であった。その後印刷の技術革新は周知のとおりである。
ジャーナルプレスでは高品質な製版処理とデジタルワークフローにより,カラーセパレーションのフルデジタル化を完備している。特にCTPやデジタルプレス,マルチメディアまでを包含した拡張性あるシステムで顧客ニーズに対応する。
エム・エム・シーはデジタル化の新技術開発とインターネットビジネスの情報インフラを統括推進していく。コンテンツ制作から情報発信までマルチメディアのトータルコーディネーション並びに可能性を追求している。
宣研は,総合カタログ・パンフレット・チラシなどあらゆる商業印刷物,ロゴマークなどの企画・デザインを行う。
現在SKグループでは新聞印刷だけなく商業印刷まで幅広く対応し,営業品目も新聞・書籍からチラシ・カタログまであらゆる印刷に対応できる。また,CD-ROM出版,ホームページ制作,電子出版などにも取り組んでいる。企業戦略としては,資材の購買,新聞印刷,出版印刷,商業印刷,マルチメディアの5つの部門から成り立っている。

都市型商業印刷用オフ輪稼働
同社の特色の一つは,今後のデジタル化に見合った多目的のタワー型オフセット輪転機を日本で初めて導入したことであろう。
しかし,導入に際しては都心部ならではの土地の悩みもあった。同社はJR上野駅や地下鉄湯島駅にほど近く,不忍池に面しており,かつ周囲には多くの商店やマンションが立ち並ぶ地域に位置している。都市型の新しい輪転機は,発想の転換で,通常横長の輪転機を縦にして狭い面積を有効活用するものであった。建物の設計も初めから縦型のオフ輪を入れる計画があったわけではなく,地下2階から中2階までぶち抜き,高さ13メートルの大きな輪転機をビルにすっぽり納めてある。また近隣地域の住宅環境問題からも機械振動を大幅に低減させている。
当然同社に合わせた設計仕様が必要で,製作を請け負った九州の西研グラフィックス社では青図を描いた時に通常の4倍の分量になったという。
2000年に西研グラフィックス社製のSK式BT2-750型オフセット輪転機を導入,同年の11月に披露した。両面4色刷り機5台,折り機3台,給紙機5台で構成されており,各印刷機にドライヤーを装備して商業印刷から新聞印刷まで対応でき,最大B3判20ページのフルカラー印刷が可能である。営業的にも多ページ多色刷りの融通性は強調している。安定したクオリティはもちろんのこと,操作性や機能性だけでなく損紙の低減にも注力している。
SKグループではほかにも,商業用オフセット輪転機,新聞用オフセット輪転機を始め,各種の周辺機器も充実している。ポストプレスシステムも中綴じ機,断裁機,DM折り機などが完備されている。マルチメディアからプリプレス,プレス,ポストプレスと一貫した生産ラインが一カ所に集約されたことになる。印刷の高品質化・省力化へのニーズにこたえる印刷環境作りにハードとソフトの両面から取り組んでいる。

ITとマルチメディアに対応
21世紀の印刷会社のステージとして,ITとマルチメディアを挙げている。キーワードは「情報」である。「今まではむしろ情報の加工を売りにしていたが,これからは情報の送受信,発信エリアなどデータの扱いそのものがビジネスになる」。つまり情報加工業から情報消費産業への様変わりが起きているという。
同社では,次世代ソリューションとしてITターボサーバを利用したコラボレーションのワークフローを確立している。4.5テラバイトの大容量を誇り,あらゆるデジタルアセッツマネジメントを行うことが可能である。100Mbpsの光ケーブルを介してSKグループのどの会社からも運用することができ,高速化並びにハイコストパフォーマンスに優れている。ASPを念頭に置きブロードバンド対応による新しいビジネス展開を図っている。具体的には以下のことができる。
「デジタルアセッツメントマネジメント」
写真,イラスト,ロゴ,テキストなどのコンテンツデータの管理から工程管理,またもちろん動画,ストリーミングなどの大容量に関しても利用可能である。デジタルコンテンツデリバリーサービスもブロードバンドの活用により速く,安く,簡単・自由に配信できる。ホスティングサービスも行っている。またCTPへの対応にも向いている。
「リモートプルーフ並びにオートリターン校正システム」
ITターボサーバの活用によりPDFファイルでの校正をタイムレスで自動的に行える。返送されたデータはワークフローにより校正される。ブラウザ対応なので基本的にPCがあれば,いつでもどこでも利用できる。
「ポストプロダクション」
映像の編集,ナレーターの手配から録音に至るまでポストプロダクションとしての体制を整えている。また,映像編集の現場で大活躍している次世代映像編集システム「Tremor」および編集ソフト「Shake」の導入により従来では困難だった,モーショングラフィックス,3Dアニメーションなど,より高度な映像制作を行えるようになった。

グループネットワークで「共生・共栄」
SKグループでは社内の研修会も盛んに行っている。なかでも新技術懇話会は,毎年11月にテーマを設定し,各企業のメンバーが発表する。前回は「リモートプルーフとオートリターン」がテーマであった。また海外研修制度も取り入れ,広い視野を育てることを目的としている。
グループ間では,営業・資材ともに統括制にしている。一括集中管理することにより,顧客満足度アップや資材の安価で安定供給が可能になる。またグループの結束を強めていくことにもなる。
水野社長は,自社の設備を「お客様との共有財産」と言い切る。印刷業界はデジタルコミュニケーション時代のIT産業へと流れており,顧客ニーズも多様化している。今後もグループネットワークを組むことにより「共生・共栄」に向けて邁進していくという。

JAGAT info 2003年7月号より

2003/07/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会