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Webのコンテンツ制作管理の移り変わり

印刷企業では、印刷物を受注する必要からWeb制作を一緒にして印刷物の受注を行っているケースがある。これはある意味ではWebサイトでの採算を度外視した価格で受けている場合も多い。しかしWebサイトのデータ運用を静的なHTML記述で行うのでは、手間ばかりかかり、このような手間を請求でればいいが安い保守運用費用では大変である。
このため更新状況が多いサイト管理では、静的なHTML制作ではなくデータベースを利用しダイナミックにHTMLを出力する仕組みが必要である。

また今のWebサイトでは、静的なHTMLだけで運用できるようなサイトは殆ど無くなってきている。応答が要求されるな部分もあり、またドキュメントでも製品情報でも同じ体裁でしかも見せるページ数は非常に多いというような情報からできている。
このようなサイトを静的なHTMLで記述するのは、多くの労力を必要とするので、ダイナミックにHTMLデータを生成するような環境が欲しくなる。
このような環境を支えるのが、Webアプリケーションプラットフォームということになる。また最近はWebサイト運用の支援ツールにあたるWebコンテンツマネジメントシステムが出現し、さらにはオープンソースのZopeなども注目され始めている。Webサイトを効率よく構築運用するための選択肢は増えてきているが、このような環境も目的や規模に応じて検討すべきものである。

JAGATのホームページも、1999年頃からマイクロソフトのWebアプリケーションプラットファームを利用した仕組みで運用を行ってきている。仕組みは、SQLサーバにコンテンツを入れて、ASP(Active Server Pages)を利用したシステム構築でコンテンツ管理を行ってきている。このため、トップページへの記事のオンオフの自動化の仕組みや認証によりコンテンツを許可するような仕組みが実現されている。
もともとWebマスターがデータのアップを行う作業が非常に大変であったことから導入された仕組みである。結果としては、更新の手間が非常に軽減されてきた。ただこの頃はコンテンツマネジメントシステムという発想は無く、JavaやVBなどで非常に多くのスクリプトを書き、一定の運用ルールと書式をサポートする仕組みでできあがったシステムである。逆に変更をする場合には、スクリプトの書き換えをする必要が出てくる。

Webアプリケーションプラットフォームの利用の課題

初期のWebアプリケーションプラットフォームということでは、WebサーバのSSI(サーバサイドインクルード)のような、サーバ上でファイルが呼び出されたときスクリプトを実行する環境がある。そしてこのような環境で使われるスクリプトでは、Perlなどがある。
一般的にはデータベースをアクセスする部分を含めてPerlのようなスクリプトを利用してダイナミックなHTML生成を行ってきた。しかしPerlでは、書く量が多くまた読みにくいスクリプトにもなりがちで非常に大変であった。このようなこともありWebアプリケーションプラットファーム製品という環境が出てきた。サーバベースのスクリプト言語やデータベースのアクセス部分を含んでいる製品である。Cold Fusion、Active Server Pagesなどがある。
サーバサイドでJavaやVB,php3などのスクリプト言語を利用して、コンテンツの元のデータはリレーショナルデータベースなどに入れておき、それを呼び出し動的にページを生成することが行われている。
Webアプリケーションプラットフォームという言葉は、今.NET環境という言い方をしたXMLによるWebサービスを実現する環境としてWindows Server 2003に利用されているが、これは最新の環境である。

誰がスクリプトの保守を行うのか

静的なHTMLよりか、一度に多くのコンテンツの出力体裁を変えることができるため、かなり変更などの負担を減らすことができる。しかし問題は書かれたスクリプトを変更する作業が入ってくる。これは技術が求めれることになる。
静的なHTMLでは、ひとつひとつのページを修正するという、大変な労力が必要であったが、スクリプトでは修正する技術力とチェックを行う手間が入ってくる。
現在多くのサイトがこのようなデータベースとスクリプトを利用した動的なホームページになってきているが、保守運用には、専門的な技術や手間が要求されている。

Webコンテンツマネジメントシステムはサイト管理ツール

このようなWebサイトの運用の流れを簡単にしようというのがコンテンツメネジメントシステムである。Web運用の流れを管理することで、更新の手間を大幅に削減しようというシステムである。
仕組みは、従来のWebアプリケーションプラットフォームを利用し、その上に運用のビジネスルールを載せて、ページのデザインなどもテンプレート化するような仕組みになる。JavaやVB、phpなどで書いていた部分を大幅に無くし、コンテンツ制作者や運用責任者がいれば使えるようにしようという製品群である。
製品には、大規模サイト向けから小さなサイト向けまでいろいろと出てきている。また仕組みにも、データベースからダイナミックにHTMLを作成するタイプや、HTMLデータを作成しWebサーバにロードするタイプなどがある。
基本的な機能は、ソースの入稿やコンテンツのオンオフ、さらにリンクの管理や承認までのワークフロー管理などWeb制作フローを管理する仕組みになる。

オープンソースZopeとは

Webアプリケーションプラットフォームは、基本的にはベーシックな環境を提供するが、Webコンテンツマネジメントシステムは、ある運用が規定されたシステムである。
しかしZopeはWebアプリケーションプラットフォームであるが、ベーシックな環境ではなく、ちょうど中間的な位置付けとなるような環境で、アプリケーションサーバという位置付けのオープンソースになる。これはデータと処理を一緒に管理するようなオブジェクト指向の考え方でできており、利用可能な部品などの組み合わせで、簡単に利用できる点がある。DTML(ドキュメントテンプレートマークアップランゲージ)を利用することで、スクリプトを知らなくても利用でき、さらにPythonと呼ばれるスクリプトを利用すればさらに複雑なことができるようになる。
Zopeは、ダイナミックなWebサイトの実現でけでなく、情報システムにも利用できる技術として注目され始めている。
最近はXML技術を利用することが多く、アプリケーションサーバではJ2EEをサポートしているものが、情報システムとして注目を集めているが、Webのポータルサイトなどの運用ではZopeが注目されている。

印刷業でのコンテンツマネジメントシステムの利用

印刷会社がWebの制作ビジネスを受ける場合は、やはり紙の印刷物の受注と一緒に考えたいからである。しかしWebサイトに載せるデータがすべて印刷物になるデータソースではない。そのため手間ばかり多いHTMLデータ作成は止め、顧客がアップすれば自動でWebで利用できるようになり、さらにその中から印刷物に利用するデータを印刷会社が引き出して使う環境があれば、安いWeb用データ作成を受注しないで済むことになる。このような発想は、コンテンツマネジメントシステムが無いと実現できない。
印刷会社はこのようなツールをどう活用すればコストに見合ったデジタルと紙のビジネスを展開できるか検討をする時代になってきている。

2003/07/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会