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カラーマネジメントに終わりはない

長らくの間、製版のノウハウは、色分解と、レタッチと、集版だと思われていた。ところがDTP化で普通カラーの仕事は何万円かの卓上スキャナで読み取ってphotoshopでできてしまうようになって、高価なCEPSや製版スキャナをベースにした専業者の仕事は大幅に侵食された。確かに色分解や集版はプロとして成り立たなくなったのだが、レタッチはまだDTPソフトでは何ともし難いところが多く残っている。

レタッチとは、カラースキャナの出現以前からあった「絵」の雰囲気作りであるところの「プリーズカラー」に象徴される、カラー画像表現の「らしさ」を演出する技能が基本であるだろう。これは本来製版技術とは別の次元の話であり、色校正用語の抽象性にみるように奥が深い世界がある。かつてレタッチで活躍した人が、製版技術が変わった後で必ずしも絵作りのコーディネータとして活躍できていないのは残念である。

スキャナの出現後は、カラーコレクション、カラーバランスのような計数的な画像の分析・評価もレタッチの範囲に入った。スキャナも脱技能的な機能はどんどん盛り込んでいって、日常作業はオートセットアップ的な使い方になったが、生産管理的には計数管理がはずせないように製版の業務を変えた。だからレタッチと呼んでいいかどうかわからないが、スキャンから印刷に至るまでの工程変量を捉えて製版カーブを設計するために、全印刷工程の知識を持つようになった製版マンも多くいる。

今日カラーマネジメントで活躍しているのはそのような製版のレタッチから計数管理にまたがった仕事の経験をもっている人である。DTP時代のカラーマネジメントのトピックスは、初期にはモニタをどう設定するか、次いでプリンタをどう校正に使えるようにするか、そして印刷機とプリンタを同格で扱えるようにするというように、次第に印刷全体をカバーするようになってきたからだ。

しかしこれでカラーマネジメントの仕事が終わったわけではない。最近ではデジタルカメラの画像入稿が増え、かえって工程全体を考えることが難しくなった。印刷の方は校正刷りなしでも刷れるようにと計数管理を発達させているのに、製版の出発点がリバーサルフィルムという静的なものではなくなり、基準となるものを見ることも計ることもできないからである。

現在では入稿が何であってもphotoshopで画像を開いてみれば、だいたいどうするべきかわかるというアナログなやり方に戻っている面もあるが、それでは大量自動処理の方向に進むのに差し支えがある。画像に関する標準化がフィルム上の再現域を越えて測定可能な範囲全体に及ぼうとしているし、また人の目も生きたままの人からデータをとる方法がいろいろ出てきているので、従来の製版の「フィルムと印刷の間」という限定を超えた色評価・色再現や色変換の新しい画像のプロが求めらるだろう。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 208号より

2003/07/27 00:00:00


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