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編集業務に必要なDTP知識の取得のために

◆三共出版(株) 飯野 久子

DTPエキスパートに合格したのは1年ほど前になります。だからといって今の仕事に貢献しているかというとそうでもないのですが,あのうれしかった合格の日を経験できたことは,私にとっては大きなことでした。それは,今の自信にちょっぴりつながっていると思います。

私の仕事は大学生向け教科書の出版社の編集業務です。日々,原稿整理,レイアウト,校正,またでき上がった本の広告作成,目録の表紙デザインなどもやっています。といってもデザイン系の学校出身でもなく,版下作りなどやったこともなく,まるで一からの出発でした。
10数年前に入社したころ,レイアウトは「切り貼り」というおそろしく手間の掛かる作業でやっていました。校正ゲラを切って貼って,版下屋さんに作ってもらったトレース図版をコピーして貼って……。何度も何度もやり直しをして,紙切れの山にまみれていたころが今となってはとても懐かしく思い出されます。DTPというものを知ってからは,楽しくて,便利でコンピュータなんて触ったこともなかった私でもできるんだと驚きました。しかし今の会社の編集業務では,DTPをすることはまったくありません。しかしその「知識」は常に必要不可欠です。

入社当時の原稿は,手書きの原稿もしくはワープロ原稿を出力したものがほとんどでしたので,校正もかなり手間が掛かり赤字も多く入っていました。それがだんだん著者の入力した「データ原稿」になり,赤字もそれまでよりはだいぶ減った代わりに,それまでやってきた校正や編集の知識とはまったく違った知識が必要になってきました。パソコンの知識です。だんだんDTPが一般化してきて著者がレイアウトや,図版まで作成してくるようになると,保存の仕方,文字の書体,ソフトの使い方などなど……ついてゆけない日々が続き,かなり落ち込んだときもありました。DTPの知識のほとんどない私たち会社側と,印刷会社営業担当者の間で,どういうデータならいいのか説明してもらっても,それをデータ作成者である著者に伝える時には曖昧になってしまい,結局使えないデータをもらってしまうこともありました。そんなことを経てDTPというのは一筋縄ではいかない,やってみないと分からないなと痛感しました。以前の印刷会社は,データに関してはかなり完全なものを望んでいました。もちろん今でもそうなのですが,数年前に比べるとかなりやりやすくなったと感じています。データに対する恐怖感がなくなったのは,DTPエキスパートになった余裕(?)も少しはあるかもしれませんが,ここ数年の印刷会社の対応がかなり柔軟になったためだと思っています。手書きのデータとアウトプットしたデータ,デジタルデータを一番よい状態で使用する「こつ」も多少なりとも分かってきていますし,これもみなDTPエキスパートの資格を取るに当たって勉強したことがかなり役に立っていると思います。

DTPエキスパートという資格があるということを知ったのは,いつも来る印刷営業の方が話していたからです。「社命で受けたけれど勉強していなかったから落ちちゃった」と聞いていたので,まさか自分が受かるとは! とちょっと優越感に浸ったりもしちゃいました。何にしてもチャレンジしたことは自分にとっては,とっても有意義なことだったと思っているし,これからもその資格に負けないような日々の積み重ねが大切なことだと思います。
著者の先生は私をプロだと思って接してくださいますので,やはりその期待にはこたえなければいけないと思います。何より本ができた時に自分が満足できるような感覚をいつまでも失いたくないと思っています。まだまだ未熟なところは多いので,反省することばかりですが,これからもっとがんばりたいのは,より見やすく,分かりやすい本を作ることです。レイアウトや色のことをもっと知りたいし,やはり「売れる本」を作りたいと思うのが本音にはあります。これからもDTPに携わり,大好きな本の世界に浸っていたいと思います。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2003年8月号


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2003/07/28 00:00:00


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