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サイテックス・デジタル・プリンティング社オープンハウスの今後の戦略(前半)

その1 市場と技術の現状

ライト兄弟が動力飛行をしてから100周年に当たる2003年,米国・オハイオ州デイトン市はこれを記念に盛り上がっておりますが,SDP社もこれを機に自社技術,将来への戦略を公開するオープンハウスを7月17日開催致しました。
その中ではオフセット印刷をIJ技術で置き換えてゆく夢も語られるなど,興味深いプレゼンが各種ありました。今回その概略を2回に分けて報告します。 (詳細は8月末発行の『プリンターズサークル』9月号を参照下さい)
今回はサイテックス・デジタル・プリンティング社(SDP社)の現状についてプレゼン内容を主に紹介します。また第2回目は今後の戦略を中心のご報告する予定です。

1.SDP社について

SDP社の前身はミード(MEAD)社です。現在のオフィス・プリント市場ではDOD型のインクジェットが主流ですが,ミード社は連続型で特に広幅・高速のヘッドを得意としています。現在迄にSDP社では約300件の特許を保有しており,他250件が現在申請中です。ミード社はその後,1980年代にコダック社に買収された後,1990年代初当にサイテックス社に買収されて現在のSDP社となりました。親会社であるサイテックス社は他にScitex Vision社を保有し,この会社にIJ技術を持つアプリオン(Aprion)社が買収された事を記憶されておられる方もあるでしょう。以上の様にIJ特に連続型IJを核技術として育てあげ成長している会社がSDP社なのです。現在,全世界で顧客数が約500社,機械納入実績も10,000システムとの事で主にDM(ダイレクトメール)やビジネスフォーム市場でバリアブルプリントやトランザクショナルプリントを実現するシステム製品を提供しています。

2.サイテックス社全体の運営方針について:CEOプレゼンテーション

CEO Mr.Homi Shamir氏(▼)は2003年6月にSDPの社長から親会社のサイテックス社のCEOも兼務 Shamir氏

サイテックスコーポレーションは2つのオペレーティングカンパニーをもっています。1つは私のSDP社であり,他はサイテックスビジョン社です。SDPはデジタルプリンティング業界が厳しい状況下でも売り上げ利益ともに現在伸びています。SDPではミード社以来35年以上もわたり連続型IJ技術の発展に寄与し続けてきました。最高速度で100%バリアブルプリントを実現するシステムをお客様に提供する事でご評価頂いた事がこの業績に結びついていると考えています。産業用とグラフィックアーツ市場が現在の主要な活動の場です。又サイテックスビジョン社もワイドフォーマットの分野では非常に成功しています。最近,アプリオン社を買収しました。サイテックスグループ全体では連続型のIJとDOD型のIJ両方の技術・製品をもっています。この様なインクジェット関連の個々の製品・技術を融合しシナジーの可能性を探る事,これによってサイテックス全体の企業価値を最大化する事に今後注力したいと考えております。

3.SDP社の現状・将来戦略について:VPプレゼンテーション

【製品・市場等の現状】
現在SDP社はデイトン市に本社があり,地域別にはスイスの欧州オフィス,東京に日本オフィス,シンガポールのアジア・パシフィックオフィスと1本社3拠点体制で運営しております。地域別の売り上げ比率は米国38%,欧州35%,
アジア&日本が27%と3分の状況です。1995年にはアジア&日本が15%でしかなく,最近のアジア,特に中国ですが,での伸びが非常に顕著です。現在40カ国以上で活動しています。現在までに約5,000の顧客に対して10,000システム以上が納入されるという実績を持っています。

SDP社VP Mr.Kazem Samandari氏がグロバルマーケッティングの責任者(▼) Samandari氏

当社の製品は
〔1〕インラインでのバリアブルプリントを実現するインプリンティング製品群(4'までのナローフォーマットプリンター:Dijit/Liberty/Passportシリーズ等)
〔2〕システム製品群(VersaMarkシリーズ等頁幅のプリンター)
〔3〕ソフトウェア製品群(データコントローラ,システムコントローラや各種ツール)
の3つの製品群から構成しています。これらの製品群がDM・ビジネスフォーム,請求書等のトランザクションドキュメント,ゲームクジ(Lottery),チケット・タグ・ラベル,メールの発送等で活用されているのです。特に請求書関係では日本のNTTに採用された事を契機に市場が拡大し,又ゲームクジの市場では当社が95%以上のシェアを占めております。インプリンティング製品がゲームクジやDM等,事前印刷されている物への宛名等の印字に,又システム製品が請求書等の中〜大量かつ低コストが要求される分野の印刷に利用されています。

【技術の現状】
連続型のインクジェットヘッドは図の様な構造をしています。 インクジェットヘッド インク液に圧力と振動を加える事により,均一なインク滴を垂直下方向に吐出(サテライト等も吸収させる)。次に非印字部分に相当するインク滴に一定量の電荷量を与えます。この電荷と反対極性の電圧を次ぎに印加する事で印字部に相当するインク滴はそのまま垂直に通過して紙に着弾,非印字部に相当するインク滴は印可電圧で軌道を変更させてヘッドで回収されし再利用されます。以上のプロセスを繰り返し,紙を印字列方向と直角に搬送させる事で画像が作成されるのです。
従って,記録密度と記録速度にはインクの粘度,ヘッドでインク滴を吐出する穴のサイズ,印加する振動数の駆動周波数等が複雑に関係してくる事になります。SDP社は現在,水系のインクが主流であり,1'幅のヘッドで115/330plのインク滴を,9'幅のヘッドで44plのインク滴を形成している。又印加する駆動周波数は44plのインク滴形成時に110khzです。
ちなみに印字速度(搬送速度)は現状で1,000fpm(約305m/分)が実現されています。又,現在ビジネスカラーが中心でフォントとしてはTrue Type フォントの印字が可能となっています。

2003/08/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会