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サイテックス・デジタル・プリンティング(SDP)社オープンハウス(後半)

その2 開発・市場戦略と新製品

まずは連続型IJのインク滴形成の様子と実際の画像形成の様子を下記動画でご覧下さい(SDP社様御提供の画像です)。若干ファイルサイズは大きいのですが,なかなか見る機会が少ないと思いますので掲載させて頂きます。
 ◇インク滴形成の様子〔MPEG 5K〕
 ◇画像形成の様子〔MPEG 14K〕

1.今後の開発戦略と市場戦略

現在の既存の顧客を維持する事が重要と考えております。従って,より高速にかつより高画質を実現し,幅広いアプリケーションに対応してゆく事になります。将来的にはフルカラーでオフセット印刷を代替する事を目指してゆく事になるでしょう。このための製品として本年末または来年初に'Next Generation Color'という製品をリリースする予定です。この製品の特徴は,
・高解像度:300×1200dp
・6色ヘッド(9'ヘッド)
・全イメージがバリアブル対応
・高速印字:モノカラーで1500fpm(457m/分)の印字速度を実現
・両面印字対応
等です。高解像度を実現するため,インク滴を従来の44plから15plまで小滴化し,かつ駆動周波数も110khzから165khzまで高速化しました。今後の開発方向としては,インク滴をより小さく,具体的には8pl化し駆動周波数も250khz程度に高周波とする事も考えております。最終目標はオフセット印刷機を代替する事です。
又,現在のお客様は各市場のトップ企業の10%です。従ってユーザ層を拡大するためには低価格機の投入,柔軟性のある価格体系の構築が必要と認識しています。現在,中規模印刷量のユーザ様にはVersaMark Vantage を投入していますが,より低価格のモノクロ機を今後提供してゆきます。モノクロからカラーへの動きがありますが,この移行には時間がかかると判断し,高速・低価格のモノクロ機が必要と判断した為です。また既に紙メディア以外の印刷向けとして溶剤インクやDOD方式の製品も投入を開始し,UVインキも既に保有しております。この様にお客様のニーズに対しては確実にお答えしつつあります。 又紙でもパッケージ,特に段ボールへの印字も既に日本企業でも実施されています。このように非常に広範囲な可能性を持つ技術・製品群を今後も提供続けてゆきます。各種の展示会で今後具体的に明らかにしてゆきますが,現在下記のイベントで展示を予定しております。

◇GraphExpo:メーリングやフルフィルメント用のソリューションを提供するシステムの展示
◇Xplor:データセンター用の低価格モノクロ機,VantageとEFIコントローラのシステム
◇Drupa2004:Next Generation Color とEFIコントローラのシステム

一方,当社の戦略を実現する上でパートナー企業との関係強化も課題です。ソフトウェア製品に関しては高速のコントローラをEFI社と共同で開発を進めております。又,前記の様に低価格モノクロ機と次世代機でこれを搭載する予定です。又搬送機についても日本の(株)ミヤコシとスイスの会社から機械の提供を受けております。又当社は直販ではなく代理店販売が主です。日本国内では98%〜99%が代理店販売,他国でも8〜9割が代理店を経由して販売しております。このチャネルは当社にとって非常に重要であり,今後もチャネルの拡充に努めてゆきます。 以上の様に,技術等のシナジーを最大化し,より高速・高画質のシステムを提供するとともに顧客満足を最大化する方向が明確に出されました。次にこれらを実現する新製品について報告する事にします。

2.新製品プレゼンテーション

工場の一部で開発担当者が機械を目の前でデモしながら説明するミニプレゼンが今回行われました。

1)Digit Passport 4300 Printing System
Digit この機械はDOD型のヘッドを使用しています。ヘッド幅は2.58'(6.55cm)。この機械はメーリング用宛名印字を目的として開発されました。印字速度は330fpm(99m/分)。インク補給が機械を停止せずに可能という特徴があります。又ヘッドはインク吐出部を6列構成としており,目詰まりが生じても画質への影響が最小限となる様に配慮されています。インク価格も$200/リットル前後と安く設定されているとの事。又ヘッドは2ユニットまで搭載可能です。又デモではメーリング用という事で乾燥用のドライヤーと搬送機が組み合わされていました。

2)Dijit Liberty 7122
Dijit この機械では溶剤系(MEKベース)インクが採用されています。印字幅は2.13'(5.41cm)で120×120dpi時に1000fpm,120×240dpi時に500fpmの印字速度です。溶剤系のインキを採用した事でメーリングのみならず商業印刷物の宛名・メッセージ,バーコード等の印字を各種基材に可能となった点が特徴です。先のPAGE 2003 PODトラックでマーキング業界の現状についてImaja社から講演を頂いたが,この製品はこの業界と競合する製品です。マーキングという分野に本格参入する事になれば今後多用なインクを提供する必要があり,この意味で今後のこの機種の展開を見てゆく必要があると思われます。

3)System Controller
コントローラ製品としては300,400,600の3種がデモされました。各々特徴がありますが,ここではSystem Controller 600 について報告します。 System Controller 600:
このコントローラは全ての9'ヘッドのアプリケーションをサポートしており,先に述べたNext Generation Color のヘッドもサポートします。このコントローラはEFI社と共同開発中であり,2004年の第一四半期に市場投入の予定です。EFI社のFiery をベースとしており,PDF,VPS,PPML,PS,EPS等のPDLをサポートし,バリアブルプリントへの対応力に優れています。従って用途は主に請求書等のトランザクショナル・ドキュメント,データセンターやDM用途向けとして考えられています。スポットカラーのみならずプロセスカラー対応をしており,最速で500fpm(150mpm)の印字が可能です。

3.まとめ

今回のオープンハウスはサイテックス社の今後の動きを知るという意味では非常に有意義でした。世界中からの参加があった点でも正に'オープン'な機会でした。PAGEでもインクジェットについて何回かとりあげて来ていますが,インクジェット技術は非常に大きな可能性を持っています。電子写真技術と比較すれば,機構が非常に簡単,静電気を使用しないために系が安定している等の利点がある反面,ヘッド,インキ,記録基材の3つが制約要因となっておりこれらのパラメータが制御できれば非常に多用なアプリケーションに応用できると思われます。一方,世界的にも連続型・DOD型の両方のヘッド技術をもっている会社は少ないようです。この意味でサイテックス社は非常に特異な地位を占めているといえます。今後も当社の動きには注視してゆきたいと考えております。

◆関連サイト
サイテックス社
バッテル研究所

2003/08/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会