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音のない世界にもかかわらず新たな挑戦

◆青山 修

専門学校製版科を卒業したのですが,DTPに関わった仕事でなく,精密機器のメーカーで品質保証部に8年勤務し,リストラの関係により退社。その後,現在のOA機器の会社で社内一般業務のIT化を担当して5年半が経過しました。しばらく働いているうちに,将来のために「手に職でも付けられたらいいな」と考え,DTPの仕事をやってみたいと思いました。現在の勤務先では行き詰まりを感じていて,自分の成長していくところがなくなっていく感じがしていたのです。これからまだ人生が長いのに,何だか自分のしたいことも見つからずにいるのは不安で,「私に本当に向いている仕事は何だろう」「これから先,何をしていきたいんだっけ」という思いが強くなっておりました。

20代は「社会人を学ぶ」,30代は「人生の方向を決めたい」と,いろいろと考えて,「やっぱり物を作る仕事がしたい」と思い,DTPを真剣にやってみようと決意しました。
昨年の4月からスクールに通い始め,幸運にもいい先生に出会えました。私にとって大きかったのは,聴覚の不自由なことを理解してくれる先生に恵まれ,「耳が聞こえないのは関係がない。やればできるんだ!」という言葉で励まされたことです。もしこのような良い先生がいなかったら,学校に入らなかったかもしれません。「悪いのは耳だけで,あとは皆と同じだろう,人間ならやる気さえあればできる」と私も言いたいと思います。

資格は一つでももっていれば役に立つと思い,手話通訳と要約筆記を個人的に依頼して通った1年間で,「DTPクリエイティブ」「DTP Pro」とさまざまなカリキュラムの中で,レイアウト,デザイン,技術,専門用語,コンピュータで作業することなどを学びました 。
仕事がきっかけでWindowsのWord,Excelをやっていましたが,全く違ったMacintoshのIllustratorとPhotoshopとQuarkXPressの基礎などを学び,DTPエキスパートでは,DTPに関する多く知識を得ることができました。大変だったのは「色」「印刷発注側」に関する分野で,猛勉強しました。個人ではMac,仕事ではWindowsと両方を毎日使っていますが,課題制作のための2週間は仕事をしながら徹夜もして,まさに地獄でした。
今年の3月の試験に無事1回で合格することができ,6月に念願のDTPエキスパート認証を取得しました。その結果は,まさに努力のたまものだなと実感しました。

しかし先生が,「合格が目標でなくスタートラインに立ったのですから,これから仕事の現場で自分を磨くこと」と言われたことは,肝に銘じておきたいと思います。。
まだ実務経験はありませんが,これからDTPの仕事に関わるように,できれば常に挑戦していきたいと思います。これまで,助言をいただいたり,手話通訳に協力していただいたり,お世話になった皆さんには感謝の気持ちで一杯です。今でも本当にありがたいという思いです。

ある日,JAGATより突然メールが来て,私に原稿の執筆依頼をいただいた時に,私で本当にいいのかと迷いがありました。結局,「一人の人間としてちゃんと生きてるんだ」と思い切って書こうと思ったのです。
大したことはありませんが,「為せば成る」という気持ちで努力することが大事と言い聞かせ,毎日毎日勉強してきました。今まで経験のない印刷物の知識は予想以上幅広く,内容が難しく覚えるのに苦労しました。
これからもDTPを自分の強みにするように,今の状態で満足しないで,どんどん走っていきたいと思います。残念ながら資格を取得したことで新しい仕事ができたということは,今のところありません。やはり私自身も,それほど期待していませんでした。現場で経験が必要な上,実力の差が激しい世界,世の中は甘くはないと思われますが,できる限りしっかりがんばってやりたいと思います。おかげさまで,何とかこの世界で生かされています。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2003年9月号


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2003/08/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会