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Japan PODi Executive Summit開催

デジタルプリントの普及促進、インフラ整備をめざしているNPO「PODi(Digital Print Initiative)」とJAGATは、去る9月24日、日本国内初の会合「Japan PODi Executive Summit」をインターコンチネンタル東京ベイ(東京・港区)で開催した。当初60名の定員を上回り、プリンタメーカー、印刷会社などから約80名の参加があった。

PODiは、主に欧米中心に活動しており、現在は、XMLをベースとしたバリアブルプリント対応言語(PPML)の標準化と普及に取り組んでいる。会員企業は、ゼロックス、キヤノン、リコー、エプソン、アドビなどである。
今回は、DMを主テーマに開催し、PODiのマーク・パーキンソン氏、日本郵政公社・郵便事業本部法人営業部 課長補佐・山田伸治氏の講演とPODi関係者によるパネルディスカッションが行われた。

日本ともパートナーシップを

まず、「欧米DM・フルフィルメント市場」と題し、PODiのマーク・パーキンソン氏より講演があった。

最初にPODiの紹介があった。PODiの会員には、エグゼクティブメンバー、ジェネラルメンバー、ページプロデューサー、アソシエイトメンバーの4種がある。アソシエイトメンバーは、印刷会社、広告代理店などエンドユーザーで、今年からメンバーに加われるようになった。デジタルプリンティング、バリアブルプリンティングに関連する主要な会社はほとんどメンバー企業である。

PODiでは、デジタルプリントの普及促進のため、エンドユーザーの事例を調査している。現在、メンバーと非メンバー150の事例を持っており、毎年、『Best Practices in Digital Print』というレポートを発行し、紹介している。
マーク氏は、「成功するための条件を見ると、プリントとWebマーケティングの連動が鍵と思われる」と強調。

▼PODiのマーク・パーキンソン氏

現在PODiは、来年発行のレポートの事例を集めており、講演で数社の事例を紹介した。
まず、スペインのCapraboというスーパーが、各代理店ごとにパーソナライズしたPOPの事例がある。同社は、HPのIndigo Press、Wide-format DesignJet、Office LaserJetの3種類の機械で出力し、パーソナライズ化されたPOPを作っている。PPMLのテンプレート、SVGのバリアブルテキストを使っているのでマシーンスピードがかなり速い。
次に、中国のChina Telecomでの明細票の事例が示された。以前は、オフセットでベースの紙を作り、名前や電話代をモノクロ出力機で出していたが、もっと、顧客に熱心に明細票を見てもらうため、パーソナライゼーションと4色のカラーを用いることで、電話代を払う人が20%アップしたという。

また、今回のIGAS2003の出展社のうち、PPMLドライバを開発した会社が2社あったとのことである。もちろん、PPMLはライセンスフィーが無料のため、PODIのメンバーでなくても、PPMLドライバを開発できる。

「印刷のお客様が一番気にしているのは、今は値段だが、長い目で見ると、印刷会社も広告代理店も、バリアブルプリントのキャンペーンやプロジェクトを作るとき、お客様のITの責任者と親しくなることが必要である。将来は、マーケティングの責任者の協力をもらわないと、バリアブルのプロジェクトを作るのは難しい」と言う。

日本サイドでも、コラボレーションしPODiの活動をレベルアップし、来年発行のレポートは、英語と日本語訳を同時に作りたいとの意向を持っている。

DBM展開に欠かせないDM

次に、日本郵政公社・郵便事業本部法人営業部 課長補佐・山田伸治氏が、「DM市場の将来展望」と題して講演した。今年の4月から郵政事業の民営化に向けて郵政公社となったが、山田氏は「日本は、欧米に比べ、DMマーケットが未成熟」と冒頭で述べた。米国では「マーケティング戦略として、既存顧客維持/育成、顧客の囲い込みを重視しデータベース・マーケティング(DBM)展開にDMが欠かせない手段」と捉えているが、日本では「DMは広告宣伝媒体のひとつ」と捉えられており、マス・マーケティング主体の考え方を持っているという実態を示した。

▼日本郵政公社の山田伸治氏

顧客維持の1to1マーケティングには、DBMが欠かせず、顧客の囲い込みによりカスタマー・シェアをいかに獲得するかが大切だと述べる。
日本企業の中には、「売上げ最優先」を課題とし、顧客維持の重要性に気付いていないところが多く、DMのメリットを理解する会社は少ない。現状、DBMの普及推進母体が不在なので、日本郵政公社の法人営業部では、法人郵便営業担当者がDBMのスペシャリストになるべく取り組みを実行中だという。

なお、ゆうびんホームページ内に、DMの見込み客を対象とした営業チャネルの一つとして、DMに関するノウハウを提供するウェブサイト「DM Factory」を開設している。

「ポスタルフォーラム2004」PAGE2004と同時開催

講演後、マーク氏、山田氏に加え、サカタインクス・池田氏、デジタルパレット・星名氏、HPIndigo・Mogridge氏、PODi・Erlandson氏の6人によるディスカッションが繰り広げられた。

HPIndigo・Mogridge氏は、「全世界で、バリアブルプリントがうまくいっているところがやっと見えてきた。教育は、世界でも一番大きなバリアブルプリント市場」とコメント。

サカタインクス・池田氏は、「日本語にローカライズされているデジタル出力機が少ない。組版の問題が大きい」と指摘。

アメリカにおける追加販売の事例について、PODi・Erlandson氏は、陶器メーカーの例をあげた。結婚するときに陶器を購入すれば、1ヶ月後に、まだ持っていない製品をすすめるバリアブルのDMを発送する。また、旅行会社のAdventure Travelでは、旅行の申込のあった顧客に、最初の旅の写真を載せて次の案内をDMで発送する。2回目の旅行パッケージは必ず値段が倍になるという。

また、会場から、DMにおける個人情報のセキュリティに関して質問が出ると、山田氏は「『郵政公社なら安心できる』という声もあるので、トータルサービスパッケージも考えている」と、今後の展開について触れた。

最後に、来る2004年2月4〜6日、郵便を活用したビジネスソリューションを広く提案するビジネスショウ「ポスタルフォーラム2004」をPAGE2004と同時開催することが発表され、今回のSummitは幕を閉じた。

2003/10/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会