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オープン環境時代のビジネス提案

オープンネットワークの時代には,だれもが同じ環境のハード,ソフトを使用することができるようになる。差別化できるものは,つまるところ個人の描くビジョンであり,マインドであると言えるだろう。今回は,オープン環境時代のビジネス提案をする株式会社オープンマジックの代表取締役長谷部誠氏とビジネス開発部EC課課長の磐佐良雄氏に同社の戦略を伺った。

ネットワークを利用したコラボレーション
オープンマジック(東京都中央区)は,メディアのデジタル化に取り組み,オープンシステム,オープンネットワーク,オープンリソース,オープンマーケットといったビジネスや市場の変質など,世の中の流れを見据えた事業を展開している。
代表の長谷部氏は,元は広告代理店に勤務し,海外のドキュメント制作などにも携わり,早い時期からデジタル化に親しんでいた。日本でもやがてDTPが普及し,印刷・出版・広告の業務が,デジタル化されていくだろうと予測できた。これからは付加価値を生むような生産的な仕組みや,企画やクリエイティブな方面に力を入れることが必要になると考えた。
起業当初はMacを販売したり,教育,サポート,制作も行っていた。転機は1994年ごろJR東海発行『WEDGE』でDTP導入のためのコンサルティング指導やサポートに関わったことである。『WEDGE』は,新幹線車内での販売や縦組み日本語DTPによるビジネス雑誌ということで,あらゆるところから注目された。アップルコンピュータからも高く評価され,長谷部氏は,アップルトレーニングキャラバンの講師として選出された。全国の印刷・製版会社を回ってMacのシステム導入,サポート教育を行っていた。
その後1997年に,現在のオープンマジックにリニューアルした。その時から,ネットワークを利用したコラボレーションの仕組みに積極的に取り組んでいった。

システムコンサルティングからWeb構築まで
現在の主な事業内容は,(1)システムコンサルティング,(2)DTPシステム+α,(3)ECビジネス,(4)インターネットハウジングである。
(1) システムコンサルティングは,ビジネスプランと競争力のあるシステムを構築する。顧客やエンドユーザまで視点を広げ,リソースを再分析し,そこから現場の組み立て方を見直し,今後のマーケットのあり方をも考慮した最適なビジネスのプランニングを行う。
(2) DTPシステム+αは,印刷・出版のデジタル対応に顧客ごとに取り組んでいる。DTPの枠を超え,印刷物の営業活動から印刷機出力までの各工程を視野にしたシステムや広告・販促支援,商品企画支援を取り込んだシステム構築を手掛けている。
(3) ECビジネスでは,リアル・ビジネスの徹底的な検証から,その可能性・ポイントを探り,ターゲットの明確化によるユーザビリティやユーザエクスペリエンスを考慮したサイトプランニングを行う。サイト構築,またサイト開設後のECビジネスを見据えた運営の総合支援を行う。
(4) インターネットハウジングは,KDDIネットワークに100Mbps,JPIXネットワークに1Gbpsの高速回線を接続し,遅延のないアクセスが可能である。サーバレンタルのサービスからE-コマースや情報検索システム,顧客データ管理などのデータベース運用,映像コンテンツのストリーミング配信,Webアプリケーションサーバなどの高度なサーバ構築までサポートしている。

顧客のニーズに即したシステム開発
システムコンサルティングなどの豊富なノウハウから,顧客のニーズを的確に捉えたシステムを開発している。以下に印刷業向けのシステムを2点紹介する。
●商品企画支援システム」
業務改善と売り上げアップのための統合戦略システムである。今までのDTPのフローでは紙面作りに主眼が置かれ,データを再利用することは難しかった。紙面を作りつつデジタル化した最終データをデータベースに格納する必要がある。
画像,動画,キャッチコピー,商品スペックなどあらゆる商品データを一元管理し,複数部門にわたるワークフローをシステム化することによって,他部門への情報伝達を素早く正確に行うことができる。
また一元管理することで,印刷物の制作工程からWebサイトやモバイル用サイトのフォーマットを自動生成するので,メディアごとの展開が可能になる。制作の合理化を含め,納期短縮・コスト削減が実現できる。「その分本来業務であるマーケティングや企画に力を入れていただきたい。だからこのシステムは,ツールではなくて戦略的な販売のための仕組みであり,制作支援ではなく『商品企画支援』だ」という。
JAVAアプリケーションサーバの形を取っており,ほかのシステムとの接続が容易に行える。既存の基幹システムや店舗のPOSシステムとの接続も可能である。広告訴求と売上動向が同時に把握できるマーケティングデータベースシステムとしても活用できる。また在庫管理情報と連携させることにより,在庫が多い商品同士を安い値段でセット販売するというような展開を考案できる。過去や現在の企画の内容を把握できるので,近い将来の企画予定案件にも役立てることができる。
OSに依存せずアクセスできるので,インターネットにつながる環境さえあれば,どこからでもアクセスできる。InDesign対応もリリース準備段階まで来ている。
画像付き商品管理もできるため,印刷会社だけでなく流通・小売業,部品メーカーなどに導入されており,入出稿状況やコンテンツ管理の面から出版社への導入もある。CRMとつなげて媒体の販促効果を引き上げ,囲い込みができることから広告代理店からの引き合いもあるという。
●TransProof MP
校正紙をそのままインターネットで転送するシステムである。PDFによる校正に比べて,クライアントは従来どおり,校正紙をFAXで送る感覚で使える。つまり,インターネット経由によるA3ノビサイズ対応の赤字校正用のカラーFAXという感じである。
送信側は,スキャナのADFで一度に読み込み,受信側の非PostScriptプリンタで出力できる。通信回線やプリンタを自由に組み合わせて使用できるため,既存の通信回線がそのまま使える。カラープリンタを使用することで初期コストとランニングコストも安く運用できる。
従来の宅急便やバイク便のコストが不要で,校正の上がったページから順々に転送すれば,作業効率の短縮にもなる。送信側,受信側の環境を追加することで,複数の拠点間での転送も可能になる。バイク便を待っている時の時間のロスやモノクロFAXでの見えにくさによる訂正漏れや文字のつぶれなどが解消される。


今後も「メディア」という切り口に着目し,販売戦略のサポートをしていく。多様なメディアの特性を最大限に活用していきたいという。

JAGAT info 2003年10月号より

2003/10/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会