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印刷グラフィックスはまだまだ変化し続ける

DTPソフトがXML対応になり,印刷物制作のバリューチェーンの中での位置付けも変わろうとしている。DTPは前後工程とより密接につながったシステムに組み込まれるので,顧客の問題解決を図り,サービスの価値を高める新たな6つの切り口でビジネスモデルを考える。

PAGE2004コンファレンス「グラフィックス・トラック」では,【広い色域】【データ管理とレイアウト連携】【MS-OfficeでXML】【デジカメ・メーカーが目指す画像】【Unicodeの普及とJIS漢字】【PODで多頁大部数パーソナライズ】 のテーマを取り上げる。以下に,個々のセッションの概要を紹介する。

【広い色域】

従来,さまざまなカラープリントの中でもプロセス印刷物の品質は,かなり良いものとされていた。しかし,近年のパーソナルプリンタの品質向上は目覚しく,デジタルカメラの画質も急速に向上している。 あるチラシ印刷の大手印刷会社では,デジタルカメラからの原稿入稿が2002年はわずか一割だったのが,2003年は半分以上がデジカメ入稿になってしまったという。一眼レフタイプのデジカメも急速に普及しており,広い色空間を持つ印刷向きのAdobe RGBに対応している機種も多くなってきた。しかし,印刷の色域はCMYの顔料が持っている基本的な色域の制約もあり,ガモット圧縮によってせっかく取り込んだ色域を大きく圧縮する必要がある。

このような制約を乗り越えようと,パーソナル用の高画質インクジェットプリンタは6色機が標準となっている。そして,印刷でもCMYK4色のプロセスカラーを超えるチャレンジとして,6色〜7色の使用によって色域を拡大する試みがなされている。
これらのマルチカラーが,プロセス6色印刷やプロセス7色印刷として定着するためには,業界標準的な色分解ルールやセットインキが必要になるだろう。
そこで,広い色域を求めてどんな技術・手法へのチャレンジがあるのか,業界標準的なルールが作れるのかについて検討したい。
→「印刷色再現の新たなチャレンジ」(PAGE2004コンファレンス B1)

【データ管理とレイアウトの連携】

商品カタログなど大量データを扱う印刷物の制作に有効な技術として,自動レイアウトやデータベースパブリッシングといったものがある。WebやITの進展により,一般企業でもコンテンツ管理が普及するようになると,レイアウト作業もかなりの度合いで自動化されていくこととなるだろう。
大量データを扱う印刷物制作に有効なデータ管理とレイアウトソフトを連携させたソリューションへの取り組みは印刷会社にとって大きなテーマであるが,印刷物だけでなくXMLによるクロスメディアパブリッシングも連動する課題である。

カタログ制作におけるデータベース管理とInDesignによるレイアウト,またコンテンツ管理とQuarkXPressによる自動レイアウトの連携,InDesignによるXMLコンテンツ生成とクロスメディアパブリッシングなど,レイアウトソフトの意味合い・位置付けについて検討が必要である。
→「DTPソフトを組み込んだソリューション」(PAGE2004コンファレンス B2)

【MS-Office2003によって,XMLは特別な技術でなくなる?】

印刷産業の従来型ビジネスモデルの基本は,「DTPや印刷機や製本機のアプリケーションで稼ぐ」である。つまりメーカーが作ったDTPや印刷機や製本機というソフトやハードを適用・応用・稼動させてビジネスしている。
しかしXMLはコンピュータ言語であり記法であって文法のようなもの。日本語があって英語があって「XML語」があるということになる。このXML語とは人間にもコンピュータにも読める言語なので,従来型のアプリケーションで稼ぐビジネスモデルとはだいぶ違う。なにせ,XML語で稼ぐとは,日本語や英語で稼ぐというようなことになるので・・・。

従来,XMLデータベース構築の開発コストや導入期間の長さは,XML活用の障壁になっていた。しかしMicrosoft Office2003では,XML対応機能が実用化レベルで強化された。XMLを扱うのに必要であった特殊なツールに代わって,WordやExcelでXMLデータが扱えることにより,どのような活用法があるか,今後の可能性について議論する。
→「Office2003によるコンテンツのXML化」(PAGE2004コンファレンス B3)

【デジカメ・メーカーが目指す画像】

フィルムカメラの時代は,直接的に画像の色再現を担っていたのはフィルムと現像条件(リバーサルフィルム)であり,色に関する知見はフィルムメーカーが持っていた。しかしデジタルカメラでは,カメラの中で「現像」までを行うことになるので,カメラメーカーに色再現のノウハウが求められることになった。つまり,フィルム/現像という化学反応による発色の組み合わせという制約がはずれた上に,カメラというハードを作っていたメーカーに,色再現というソフト部分のノウハウ知見が求められてしまったところに,カメラメーカーの苦心がある。

コンシューマ用カメラでは,モニタやパーソナル用プリンタにおける色再現を重視した色再現になるように,カメラ内部での画像処理の設計が行われれば良かった。しかしデジタル一眼レフの低価格化が進み,印刷用の写真撮影にも使用されるようになると,共通のカラーマネージメントの下で撮影データの作製や画像処理,色変換が行われる必要がでてきた。

印刷原稿の作成を視野に入れた高機能化したデジタル一眼レフカメラではどのような画像形成が行われ,メーカーが目指す画像とはどのようなものなのか。開発技術の動向からその方向性を探っていく。
→「デジタルカメラと画像生成の進化」(PAGE2004コンファレンス B4)

【Unicodeの普及とJIS漢字】

文字コードの開発や審議の経過を振り返ったとき,「表外漢字字体表」「10646-1:2000」「JIS X 0213」などが,ほぼ並行して行われていた。日本における電子機器での文字使用と深く関わるこれら3つの出来事が,互いに影響を与え合いながらも,充分な横の連絡なしに,別々に進んでいたことに問題がある。よってJIS規格の改定を検討する委員会が,符号化文字集合調査研究委員会(新JCS委員会)として日本の国語施策,工業標準としてのJIS漢字コード,国際符号化文字集合の間の調整に取り組んだ。

このような文字コードを巡る周辺状況の経緯や動きに対して,WindowsやMac上でUnicodeをベースとしての実装はどう進んでいのか,またJavaなどのプログラム言語の開発環境を例にとった現在の日本の文字コードの混乱,新聞業界にとっての文字セットなど,めったに集まることのできない文字コードの規格開発や実装現場に関わっている4人に包み隠さずお話いただく。
→「拡張する文字コード標準化と実装」(PAGE2004コンファレンス B5)

【可能性が見えてきたプリントオンデマンド ―多頁大部数パーソナライズ】

プリントオンデマンド(POD)は,印刷ビジネスに劇的な変化をもたらすかのように語られてきたものの,ハードウェアの技術が先行し,アイデアやサービス,商品作りといったソフトの部分が遅れをとっていた。「小ロット印刷」の代名詞からなかなか抜け出せなかったPOD市場に,今,先進的な事例が登場した。
「2003年オンデマンドアワード大賞」を受賞した増進会出版社とトッパン・フォームズは,100ページを超えるボリュームの通信教育コンテンツを9万人の受講者向けにカラーパーソナル教材として提供するソリューションを実現させた。

今回のセッションでは,「『多様化する受講者にパーソナライズ化された教材を提供したい』との思いを実現させるにはPODが不可欠であった」と語る増進会出版社と,独自の技術で世界初のトータルシステムを構築したトッパン・フォームズの具体的な話を伺う。さらに,印刷会社やベンダーに対するニーズをクライアント側から鋭く指摘していただく。印刷会社にとって,今後POD技術をどう適用し,ビジネスとして新しい展開を図るには何をすればいいのかといったヒントが得られる,またとない機会となるだろう。
→「通信教育用教材のバリアブルプリント」(PAGE2004コンファレンス B6)

2004/01/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会