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IT技術で管理機能をサポート

情報化社会の進展に伴い,各企業においてはインターネットを駆使する企業経営システムの構築並びにe-ビジネス経営が重要な課題の一つになっている。
今回は,ITソリューションを展開するアルテックアイティ株式会社の代表取締役専務川崎暢之氏と営業部の上田貴之氏,技術部の崎山幸司氏にお話を伺った。

外部ビジネス強化のため新会社設立
アルテックアイティ(東京・新宿区)は,産業系機械商社アルテックのグループ内に2001年6月に発足した。社内システムを開発していたアルテック情報システム室を独立させ,本社ビルの総合管理会社アルテックサクセスエンタープライズに合流する形を取っている。情報システム室は,本社ビルのインテリジェントビル化プロジェクトを担当しており,従来から共同作業の機会も多かったため,組織の融合には問題はなかった。会社形態としては,アルテックグループ内に新しい情報システム会社が誕生したとみるのが適当であろう。
新会社を設立した背景には,社内システム開発だけではなく,取り扱いの製造機械に伴うシステムの開発や日本語へのローカライズなど,外部への比重を増していたことがある。そして,これまで以上に外部ビジネスを強化するには,独立法人化が急務であるとの判断から進展したそうである。
当初より大手印刷会社や大手電機メーカーからソフト開発の受託を得て開発体制を整備し,本格稼働している。印刷・包装機械等のITに関した事業を始め,通信,コンピュータネットワークに関する運用や保守などの業務を行っている。同社の対象は必ずしも印刷業界のみではなく,情報産業全般として捉えている。ITに関連したさまざまな事業に取り組み,ハードとソフトの複合的な営業活動を積極的に推進していく方針である。

膨大な製版データをサーバで一括管理
まず同社が印刷業向けの最初のターゲットと定めている製品は,MacintoshのDTPワークフローソリューション「製版データ管理システム」である。これは印刷会社が管理する膨大な製版データをサーバで一括管理するシステムである。
印刷工程のデジタル化が進むと製版データの管理はきわめて煩雑なものとなる。具体的には,編集するデータをファイルサーバから見つけるのが大変で,いちいちファイル作成バージョンを調べるのが面倒である,といったことが起こる。このシステムでは,基本的に入稿から出稿まで製版データがどこにあるのか把握できるので,いつでも検索して,取り出すことができる。例えばある会社では,顧客から修正の要求があったとき,修正を加えるべき製版データを見つけ出すために20分以上の時間が掛かる状態だった。それが「製版データ管理システム」を導入し,5分以下に短縮され,労働効率が飛躍的にアップした。
またデータを調べる時間のロスに加えて,古いデータで印刷してしまうという印刷事故もあり得る。特に再版の多いものに関しては,威力を発揮し,間接費の削減にもなる。
もともとはある印刷会社のワークフロー的な大掛かりな管理システムの構築を受託開発したことがきっかけだった。ヒアリングからほかの印刷会社も管理の部分で困っている企業が多いことも分かった。しかし,印刷会社はどこの会社もワークフローが違うので,逆にさまざまな機能を削って,最低限必要なものだけを集めたものになっている。あれもこれも追加していくと特定の会社向けになってしまう。
「いろいろな機能を付けると覚えるまでに時間が掛かったり,煩雑さが目立ったりする。どの会社でも使えるように,ある意味最大公約数的にパッケージ化して,使い勝手の良さを追求するためシンプルなものにした」という。
もちろん機能の拡張や既存システムとの融合など企業の特性に合った柔軟なカスタマイズは可能である。例えば,原価計算の機能を付けてほしいという要望にも対応できる。

使いやすいシンプルな構成
システム機能の概要は,以下のとおりである。
既存のインフラを生かすので,OS X Serverを追加するだけのシンプルな構成である。特別なファイルサーバやクライアントMacintoshの複雑な設定は必要ない。編集作業のみのユーザや管理機能のみ使用できるユーザの設定もできる。
使い方はいたって簡単で,物件を登録するとファイルサーバ上にフォルダを自動作成する。オペレータは受注番号を入力するだけで登録データの情報を表示させることができる。Macitoshのファインダーそのままのインタフェイスである。ファイルをダブルクリックするだけで適切なアプリケーションで作業できる。ファイル編集時には,プレビュー画像やフォント,画像モード,EPSファイルの配置画像表示,作成バージョン情報など編集作業をサポートする。またファイルを開く際もダブルクリックするだけでシステムが作成バージョンを取得し,適切なバージョンのアプリケーションで編集することができる。
ファイルを編集するたびに作業者や開始,終了時間が履歴情報として記録され,編集終了時のファイルを自動でバックアップする。バックアップされたファイルはワンクリックで呼び出すことができ,数世代前のファイルの確認や万が一の印刷事故発生の際には原因追求のトレサビリティを確保する。
また物件登録時に予想される作業時間を登録することで,作業履歴を元に進捗状態を取得できる。
作業履歴や進捗情報は,Windowsからもブラウザでのアクセスが可能なので,普段Macintoshを使わず,Windowsを使用している管理者や営業担当者でも物件の情報にアクセスできる。急な顧客からの問い合わせにもスピーディに対応できる。

データベース構築とネットワークに注力
設立当初,外販強化の目標として3年後には社内開発と外販の割合を3対7にしたいと考えていた。2年後の現在,「ようやく5対5くらいにまでになってきた。あともう少しの努力」とのことである。
最も得意としているものが,データベース構築とネットワークだという。この2つのキーワードは,ITの将来を左右するものであろう。
今後も親会社のアルテック社内に蓄積されたさまざまな分野のノウハウを武器に幅広い分野への展開を考えている。同社のIT分野への活躍に注目したい。


JAGAT info 2003年11月号より

2003/11/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会