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ダイレクト・コミュニケーションを実現

フルフィルメントのソリューションとは,商品の日々の発注から物流,決済までのトータルマネジメント業務を指す。印刷会社でもDMやカタログ・チラシなどの印刷物において,送付先リストの管理から発送まで請け負うケースがあるだろう。
今回は,ダイレクト・コミュニケーションの領域全般で事業展開しているディーエムエスの社長室課長代理森健氏にお話を伺った。

「ダイレクト・コミュニケーション」提唱
ダイレクトメール発送代行業として1961年4月に設立されたディーエムエス(本社・東京都千代田区)は,設立当初からデリバリだけでなく企業と生活者のリレーション構築を行うトータルサービスを目指している。そのため,クライアント企業と生活者の『良い関係作り』に貢献する「ダイレクト・コミュニケーション」を提唱している。ダイレクト・コミュニケーションとは,生活者一人ひとりと直接的に接触しながら,個人対応のインタラクティブ・マーケティングを実現することである。具体的には,マーケティング&プランニング,クリエイティブ,データベース構築を始めとして,DMの制作,加工,発送の業務を通じて,企業と生活者のコミュニケーションをトータルサポートする。
クライアントは通信販売業界,クレジットカード業界を始め,DMを重要なマーケティングツールとして使用しているさまざまな業種に及ぶ。
主な業務は,ダイレクトメール,セールス・プロモーション,イベントの3つで,売上構成比は,それぞれ65.8%,25.8%,8.2%となっている。
ダイレクトメール業務では,企画・制作からメーリング作業,顧客データベース構築と運営,通信販売フルフィルメント,効果測定や集計分析などを行う。
セールス・プロモーション業務は,SPキャンペーンの企画を始め,ポスターやノベルティグッズ,街頭サンプル販促などの企画制作も行っている。またデザインや印刷そのものは外注だが,社内に企画室があり,クリエイティブ進行管理のディレクターは,10人以上いるという。Webコンテンツの制作,各種広告,調査なども行う。
イベント業務では,大手広告代理店とのつきあいがあり,スポーツ・文化事業イベントの事務局周辺の仕事もある。

4機能の連携で顧客リレーションシップ向上
同社の強みは,(1)メーリングサービスを中心に,(2)データ処理/Webコミュニケーション,(3)ロジスティクス,(4)コールセンターからなる4つの機能を駆使し,クライアント企業と顧客との接点におけるオペレーションをワンストップで提供できることにある。
(1)メーリングサービスでは,メーリング専門の業務センターで大量に発送するプロモーションDMや封入の複雑なDMなど,あらゆるケースに対応できる。封入,封緘から,プレソート,局出しまでの配送業務全般を一貫して行っている。
(2)データ処理/Webコミュニケーションでは,クライアント企業から預かった顧客情報をDM宛名用データに整備加工する。プレゼントキャンペーンなどで得た情報のデータ処理やメンテナンスも行っている。またWebを利用した見込み客情報獲得など,インターネットとDMを合わせたコミュニケーションも実施している。
(3)ロジスティクスは,DM以外にも注文情報に応じて出荷梱包を行い,商品管理・発送を行う。Web照会システムで担当者がリアルタイムで入出庫・在庫の確認ができる。
(4)コールセンターは,DM発送に伴うレスポンス対応やプレゼントキャンペーンの応募受付,通信販売の受注コールセンターなど,いわゆる「問い合わせ事務局」の役割である。

信頼にこたえる多角的な取り組み
一時期WebやEメールの出現により紙媒体のDM件数が減るのではないかと危惧する声もあった。Eメールにシフトすることによりコストダウンを図れることもある。しかし,むしろ新しい表現媒体としてとらえ,ネットと紙のDMとの相乗効果を狙っている。見込み顧客発見の手段として,Webサイトを利用した情報収集が有効であることは周知の事実である。Webのもつ超越性とバーチャルなコミュニケーションを顧客情報獲得の機会と位置付け,その情報を紙媒体のDMやコールセンターなどのリアルコミュニケーションにより,本格的にフォローするといった流れである。互いに補完し合い,相乗効果を上げていくケースが増えていくだろう。
また,はがきによるアンケートやキャンペーンの応募などがインターネット経由による応募にシフトしていっている。応募フォームのスクリプトやサーバのハウジングも同社内で行っている。応募してきた人のデータの蓄積,データ処理から景品の抽選,発送,アフターサービスとしてのサンキューメールの送付などにも対応している。
DMの場合,その特性から開封率をアップして,レスポンスを高めることが使命になる。同社では,企画制作から印刷までを一貫して行っている。クライアント企業の販促課題をヒアリングすることから始めて,販促施策やクリエイティブの検討・提案にきめ細かく対応している。同社が蓄積したダイレクト・コミュニケーションのノウハウを集約した『DIRECT MARKETING SOLUTION』も提供している。クライアント企業が利用しやすい形にまとめた独自のソリューション群で,さまざまなメニューから,ニーズに合わせて最適なサービスを選ぶことができる。
また,社会からの信頼にこたえ,さらなる飛躍を期すために,個人情報保護活動にも積極的に取り組んでいる。日本データ通信協会の個人情報保護マーク制度に登録しているほか,1999年2月にプライバシーマークをメーリングサービス業界として初めて取得した。

CRMを念頭に,一貫したソリューションを提案
ダイレクト・コミュニケーションが重要な手段となってきたことは,不況が長引く中でCRMに取り組む企業が増えていることからも分かる。市場シェアの追求から,顧客を維持することで顧客内シェアを追求するように変化した。「顧客関係性のマネジメント」が可能になった背景には,顧客情報のデータベース化が進み,インフラが整備されてきたという事情もある。顧客の特性に合わせてカスタマイズしたパーソナライゼーションの可変処理が可能になっている。
「昔は全く知らない人に対して,マスマーケティングの手法でDMを送付して,数パーセントでもレスポンスがあれば良しとした時期もあった。しかし,見ず知らずの人にDMを出すというやり方はなくなってきている。顧客のロイヤリティを高めるマーケティングの実践の局面でDMを使っていく,そのために顧客情報のコミュニケーションを深めていく,そういうDMが主流だ」という。
そのためには,CRMを念頭におき,企画,制作からフルフィルメントまでを一貫したソリューションとして提案できるビジネスモデルの構築が必要になる。同社ではダイレクト・コミュニケーション特化型のアウトソーシング・サービス会社としてさらなる成長を目指している。

JAGAT info 2003年12月号より

2003/12/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会