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管理を曖昧にしていてはIT化は進まない

多ページの印刷物の制作を効率化する方法は昔から決まっていて、電算写植の時代にもページのレイアウトはテンプレートとして用意し、そこに校正済に完成させておいた文字や図版を流し込んでいた。両者の関係づけのためにタグが使われる。これはDTPがWYSIWYGから出発したために、後にXTentionやPligInという形でテンプレートとタグの処理をするソフトを別途追加して同じようなことをするようになった。

この先の効率化の目標は、流し込む前のタグをつけるところと、流し込んだあとの校正もしくは承認である。タグに関しては文字原稿化の段階で意味的なタグを入れておいて、あとでそれを手がかりに自動処理をする考えがSGML・XMLである。SGMLやXMLではテキストデータの必要な部分を抜き出す加工もSGML・XMLの機能で行う考えである。

電算写植の時代にはタグのシステムは写植側から考えられていたので、印刷側の仕事の都合ではXMLもまずレイアウトのための要素のタグ化を先に決めたくなるが、コンテンツホルダー側の情報利用から見た意味的なタグが決まらないと、本格的なXML化にならないため、時間がかかっている。だからひっかかっている課題は実はXMLではなくコンテンツ管理である。

レイアウトのテンプレートにバッチで文字や図版を流し込んで、一挙にページが出来たとしても、それらの承認はそれぞれもとの情報に関わっている人々に分散させて行ってもらわなければならない。紙面に広告が入っているならば、現場での内校や編集者段階の校正はもちろんだが、広告営業とかクライアントに見せて確認してもらうワークフローが必要になる。これに手間取ると、いかにバッチで紙面を作っても下版までに時間がかかってしまう。

これらはDTPになっても改善されずに残った問題だったが、QuarkのQPSのようなグループウェアで紙面制作と承認の時間差を無くすためのツールが登場した。QPSが作られた当時はプリプレス用の素材をサーバで一元管理することは新聞社や大手雑誌社など限られた会社がUNIXのシステムで行っていただけだったが、今日ではLinux/Sambaなどはどのプリプレス現場でも導入できるようになった。

しかもインターネットがブロードバンド化しているのだから、顧客も含めた校正や承認のワークフロー構築の障害は非常に減ってしまった。それなのにグループウェアがプリプレスで組めないのは、作業管理の遅れである。タクシーに乗っても「運転手は私です」という表示があるのに、プリプレスは会社が異なって一つのプロジェクトに関わる際に作業者が名前を名乗らない。私が、わが部署が、わが社が、どこについては責任を負って仕事をする、という言明を避けている結果かもしれない。コンテンツホルダーもデータ加工側も管理を曖昧にしていてはIT化は進まない。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 213号より

2004/02/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会