本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

時代は、飛躍的な効率・効用を要請している

近年ある意味ではブームでもあったXMLについても、「XMLとは」という基礎的な勉強の時代は終わり、XMLを扱うデータベースや組版エンジンなどのモジュールが商業的に手に入る段階になった。だからそれらを組み合わせて自社の仕事に応用する印刷・出版の方はこのところぐっと増えたが、それで儲かる/儲からないを云々する段階には至っておらず、別のフェーズの勉強が始まっているといえる。

儲かる云々は自分の努力だけでなく、得意先側の新たな仕事の体制が準備されなければならないなどタイミングをよくみてシステムの切り替えをする必要がある。あまり先行投資しても息切れするし、かといっておっとり構えすぎると商機が来たときに機敏に動けずに、どこか他社に仕事をもっていかれるかもしれない。XMLでいえば、仕事がブレイクする時の備えとして、システムインテグレーションをしてくれる良いパートナー探しとか、来るべき新たなシステムが有効に働くための得意先や協力業者との関係作りを今のうちにしておかなければならない。

過去もコンピュータ化をしたけれど、例外が多くてコンピュータ化のメリットが出ないという経験をした人は多いだろう。過去はコンピュータが珍しくて、買った以上は我慢して使わざるを得ないこともあったが、今日では先行投資でコンピュータシステムを入れ替えるのではなくて、即効用を問われるのだから、単に「ちゃんと動きました」程度では許されない。ユーザインタフェースの良し悪しまで問われてしまうので、1からすべて自作していたのではリスクが大きすぎ、なるべく馴染んだ環境や標準化されたものを使わざるを得なくなっている。そのような「ITの常識」も身に付けなければならない。

つまり印刷出版のIT化の原点である文字処理/画像処理という足場から、刻々と進化するITの常識のほうへ足場をシフトする時代になったといえるだろう。しかし過去の印刷の生産技術と違って、IT技術でメシは食えないといのも常識である。それは印刷出版に関わらずそうである。バブルの頃は、まるでエスカレータかエレベータにでも乗るかのように、ITの導入がいわれたことがあった。しかしIT活用アイデアだけに依拠した安易な金儲け手段としてのeビジネスが次々に破綻していったことは記憶に新しい。

一方でアマゾン,楽天…などECは小売の大手となって経済の一角に食い込んできた。ITを味方として、独自の発想・独自の努力によって新たなビジネスの枠組みを作り、勝者になった会社がある。その陰で似たようなビジネスモデルを掲げながら消えた会社が何十〜何百倍もある。このような変化はまだ始まったばかりで、近いうちに多くの商業分野において、そのトップ企業群の一角はネット上のビジネスモデルの会社で占められるようになるだろう。

過去から現在まで、電子カタログ、電子マニュアル、電子書籍、電子教材などなどは、古い印刷モデルを画面やプリンタに出すアナロジーで作っていたが、ネット上のビジネスモデルのそれらは単なる紙モデルの焼き直しではなく、ネット上で情報提供者と情報受容者が最も効率を発揮できるようなものに変わろうとしている。例えばPDFは印刷版下を作成した際に生成する静的なものから出発したが、今ではデータベース化された情報がネットワークを介して呼び出される時点で組版されて即PDF化されるような、オンデマンドのモデルが作られていることに注目したい。

こういったDTPやCTPあるいはCMSの先にある応用展開をどのように予測すればよいのだろうか? そのカギになるのはバリューチェーンの考えである。システムを考える際に自社の利益を最大にしようとお互いに頑張っていると、いつまでもシステム間をまたいだ効率的な運用はできない。バーリュ−チェーンでは自社都合を第一にするのではなく,直接の取引先からその先の取引先,さらにエンドユーザまでの全体での効用を第一に考える。

印刷の生き残りとは、そのバリューチェーンの中に組み込まれることである。PAGE2004は,DMビジネスショー・ポスタルフォーラム2004と同時開催で,印刷のバリューチェーンを関連業者とともに築いていこうというコンセプトのもとに開催される。基調講演を始めに、PAGE2004のプログラムの個々には、21世紀の印刷会社のビジョンを考えるヒントが盛り込まれている。多くの業界リーダーが集まるPAGE2004に参加して、紙のモデルの束縛から解き放たれた新たなプリンティングのビジネスを考えよう。

PAGE2004 ITとパートナーシップで築くトータルサービス

2003/12/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会