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印刷が追いかけなければならない新たな時代

質問:JAGAT Webmaster
回答:社団法人日本印刷技術協会 参事 相馬謙一

Q 昨今は印刷会社でも「XMLとは」という勉強をしているが,ビジネスには繋がっていないように見えますが・・・?

印刷産業の従来型のビジネスモデルの基本は「DTPや印刷機や製本機のアプリケーションで稼ぐ」である。つまりメーカーが作ったDTPや印刷機や製本機というソフトやハードを適用・応用・稼動させてビジネスしている。
しかしXMLはコンピュータ言語であり記法であって文法のようなもの。日本語があって英語があって「XML語」があるっていうことになる。このXML語とは人間にもコンピュータにも読める言語なので,従来型のアプリケーションで稼ぐビジネスモデルとはだいぶ違う。なにせ、XML語で稼ぐとは、日本語や英語で稼ぐというようなことになるので・・・。
従来のグラフィック技術のインフラではなく,一般のIT技術のメリット,進化という意味でグラフィックアーツのための技術が一般では通用しなくなってきている。 社会的なインフラ,IT技術に近づいていく必要がある。
印刷のIT技術が,社会のIT技術から遊離して,かつ遅れてしまった。だから社会の技術においつかなくてはならない。ITのうねりに合せなくてはならない。 XMLは社会で幅広く利用されつつある,ITインフラ技術。しかし情報処理産業の一翼を担うという印刷側に対応の遅れも見られる。もっとこちらから近づき、追いつかなくてはならない。

Q 現在の印刷会社に足りない,もしくは気づかなければならないと指摘するとしたらどんな点ですか?

グラフィックアーツは他産業に比べても早い時期からコンピュータ化していたハズであったが、今は遅れてしまっている。
グラフィックアーツのための技術は一般のIT技術とは別の、クローズドな世界で発展してきた。MAC-DTPが出現してオープン化したと言われたが、それは電算写植やCEPSという専用システムに比べての話であった。
XMLやデータベースを利用すると言っても多くは,自動組版をして,印刷するということで終わってるのではないだろうか? しかしこれからは,お客さんのコンテンツ管理する,Webとの連動を提供する,そのためにツールを提供する,出版分野でいけば電子書籍にも対応していく幅の広さが求められる。
現在はXMLを扱うツールに関しても,以前はとても高額であったが,オフィスツールがXMLを積極的の取り込もうとしており、例えばマイクロソフトのOffice2003ではXMLを扱える幅がさらに広がってきてた。今やXMLは特別な技術を応用するものではなくなってきている。しかし,そこのところを印刷会社はあまり意識していないかもしれない。

Q 今まで印刷物を作るときは,印刷側が主導していたことがいろいろあったけれど,文字も画像もどこでもコンピュータで扱えるようになって,主導権が変わったということですか?

印刷の中の標準がだんだん世の中に通用しなくなるものがいくつかある。たとえば,文字は電算写植のシステムに合せて原稿を用意してもらっていたものが,今後は,Unicodeで作られたものを印刷会社が処理しなくてはならなくなりだろう。 カラー原稿も,印刷では,CMYKで色を扱うのが標準だったが,デジタルカメラがここまで普及してくるとカラー原稿はRGBで扱うというのが標準になりつつある。

Q ほんの2,3年前までRGBで製版するというのは,とんでもないと言われていたのですが,そんなに急激に変わるのでしょうか?

あるチラシ印刷の大手印刷会社では,デジタルカメラからの原稿入稿が2002年はわずか一割だったのが,2003年は半分以上がデジカメ入稿になってしまったという。一眼レフタイプのデジカメも急速に普及をしているし,色空間として印刷向きのAdobe RGBに対応している機種も多い。DTPソフトもAdobe RGBとJAPANカラー2001という印刷の標準的な色に対応してきている。

Q Adobe RGBはプロセスカラーを越える色域をカバーしているのではないでしょうか?

最近はインクジェットプリンターは,6色が標準的になっている。オフセット印刷でもHi-Fiカラー,ヘキサクロームでは,6〜7色の印刷インキで広い色域を実現しようとしているが,ここでも社会を追いかける立場になっており新たなチャレンジが必要なのです。

Webmaster:印刷というのは,デジタルカラーグラフィックスを印刷が追いかけなければならない新たな時代になったのですね。どうもありがとうございました。

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2003/12/25 00:00:00


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