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作業指示や工程間連絡の自動化が大きなテーマ

質問:JAGAT Webmaster
回答:社団法人日本印刷技術協会 常務理事 山内亮一 

Q CTPの普及にみるごとく,印刷業界はデジタル化したものの,再浮上できないでいますが…

2割くらいがデジタル化できずに脱落した。これからは,さらにその半分くらいが脱落する可能性がある。デジタルで効率的に仕事をする仕組みのインフラを,生産から営業・経営管理まで全体として扱うことが今の課題だ。これから作ろうとしているインフラをうまく運用できるかできないかで印刷会社に大きな差がでるようになるだろう。

Q デジタルネットワーク化,インフラとは,具体的に何を指す?

生産工程のインフラは一生懸命やったが,経営戦略的には成果はあまり出ていない。大枠で言えば,コミュニケーションの自動化がなされていないからだ。その場合のコミュニケーションは,コンピュータとコンピュータが自動的にコミュニケーションしながら連携して動くことを意味する。何かデータを加工する場合でも,作業指示や工程間連絡など,中間に人が介在することをなくすことが問われている。

Q 印刷業界は生産工程のところどころをデジタル化したが,実際は,その間を人が介在して仕事を進めているのが現状だ。

業界のある人たちは,メールを使えると通信ネットワークを使いこなしたと考えている。オンラインショッピングでは,申込みの確認はメールで来るが,それはオーダーエントリーしている人間がしているのではなく,自動応答するように仕組まれている。印刷工程では,ページが完成したから校正してください,と自動で連絡出来るのではなくて,人がメールにPDFファイルなどを添付して連絡するという段階である。

Q 現状では単体のソフトは使っているが,工程全体の流れを設計してシステムとして作られていない。印刷業務の場合に,インフラの要素とかモデルはあるのでしょうか?

デジタル印刷機とか,DI印刷機のような機械であれば,日程計画ができれば,機械が自動的に段取りできるようになるだろう。日程計画自身,ベテランの人がやるのではなく,見積もりを行ったときのデータで日程計画が自動で作られるようになるだろう。営業が受注した品物の基本的なデータを入れたら,あとは自動で生産計画が出来て,最適な生産ができることを目指さなければならない。大手新聞のように発行予定の大きな計画があって,それぞれの日の紙面の小さな計画にリンクして,その計画を細かく詰めていけば全体がうまくコントロールができるようになるような方向に行っていると言える。

Q 言い換えると,印刷のFA化やCIM化は,新聞社や特殊のところだからできると思われている時代があったが,IT化が中小企業まで及んで管理方法の変革が迫られているということでしょう。
2004年はdrupaがありますが,今の段階で中小企業が見ておくべき点は,どういうところにフォーカスできるのでしょうか?

今回のdrupaで見たものをつなぎ合わせたら将来のシステムが描けるというわけではない。

生産の設備の部分というよりは,管理の部分と生産のシステムがどういう風に繋がっているか良く見ておく必要がある。他の産業でCIMが実現されているような事例は見たほうがいい。そこが大枠として理解できれば,印刷の経営管理のコンピュータのシステムがこれからどういう風なものになっていかなければならないか分かるでしょう。
経営管理のコンピュータのシステムが理解できたら,一度に全体を作ろうとするのではなく,効果を発揮するようなものからひとつひとつ具現化していって,徐々に有るべき姿に向かっていけばよい。多分,2年おきくらいに,CIMの要素になる生産の仕組みが揃って,CIM化MIS化の弾みになると思う。
生産設備の方は,印刷機でも後加工でも耐用年数まで使わざる得ないから,新しいものが出てもすぐに導入ということにはならない。それまでに,経営管理のシステムや,外注とのやりとりなどをひとつひとつ片付けて行けばよい。

Webmaster:それにしても,償却も数年先には今と大きく変わった状況になっているだろうから,ひとつひとつ片付けるといってもそれほど時間的余裕があるわけではない。かつてはオフコンを入れるのに3年かかるとかのテンポで経営管理の改善を考えていたが,今の機械の償却が終わる頃にはMISは現状よりも2〜3段階は進んでいなければならないから,MIS化は相当効率的な取り込みというのがいるのでしょうね。

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2004/01/10 00:00:00


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